2人の過去
食料を買い集めいつも通り谷に着くと、慣れた手つきで谷底へ降りリムスを目指した。今回は1人ということもあり、周りの風景に目を奪われゆっくり歩いた。
崖の隙間から覗いてるマルチクの花やベコユニ。さらに、自然が豊富な所にしか巣を作らないという森の妖精アコ鳥や、キレイな水がないと生きていけない巨大魚ツクユナ。リムスに近づくにつれて、その光景は美しさを増していった。
2時間ほど歩くと今度は崖の上の方にも緑が見え始め、小鳥達の鳴き声が心地好く響き渡る。その時だった。
崖上の森の中から少女が飛び降りてきた。いきなりの事に僕はどうすることも出来ず、彼女の下敷きになると気を失ってしまった。
鳥の鳴き声にだんだん意識が戻り目をあける。ぼんやりとする視界に映ったのは翼の生えたつまり空人の金髪で緑色の瞳をした少女だった。
(サユキ?)そう思った時だった。
「あ、起きた?お姉ちゃ~ん。」
そう言って彼女は飛び出して行った。お姉ちゃん?確かサユキは長女、あんな事言うはずがない。しかも僕の記憶ではサユキの瞳の色は緑色ではなく透き通った藍色だった。
体を起こして周りを見渡すと思ったとおりサユキの家だった。ぼんやりしているとさっきの少女がサユキをつれて来た。
「やっぱり、チウ君だった、んだね。……良かった。ケガ、大丈夫?」
泥まみれのサユキが息を切らせながら話しかけてきた。
「…ありがとう。いきなり崖上の森から落ちてきたから驚いたけど。」
「あ、それはこの子。私はずっと畑仕事していたから。」
「…そういえば、その子は。」
「双子の妹、ハユキだよ。」
横にいるハユキはペコッとお辞儀すると
「これで気がすんだ?お姉ちゃん。じゃあ、うちはもう行くから。」
「待って、せっかく助けてもらったのに…」
そう言うサユキを無視して、少女ハユキは家を出て行った。
「……ごめんなさい。なんか。」
「構わないよ。僕の思ったとおりではなかったけど、こうなるって分かっていて来たんだし。それよりありがとう。手当てまでしてくれて。」
「ううん。この前のお礼だよ。こちらこそ、本当にありがとう。あれからヒュカの実を飲んでお母さんも弟もすぐに病気が治って、今はもう前みたいに畑仕事するほど元気になったの。」
「それは良かった。そう言えば、僕ここに居て大丈夫なの?もう大丈夫だし。」
「あ、うん。そう言えばチウ君こそ何していたの?しかもさっき、『こうなるって分かっていて、来たんだし』って。」
「特に意味はないんだけど、ただサユキ達の事が気になって。ケガの手当てをしたのは僕だし。」
サユキはそう聞くと
「チウ君って優しいのね。」
と言いながらにっこりと微笑んだ。
夕方になり、畑仕事を終えたサユキの家族が帰って来た。弟は地人の僕に驚いたのかすぐにサユキの後ろに隠れたが、サユキのお母さんは快く歓迎してくれた。どうやらサユキから全てを聞いたらしい。
結局今日はこのまま泊めさせてもらえることになった。
食事が済み、二階のサユキ達の部屋に行きみんなが寝た後、僕も持ってきた寝袋にくるまり眠りに就いた。しかし、夜中何か物音がして一階に降りてみるとサユキのお母さんが一冊のアルバムを観ていた。それを見ている僕に気が付いたお母さんは、サユキ達の昔の話をしてくれた。
サユキ達の家族は本来、どこの家族とも変わりない生活をしていた。しかし、7年前鳥人狩りが始まりサユキのお父さんはまだ弟がお腹にいたとき、鳥人狩りで仲間を庇い亡くなったってしまった。その後、小さい食べ盛りのサユキ達を食べさせるため、この家に越したらしい。
