崖下の少女
「ヒィ~ヤッホォ~~!!!!!」
渓谷に響き渡る僕たちの声。そう、今僕たちはバンジージャンプを楽しんでいる最中。風が全身を通り抜け、霧で見えなかった地面がだんだん見えてきて目の前に迫ってくる。このスリルとまるで翼がはえたかのようなの衝動にいとも簡単にはまった。
そして、いつの間にか時間は正午過ぎ。簡単に食事を済ませた後、また飛び込もうと自分たちの縄をしっかりチェックしあい、ウズウズしているミツンから飛び込んだ。
それに続き、ラビニと僕も飛び込んだ。すると真ん中の位置にいるラビニが僕のロープしか見えないと言い出した。急いで崖を登り、ミツンのロープを確認した。すると、途中からちぎれていた。無線機で連絡をとると運良く、ロープは伸びきったところで千切れたようで、谷底までの距離もそんなに長くなく、かすり傷で済んだらしい。しかし、ラビニと一緒に谷底へミツンを助けに行こうと荷物をまとめ始めたその時。
「うわぁあぁ~~~~!!」
とまるでゾンビに肩をつつかれたような
叫び声が聞こえてきた。
急いで崖を滑降りた。そこには驚きの光景があった。
僕は暫く、声が出なかった。いや、声を出すのを忘れていたというべきだろう。目の前に、生まれてこの方一度も見たことがないほど輝く金の髪をもつ少女が倒れていた。髪のほかにも、透き通るほど白い肌。普通の高校生男子が見惚れる要素に溢れている。しかし、僕の目に留まったのはその何れでもない。その視線の先にあるのは――翼と、肩に深く突き刺さった矢。きっと、今朝ラビニたちが言っていた昨日の鳥人狩りにやられた空人だろう。
空人、それは僕たち地人とは異なる存在。一時期は神の使者と崇められ、今では化け物と虐げられている存在――。
「――っん」
「っ! 生きてる」
彼女の呻き声で我に帰った。
「おい、どっどうするんだよ。」
「どうするって、ほっとくに決まっている……え?」
いつの間にか、僕は彼女をもっていた布で出血の激しい足や腕を縛り、応急処置をしていた。きっと、このままにしておく事は僕の良心か許さなかったのだろう。
「なにやってるんだよチウ!!」
「こんな鳥人を助けてどうするの?」
「リムスに連れて行こう。そうしたら、助かるかもしれない。」
リムスは空人の住むエリアの入口、そこに入った地人はほとんどいない。
「なに言ってるんだよ。……チウ、考え直せ。こいつは大罪を犯したやつなんだぞ!!」
「そうだよ。勝手に野生のヒュカの実を僕たちの土地から取ったんだよ。」
「嫌ならラビニたちは戻って。僕はこの子を助けたい。それに、ホントに取ったって言える?また勝手に疑われただけかもしれないじゃないか。」
しばらく間が空いた。ラビニたちはそれぞれ、座り込んで何かを考えている様だった。何分かたった時、ラビニが言った。
「………しゃ~ないな。オレ、行くわ。」
「ラビニ!!」
僕より早くミツンが反応した。
「チウ1人でリムスまで行くなんて無理がある。それにミツン、こいつが野生のヒュカの実取ったって証拠、あるのかよ。」
「………それは。」
「だったら、いいだろ。勝手に決め付けるのオレ嫌いなんだ。ちゃんと調べたい。」
「ラビニ……ありがとう。」
「どうってことないさ。オレたち"達"だろ。んでどうするんだ、ミツン。お前は上に荷物置いてるまんまなんだ。1回上戻らないと出発できないぞ。1人残るか?」
「いじわるだなラビニは。2人が行くなら、行くしかないでしょ。僕だってこのままじゃ自分が言ったことがホントじゃなくなってしまう可能性だってあるし……べ、別に賛成した訳じゃないんだから。」
「……ミツン。ありがとう。」
「んじゃ荷物もってこい。ちょうど真上にオレのロープがあるから。」
そういわれミツンは、登り始めた。そして30分後、みんなが揃い、僕たちはリムスに向かって歩き始めた。
どれだけ歩いただろう。1時間、2時間、霧で太陽の光が遮られ今どこを歩いているのかパソコンを持っているミツンしかわからない。
