盗賊と奴隷商人
森を出たのはいいけどどっちに向かえばいいんだ?
「マップって無いのかな?メニュー」
なんだ、マップってこんなところに隠れてたのか。村の中じゃ、表示されるわけないよな。
って、なんでスキル一覧が光ってんだ?
「おいおい、シーフスキルにスキル合成ってなんなんだよ」
こんなの取った覚えがないんだけど……。しかも名前の通り、詳細を見る必要がない。
「はぁ、なんだかチートってのが優しく思えてくるんだけど」
あの神様ってやつは、俺に一体何をやらせたいんだろうか。こんな、バグのようなスキルを授けて…。
頭を抱えていたら、気配察知とマップが何かに反応した。
「…襲われているのか?」
そう、人間が人間を襲っているようにも見える。…マップのアイコンを見た感じだと。
「面倒だけど、場合によっては助けてやろうか」
俺に得はないけれど、人を助けるぐらいなら…。元の世界にいた時の俺とはえらい違いだな。
歩き出して約30分。マップと照らし合わせながら移動をしていくと、ちょうど戦闘が終盤に差し掛かっているようだった。
「盗賊だな。その相手は、商人かなぁ。そんな感じの服装だし」
何人か死んでいるようだな。生き残っているのは、商人と2~3人の女たちだ。
目の前で人を殺されるのは嫌だし、助けてやるか。…下心なんてありませんよ?10人弱の相手を、ただの下心で助けに行くなんてただの馬鹿…というより、自殺願望者だな。
「おーい。何やってんの~?人呼ぶよ~」
盗賊の頭と思われる男が、俺を見るなりにニヤリと笑った。
「カモが来たぞ!相手してやれ」
おいおい。商人と女1人以外全員盗賊かよ。とりあえず、全員捕まえるか。
5分もかからなかったな。結界魔法で、盗賊を一人一人封じ込めて後ろから首をガツっとやって終了。
「これでよしっと。ついでに、シーフスキルを試してみるか」
12人全員(縄で縛る際に数えた)のスキルを盗った。
盗ったスキルは全部でこうなった。
刀術 Ⅴ 水魔法 Ⅰ 短剣術 Ⅴ アイテムボックス×2
「大丈夫ですか?」
スキルの確認を終えてから、座り込んでいる商人の男に声をかけた。
「ありがとうございます。私は、テオドアと言います。職業は奴隷商人です」
「俺は、リョウ・ヨツヤだ。冒険者になろうと思って、王都に向かっている途中だ」
「そうですか。なら、私たちと一緒に行きませんか?」
護衛みたいなものか。まぁ、道に迷っていたというのもあるから助かる。
「そうだな。一緒させてもらおうか。ところで、後ろにいる女は?」
「彼女は、そこにいる方の奴隷でした」
テオドアは死体の一人を指差した。
「そうかい。そいつも連れて行くのか?」
「そうしたいのですが、彼女は訳有りで中々買い手がつかなくて…」
問題児ってやつなのか?いや違う。…こいつ本当に人間か?なんか独特な雰囲気があるな。
「分かりますか?彼女は、亜人なんですよ。そのせいで、処女なのに銀貨50枚なんですよ。冒険者のパーティに入れても大丈夫なくらい強いのに…」
俺はアンタの愚痴を聞くために聞いた訳じゃないのにどうして、こうなったんだ?