それ以来、お父さんが残した畑でなんとかやってこれたが、今年は作物の出来が悪く、食べて行けるのがやっと。という状態だった。
その話を聞き終わると僕は二階に戻り、自分に今なにが出来るのか眠りに就くまで考えた。
朝、僕はサユキ達の畑にいた。副業で農業をしているため、作業を少しでもサユキたちが休めるように先に作業をすること。それが僕の精一杯考えた答えだった。その後サユキ達が加わり作業は順調に進んだ。
作業が終わった夕暮れ、水以外口にしなかった僕は、自分の持ってきたご飯を食べると、すぐ眠ってしまった。
目が覚めたのは、まだ薄暗い早朝。畑に行く準備をしていると、サユキが見せたい場所がある。とチウを誘った。そこは家からさほど遠くない小高い丘の上だった。ここからはきれいな朝日が見えるらしい。
太陽が昇るのを待っているとサユキが言い出した。
「チウ君、昨日は…ありがとう。畑仕事、手伝ってくれて。」
「どうってことないよ。僕が勝手にやりたいって言ってやったことなんだから。後言ってるだろ、困ったときはお互い様だって。」
「でも、嬉しかった。今日はゆっくりしてて。私、もう傷大丈夫だし。」
「やるよ。僕だけ休むなんて出来ないから。サユキたちは今日もやるんだろ?僕、これくらい慣れてるから。」
「…ねぇ。なんでそんなに私たちに優しくしてくれるの?普通地人は私たちを見ると気持ち悪がって近寄ろうともしないのに。」
「ヒュカの実をくれた誰かさんと一緒だよ。僕は気持ち悪いなんて思わない。誰でも人は繋がらないと生きては行けない。そう思っているから。……後、罪滅ぼしのようなものかな。君を崖に行くように仕向けたのも、矢を放ったのも、僕の父さんなんだ。」
「!?」
「そんな父さんがはっきり言って僕は嫌い。普通の地人の家族なら、誇らしく思うだろうけど。君たち空人を傷つける地人が僕は見てられない。」
「くすっ……チウ君って変わってるね。」
「え?そうかなぁ。」
「まるで、地人の体に生まれた空人みたい。私、全然怖くないわ。」
「それって、褒めてる?貶してる??」
「貶してる訳がないよ!」
いつの間にか朝日は昇っていた。
もみじ「作者1号もみじと」
梨真「同じく2号梨真です!!」
もみじ「さて僕達のトークももうこれで合計6回目★梨真慣れてきたか?」
梨真「うん。もちろん。ってかここはうちらのトーク番組じゃないちゅーねん!!」
もみじ「おぉ。いきなり関西風に突っ込まれた。威勢がいいねぇ、なにかいいことでもあったのかい?」
梨真「いや、質問されても………しかも無いしな(^^;ってことでこのトークは飛ばして早速次回予告の方に行こう!!!」
もみじ「よ!待ってたぞ予告!!」
梨真「サユキの家にやって来たチウ!!もうすぐお別れかな?」
もみじ「おいおい早すぎないか?」
梨真「いやこんぐらいでしょ。しかもチウの父さん達が帰って来るまで後2、3日しか無いんだし。」
もみじ「まぁそうなるか。短かったな~にしても戻って、サユキのお母さん達、病気が治って良かったよね。」
梨真「ホントにね。あんな短期間で効くなんてすごいよね。ヒュカの実って。」
もみじ「おいおい、作者がそんなこと言ってどうする。この実は梨真が作ったんだろ!」
梨真「うん。でも改めてすごいなぁ~って。思わない?もみじ。」
もみじ「………おい、俺に振るな。ネタが尽きるわ。」
梨真「なんだか速いなぁ。」
もみじ「んととりあえず、」
もみじ&梨真「『【翔べないイカロス其ノ七】!!!!』」
もみじ「お楽しみに~~ヾ> v <」
梨真「あ、うちのセリフ取ったな!」
もみじ「こういうのは速い者勝ちです♪」
梨真「全く!!まぁ、いいわ。是非読んでね~(^-^)/」