「ミツン、今何時?」
「それ、10分前に言ったでしょ。」
「オレとチウは担架持っているんだ。ミツンに聞くしかないだろ。」
「疲れたなら言ってよ。僕が替わるから。」
「ダメだろ。最初替わった時、ミツン3分もたなかっただろう。」
この前から僕とラビニが彼女をのせた自分たちの服と棒で作った簡易担架を持って移動してる。力がないミツンは1番前でパソコンで位置を確認しながら進んでいる。時々、休憩はとっているがほとんどずっと歩きっぱなしだ。
「あ゛~も~だめ。チウ、少し休もうや。」
「もうすぐ、洞穴があるはず。そこに着いたら今日はもうやめよう。なっミツン。」
「そうだね。後2.5km位で着くよ。それに、この後雨降るみたいだし。」
岩場を抜け、少し歩くと今回の泊まり場である洞穴に到着。しかし、そこはよくみるとこの洞穴は電気の通りやすいカノーブで出来ていた。そして、僕たちは雷で感電が起きるのを予測して、感電を防ぐスーツを着た。その瞬間、すごい雷鳴と一緒に豪雨が降りだした。
そして僕は雨水を集めてお湯を沸かして、父に教わった知識に従って手当てを始めた。矢の傷は手こずったが、何とかして腕や脚の傷を消毒し終え、白い羽も治療し終えた。手や足の傷を消毒し終え、白い羽も治療し終えて最後に残るは――服に隠れている部分。手当てとはいえ、異性の服を脱がせることには抵抗がある。よく見たら――よく見なくても、相手が美人だったため、余計にやりずらい。
しかし、だからと言って手当てをしないわけにもいかず、ちくちく痛む良心を押し殺し、服を脱がせた。直後、ちくちく痛む良心など一瞬で吹き飛んだ。手や足などより、むしろ服に隠れていた部分の方が重症だったからだ。痣が何箇所もあり、擦り傷の数も比ではなかった。見ていて痛々しいほどだった。
そうしてるうちに夜が明ける時間になっていた。雨は相変わらず降り止まず、どしゃ降りのまま。ネットが得意なミツンが天気を調べると、この雨が後3日続くらしい。薄着でしかも傷だらけの彼女、治療はしたがそこまで長くもってくれるだろうか。その時、地人環境省が電話を安否確認の電話をしてきた。その内容は今、安全にそこで待機しろ。救助隊を要請することもできる。が大半だった。そして最後に任務を受けた。それは、もしニュースに出てきた空人が避難してきた時は何も与えず何を頼まれてもやらず、そのまま死なすという内容だった。犯罪者扱いされているんだから当たり前だろう。しかし、今僕たちはいわゆる遭難者だ。どうするべきかこれは1人では決められない。僕は3人で話し合うことにした。
もみじ「もみじだぞ!!」
梨真「梨真です。」
もみじ「ついに一話が開幕!梨真、テンションどうだい↑↑」
梨真「もみじと同じだよぉ>∇<いや、それ以上かぁ!?↑↑↑」
もみじ「よしこのままアゲアゲで行こう!!!!」
梨真「おう!!行ってやろう!!」
もみじ「まずは次回予告にいきなり登場した千夏&千冬ペア。」
梨真「あ、なんかうちらの登場を自然と阻止したやつだな。しかも、うちらのトークより楽しかったような…………」
もみじ「まぁ、オレが書いたからな。」
梨真「…………………ブチ。それぶっちゃけるか!?」
「おいおい、梨真怒るな(^_^;ちゃんとオレ達の役割はあるから。」
梨真「まぁ、許すことにするか。そ言えばもみじ。」
もみじ「なんだい?梨真。」
梨真「さっきから予告をしてないんじゃ。」
もみじ「あは。ってことで予告だぜぃ>∀<」
梨真「待ってました!!初の予告!!!!」
もみじ「次回はチウとあの少女に何かが起こる………かも。」
梨真「かも。ってなんだよ!!起きるだろ!!」
もみじ「ってことで次回もお楽しみに!!」
梨真「楽しんで下さい!!!!」
もみじ&梨真「『次回【翔べないイカロス其ノ二】』」
もみじ「では次回もお楽しみに」
梨真「二回言ってどうするんだよ!!」
もみじ「大事なことなので二回言いました。では(^-^)/」