父と子と
朝、いつものように起きた。違うことと言ったら昨日、風呂から上がった後、髪を乾かさなかったせいで頭が寝癖で爆発していること。そして、晩御飯を食べず寝たため、とてつもなくお腹が減っていることくらいだ。
しかしベッドから起きて最初にしたことは、汗でベトベトになった体をシャワーで洗い流すことだった。空腹ゆり何より、その不快感に僕は耐えていられなかった。着替えた後、リビングに行き牛乳をがぶ飲みする。
そして、机の上にある朝食を食べた後、ふとサユキの事が頭の中を過った。しかし、今行っても豪雨でリムスまでたどり着かない。しょうがなしに部屋に戻り、宿題に取りかかる。
いつも以上に家の中が静かなことに疑問を抱きながら昼過ぎ、パートから母さんが帰ってきた。そして、妹のユーニが居ないことに今更ながら気づく。
静かすぎな理由はこれだった。母さんに聞くと、どうやら今日からじいちゃんの家に泊まりらしい。つまり、久しぶりに親子3人の暮らしになるのだ。
しかし、特に変わったことはなく、普通の1日が自然に過ぎて行った。
夕暮れ、父さんが鳥人狩りから帰ってきた。そして、今回の収穫を誇らしげに語ってくる。毎晩するこの話も、それをする父さんも嫌いな僕はご飯の時以外、部屋に閉じこもって父さんとはろくに話さない。それが当たり前になっていた。
今日もそうしようと階段を上ろうとした時、僕を父さんが止めた。
「おい、チウ。話がある。後で俺の部屋に来い。」
「…なに?僕、宿題があるんだけど。」
「時間作れないのか?宿題なら、お前は鳥人狩りを全くやらないからいくらでも時間あるだろ。」
「…っほっといてよ!」
そう言って階段を駆け上がり、部屋に入る。ベッドに飛び込んで布団に八つ当たりする。
(父さんなんかに、僕の何がわかるんだよ!!!)
心の中でそう叫んだ。本当は本人の目の前でぶっちゃけたい。しかし、そんな僕の味方なんているはずもない。なぜなら自分は空人の敵、地人だからだ。そしてなにも出来ずにいらだつ自分がさらに虚しく思えてくる。
結局、今日はそのまま部屋に閉じこもり下に降りることはなかった。8時過ぎ、母さんが部屋の前に晩ごはんをのせたおぼんを置いた音がした。
食事を終えてベッドに寝転ぶと、自然と目が閉じそのまま寝入ってしまった。
目が覚めるとまだ夜明け前だった。バルコニーに出ると太陽が山際からうっすらと光を放つ景色が広がっていた。
太陽が見えるまで、僕はぼんやりと山際を見つめていた。すると後ろから、
「チウ。起きていたの?」
と母さんの声がした。
「うん。おはよう、母さん。」
「珍しいね。母さんより早く起きるなんて。いつもは起こされる側なのに、今日は先越されちゃった。」
「……そうだね。もうパートの時間?」
「今日は日曜日よ。たまには母さんにも休みちょうだい。」
「…………そっか。父さんは?」
「また、鳥人狩りに昨日の夜中呼び出されて、あれ?まだ帰ってないの?」
「いや。まだ下に行ってないから知らないんだ。ベッド、いなかったの?」
「いないわよ。じゃあまだ帰ってないみたいね。」
「そうみたい。」
「朝ごはん作るから待っててね。」
そう言って洗濯物のタオルを取ると、母さんは階段を降りて、料理を始めた。すぐにいい匂いが僕のいるバルコニーにまで広がった。
朝食を済ませ、宿題を終えると釣り道具と弁当を持って、僕は家を飛び出た。
釣りなんて好きでもなんでもないが、ただ父さんと一緒にいたくないだけの理由で僕は日曜、必ずと言っていいほど釣りをしに行く。
太陽が照りつける中、僕は必死にペダルをこいだ。そうして30分、河原にたどり着いた。いつものようにセッティングして竿をふる。
ぼんやりと空を見つめる。そしていつの間にか、サユキのことを考えていた。家まで送って行った時の光景が、頭から焼きついて離れない。
僕の今の生活からは創造も出来ないほど、サユキの家はとても清潔と言えなかった。
一本の大木に寄り掛かるように作られたサユキの家は床じゅうほこりまみれ。しかも屋根にはいくつもの穴が開き、家具は1つの机とその回りを囲む4つの手作り風の椅子しかない。食料は庭にある畑から採るようだが、チラ見をした僕の記憶には青々と茂る雑草しか見えず、二階のサユキ達の寝室だという部屋には、錆び付いた4つのベッドが寂しそうに置いてあった。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか魚が僕の竿にかかっていた。あわててひいたが、タイミングが遅かったようで餌だけ取られてしまった。そんなことを繰り返してるうちに、太陽はどんどん下がり、夕方になってしまった。僕は一匹も魚を採ることなく釣りを終えて、家に帰った。
「ただいま。」
釣りから帰り、玄関の戸を開ける。奥からふんわりと母さんの手料理の匂いが漂って来た。僕がその匂いにつられるまで時間はそこまでかからなかった。
「お帰りチウ。どうだった?今日は。」
「全然ダメ。今日はついてないよ。」
苦笑いしながら、僕は答えた。そんな時だった。
「釣りなんてするより、どうすれば少しでも効率的に鳥人を狩れるかを考えている方がよっぽど効率的じゃないか。」
居間で槍や弓矢の手入れをしていた父さんが会話に割り込んできた。一気に空気が凍りつく。空気が読めない奴だ。
もみじ「もみじで~す。」
梨真「梨真だにょ。」
もみじ「今回もはりきって行こ~★」
梨真「おう!!行って参りましょ>∇<」
もみじ「さて4話を振り替えって梨真。」
梨真「なに?なに?もみじ。」
もみじ「だんだんチウが置かれている状況がわかってきたな。」
梨真「ホントそうだね。なんとも言えないこの親子関係。」
もみじ「親父の立場いまんとこ最悪だな。」
梨真「確かに……。って盛り下げてどうするんだよもみじ!!」
もみじ「あ、つい悪い癖が(^^;」
梨真「ということでどんどん行こう!!やって来たぞ次回予告!!」
もみじ「おぉ。梨真がリードしてる。」
梨真「そこかい!!なにか悪いか?」
もみじ「いや。なにも。」
梨真「では早速行こう。予告!!」
もみじ「ついにチウが親父と言い争うぞ!!」
梨真「ケンカが嫌いなうちが必死に堪えながら出来た第5話。必見です(^^)v」
もみじ「あ、梨真ケンカ嫌いなんだ。」
梨真「うん。ってかもみじ。大抵の人はケンカ嫌いだと思うが?」
もみじ「まぁそうか。」
梨真「………ってかリアクション薄すぎるぞもみじ!!どうした。」
もみじ「いや。梨真たまには良いこと言うなって思って。」
梨真「『たまに』は余計だ!!」
もみじ「あはは。ということで」
梨真&もみじ「『【翔べないイカロス其ノ五】!!』」
もみじ「お楽しみにぃ~」
梨真「見てね~~♪」