初クエスト ~再び森にて~
ようやく森に着いたのはいいのだけれども…。
「気持ち悪い」
「カーミラ。あんなに、はしゃぐからだよ?」
緊張感のない夫婦。こんなんで、この森の調査出来んのかな。
「回復魔法使いますか?」
「ほっといていいぞ。カミトさんが何かやるみたいだからな」
「少し先に進んでもらってもいいかな?余り見られたくないんだ」
「分かりました。ミーシャ、ティアナ行くぞ」
魔術か何かだな。あの魔力の流れからすると。
カミトさんたちがなかなか来ないので、いったん休憩をはさむことにした。
「ミーシャ。この先に何かいるか?」
「います。大型の魔獣が3頭」
「そうか。こっちに気づいているのか?」
「おそらく。こちらに向かってきています」
ミーシャの気配察知は便利だな。ポイント貯まったら強化してみようかな。
「さてと。面倒だが戦闘開始の準備だけしておくか?」
「そんな余裕ないみたいです。何やら数が増えてます」
「数が?ティアナ」
「群れの行動だとすると…。軍団狼かもしれないわ」
「ランクは?」
「単体ならC-。群れでカウントするなら、A+ってとこね」
なるほどな。こりゃぁ、出し惜しみなんてしてる場合じゃないな。
手当たり次第、スキルを盗っていかないと死ぬかもしれないしな。…いらなきゃ、合成すればいいんだし。
「来た来た。死なない程度に頑張ってくれよ?」
「言われなくても!」
「分かりました」
さてと、どうやって戦おうかな。…スキルを奪いながら戦うとなると、短剣かな。
ミーシャには、弓とトリリオン・ダガーを渡してあるから問題はないし、この短剣壊しても問題はないだろう。
その前に鑑定しないとな。
軍団狼 ランク 単体C- 群れA+ レベル30
成長の可能性無し 状態 正常
スキル
咆哮 Ⅱ 爪攻撃 Ⅵ 多色の牙 Ⅸ マーキング 位置把握 Ⅹ
おお。面白そうなスキル持ってんじゃんか。…マーキングはいらないような気もするけどもらっておくか。
にしても、爪攻撃ってスキルじゃないないと思うんだけど…。
スキルを奪いながら狼を1匹ずつ、斬っていく。もう何匹目の狼を斬っているのが分からないくらい、俺たちの周りには狼の死体がたくさん転がっている。
「ミーシャ!後、どれくらいいるんだ?」
「この先にいる、長を狩れれば時期に去っていくと思いますけども…。多すぎて先に進めません!」
そういうことか。だったら…。
「ミーシャとティアナ。ここでこいつらの足止めを頼む。俺は長を倒しに行く」
「無茶だけはしないでください」
「できるだけ早くして欲しいかな~。疲れたもん」
ティアナめ。戦闘中だってのに随分と余裕のあるセリフだな。
「それなら、外してもいいんだが?外れても俺は困らないからな」
「やめてください。ちゃんと仕事はしますから、外さないでください」
「なら、ちゃんと言われたことをしてくれ。できるだけ、出来ないことは頼まないから」
それで納得していただけたようだし、大けがされないうちに倒してきますか。だいぶ、二人も疲れが顔に出てきているし。
立ちふさがる狼のスキルを奪い、首を刎ねていく。威圧って便利だな。奪っておいて正解だな。咆哮は使い道があまりないし。街中で吼えるわけにもいかないからな。
『…お主が銀魔狼の使い手か』
「キサラギは使ってないんだがな」
なんでこうも会話が成立してしまう、魔獣と出会ってしまうんだろうか。シュネは狼の死体を食べてるし…(見えないところで食べてくれよ)。
吐き気を堪えて鑑定を使う。
軍狼長 ランクAA レベル53
成長の可能性あり 状態 衰弱
スキル
???(条件がそろってないため鑑定不可)
条件ってなんだよ!?
「お前死にかけか」
『ばれていたか。今なら簡単に殺せるぞ?』
「お前みたいに、他の軍狼長って話せるのか?」
『我ぐらいだな。…それがどうしたのだ?』
キサラギの気配が分かっているのにこいつは、妙なところで察しが悪いな。
「俺の仲間にならないか?」
『何を言う。我がいなくなったら他の狼たちが』
「心配すんなよ。ブランクカードの能力にこんなことも書かれていた。『眷属にしたものに仲間がいた場合は、その者達も一緒に…。』とな。どうしたい?お前の仲間も、後ろにいる2頭だけになっちまっているが」
あいつら、狩るの早すぎだっての。レベルの低い俺の気配察知ですらわかるって…。
『分かった。この者たちの命が助かるのなら、仲間になってやろう』
「ありがとよ」
仲間にしたい奴らは、こうやって協力してくれそうな魔獣とかが一番だ。裏切られたりしたら面倒だしな。
「終わったみたいですね。リョウ様」
「コウくんのあれはちょっと見たくなかった」
「コウも食ってたのか」
「…はい」
手が空いたとき、あいつらも勉強させないといけないな。このままじゃ、本当に俺たちが吐いてしまう。
「見つけた。大丈夫だったかい?」
「今、終わったところです。傷だらけですね」
「デーモン・ガードに襲われてね」
ふーん。その顔を見るとその魔物も、この森にはいないんだろうな。ポケポケお嬢様もばてばてだし、よほど強かったのだろう。
「少し休憩してから、先に進もう。ここから先が…森の最深部にあたる区域だから」
やはりそうか。ミーシャは気が付いていないようだけど、狐の耳がピーンってなってるし。
さてと、スキルはどうなっているのかな~。
休憩することになったので、俺とミーシャ、ティアナのステータスを確認することにした。
ミーシャ レベル24 スキルポイント 55P
スキル
短剣術 Ⅹ 気配察知 Ⅻ
ティアナ レベル30 スキルポイント 87P
スキル
剣術 Ⅷ 回復魔法 Ⅶ 魔装 Ⅲ
ティアナだけ新しいスキルが出てるな。魔装は、体や武器に魔力を纏わせることができるスキルなのか。
俺も覚えられたらいいな~。
リョウ レベル23 ポイント 73P
スキル
短剣術 Ⅷ 咆哮 30 爪攻撃 55 多色の牙 60 マーキング×73 位置把握 66
あれ?数字の表示が変わってる。もしかして、ステータスを表示してくれてる方が諦めたとかじゃないよね?
「行こうか」
「……あっ、はい」
どうしよう。カミトさんに聞くわけにもいかないし、どうしたらいいんだろうか。
数字表記は、この世界の標準です。by神