*彼の想い*
あたしは周りの目も気にしないでまっすぐに屋上へ向かって走った。
はぁはぁはぁ...
急がなきゃなっ!
ガラっ。
あたしは勢いのまま屋上の扉を開けた。
そこには、
爽やかなオーラが漂っているイケメンさんが!
ま、ま、まさかっ!
この人なのぉ!?!?
なんか、予想以上でドキドキするよー!!!!
「あっ」
そのイケメンさんがあたしの勢いに驚き、一瞬目を大きく開いた。
ヤバい・・・格好良い。
ってそんなこと言ってる場合じゃないでしょっっ!!
「川崎朱莉さん?だよね。」
なんとも爽やかに質問してくるイケメンさん。
「は、はいっ!川崎朱莉と申します!」
なんか、めちゃめちゃ緊張してすんごい敬語になっちゃったよぉぉぉ
「来てくれてありがとう。無理に呼び出してごめんね。
俺は1年2組桜木蓮。
朱莉ちゃんのことは中学から知ってる。」
ぇ?あたし、この人と会ったの初めてですが・・・?
って朱莉ちゃんだって!
「多分、朱莉ちゃんは俺のことは知らないんだよね。」
ちゃんづけで呼ばれるとなんか緊張が増してきます。
「あ、はい。すみません。」
うん、でも知らないんですよね。
「いや、謝らなくていいんだけど。だって中学違うじゃん?
知らないのは当然だよ。俺が朱莉ちゃんを知ったのは、
友達に誘われた体育祭だった。
たまたま、そこで朱莉ちゃんがリレーのアンカーで走ってたんだ。」
ん・・・?あぁ!!! 思い出した!リレーかぁ・・・懐かしい。
って何言ってんだ、あたしは!
「朱莉ちゃんにバトンを渡す時にちょうどその子がこけて、
そこにいた全員がもうだめだ、って思ってた時に、
朱莉ちゃんは全然諦めてなくてその子を必死に応援してた。
それから朱莉ちゃんはバトンをもらい、何人もの人を抜き、一位になった
よね。あれ、マジで感動した。
朱莉ちゃん見て一瞬で何か心ん中のものが動いた気がしたんだよね。
あぁ、この子いいな。って。」
彼は少し遠くを眺めながら、話を続けた。
なぜかその光景にあたしは浸っていた。
「朱莉ちゃんにとっては、ほんの出来事かもしんないけど
俺はそんな朱莉ちゃんに心が動いたんだ。
初めてだった。人を好きになったのは。」
遠くを見つめていた瞳があたしに向けられた瞬間、
胸の鼓動が鳴っているのが音に出そうなくらいに大きくなっていった。
あたしの心臓止まってっ!!
早くおさまれー!このドキドキ!
「朱莉ちゃん、俺と付き合ってください。」
そう言われるのは、なんとなく分かっていたはずなのに
なぜか、言葉が出ない。
「あ・・・」
彼の真剣な眼差しがあたしの心臓の音をより一層巨大にさせる。
「ご、ごめんなさい...。」
「っふ。」
彼は優しく微笑んだ。
「そんなこと知ってる。だって会ったばっかだもんな。
でも、もっと無理なこと言っていい?」
言っている意味がよく理解できなかった。
「俺、諦めないから。
これからだから。だからまだ朱莉ちゃんのこと諦めないからね。」
彼の言葉にあたしの心臓の音がもう限界に達していた。
「じゃあね。また、明日。」
そう言って、彼は屋上を後にした。
はぁーーーーーーー・・・・・・・・
ものすんごい脱力...
今、あたし告白されてふっちゃったのに
諦めないって言われたの?・・・
それって、よく小説や漫画に出てくるような
ストーリーになってるじゃん!
ぇぇぇぇぇぇえ。
あたし、どぅすればいいのっ!?
と、と、とにかく!夏輝に報告。
うん。うん?
なぜ、夏輝だ?
うん、まぁいいや。緊急事態としてね。
(夏輝ー!ヤバイよぉ!!告白されちゃったよぉー!!)
送信ボタンを押し、はぁとため息をつく。
ブーブーブーブー
早っ!
(よかったじゃん。おめでと。)
でしょでしょ!
夏輝もそう言ってくれると思ってた!
おし!
気合だ!
あたしの恋のレーダーが反応してるんだっ!
頑張るぞ!
川崎朱莉。恋に向かってまっしぐらです。