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悪魔か天使  作者: 桃太郎
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続き

「ぎゃ!?――ッテーな!何しやがる!」


「あんた私の従者になったのよ?なのに朝食の準備もせんと座ろうとするなんて躾がなってないから教えてあげたんでしょーが。」

言わないと分からないなんてと、これ見よがしに溜め息を付くことも忘れない。

「躾!?お前が躾語っちゃうの!?どんだけ面の皮が厚いんだよ!親の顔が見てみたいぜ!」

一瞬、ほんの一瞬だけ顔を歪めた雪華に、床に這いつくばってた天使は気づかなかった。


「―あら?玄関に写真があるわよ?そんな事にも気づかなかったの?」

精一杯の嫌味も鼻で笑われて終り。

なぜだか重い体が、さらに重くなった気がした。


「ねぇ?時間無いから早くしてくんない?」

「……天使は天上界では食べなくても大丈夫なんだぜ?なのに俺が作れるわけねーだろ。」


「……そう。ならしかたないわね。」

何かが体から抜けていくような、言い様のない不安と、体のダルさがイライラを募らせ、子供じみた意地を張ってしまった。

なのに。何をしてくるでもなく、サッサと出掛けていく雪華の後ろ姿を、呆けたように見送った。


(こんなに素直に引き下がるなんて………さすが俺だな!!サリュエルも俺の才能故にこの地に縛ったに違いない!――優秀すぎるとゆうのも、良し悪しだな~。……あれ?!て事は……すぐ帰れるんじゃね?)

幸せな思考に浸っている天使を、奇妙な音が現実へと引き戻した。


「おお!?なんだ?腹から音が鳴ったのか?正の糧溢れる天界と違って、口腔内摂取しなければ腹が減るというのは本当だったのか。……あれ、俺はどうやって飯を食えばいいんだ………。」

悲しい音を奏でる腹を抱えながら、あの女の恐ろしさを痛感した。

身をもって悟った。

しかし、時すでに遅く、雪華は居ない。

頼るものが雪華しか居ないことに、絶望を覚える。

フラフラする体に戸惑いながらも、一縷の望みにすがるべく、雪華の気配を辿って外へと一歩踏み出した。




「ぎゃー!!サリュエル様!あの馬鹿空飛んでますよ!」

鳩の視界を通して、雪華逹を視ていた監視の一人が悲鳴を上げた。

今あいつは半分人間なのだ、意識して姿を消さなければ羽は別として、その姿は人間にも見えてるとゆうのに!!


「結界を馬鹿の範囲三メートルに展開。」

「サリュエル様、準備も完了です。」

「よし!天罰カウントダウン開始。」

「カウントダウン。三・二・一・0」

「天罰!!結界内の人間には、あの馬鹿が中途半端な所から飛び降りたことにしときなさい。」

少し焦ったが、これくらいの記憶改竄なら許容範囲内だろう。


「サリュエル様……。鳩の視界もやられたらしく、監視の継続不可能です。」

「………なぜ?」

「え?鳩が、その。目を……その。」

「何のためのカウントダウンだ!貴様!今すぐ下界に飛んで鳩の代わりをしてこい!」

青ざめたまま、その場を動こうとしない部下を蹴り落とすと、思わず溜め息がこぼれた。

(あいつは桐本雪華の傍にいても消滅の心配の無い奴だが、その分どうしようもないほどアホなのに。大丈夫だろうか……?)



体を突き抜けた雷と、落下の衝撃に意識が飛ぶ。寸前。

お腹をダイレクトに刺激する良い匂いを、微かに嗅ぎとった。

「ああ、神よ。私に道を示して下さったのか!」



ボロボロになりながらも私が辿り着いたのは、楽しげな音楽が鳴り響く、不思議な場所でした。

そこで人間の皮をかぶった悪魔のような女人に出会ってしまったのです。

「こちらをご試食ください。いかがですか?」


優しい言葉と笑顔を俺に振りまき、ホコホコと湯気のあがった、見ているだけで口内に唾が溢れるモノを俺に差し出してきたのです。「い、いいのか?これを食べても罪にならないのか?」


無意識のうちにしっかりと爪楊枝を握り締めながらも、罪を犯してはならないとゆう、天使の矜持が最後の一線をたもっていましたが……悪女の前では無力でした。

「はい、大丈夫ですよ。此処にあるものはお客様に食べてもらうための物ですから。いくら食べてもつみになったりはいたしません。」


それが罠だと、最後まで私は気づく事が出来なかったのです。

にっこりと微笑んだ彼女の笑顔に、邪気は欠片もなかった―――なのに。

私は忘れていたのだ、人間界が、天使と悪魔、その他もろもろの者達の混ざり合う混沌の世界だとゆう事を!!そして、気がつけばこんな所に……。

狭い部屋でガックリと項垂れると、机の向かい側にすわる男が、頭を掻きながら天使の傍に立つ女につげた。


「さっきからこの調子で……。連絡先を聞いても貴女の名前しか言わなくてね。此方の勝手な判断で大学に電話して申し訳ないとは思うんだが、言うことがあまりにもアレでね……。この人の関係者は貴女だけみたいだし、こっちも参ってるんですよ。試食品を食べるのは罪にはなりませんがね、ワゴンにのせてあった物全て破って食べたとあっちゃあ……ね。しかも無一文。万引きをしたわけでもないが、なにぶんこんな事をしでかした人はこの人が初めてで……こちらも困ってるんですよ。」


困惑したように瞳を揺らしながら、女性が口を開いた。

「お話は分かりましたが、なぜ私が呼ばれたのか……いまだにわかりません。」(私を巻き込むな、殺すぞ)警官に見付からぬよう、密かに携帯に書き込んだ文字に、天使が項垂れるのが視界の端に映った。


「私の所に留学生を迎えるという話は確かにあります。ですが、こんな頭の残念な人物ではけしてありません。」

雪華からすれば、自分を天使だとゆうような人物と知り合いだと思われるなんて人生の汚点でしかなく、切り捨てるのが当然の選択だ。

だが、あいつらはそんな私を嘲笑うようにやってくる。

ヒラリ

雪華が話終える前に、三人が囲う机の上に、それは舞い降りた。

白く、透き通っているのか?と思うほど目立たない色の癖に、少しでも視界に入れれば強引に視線を奪うほど美しい。


「なんだこれは?どこから落ちてきたんだ………?」呆然と、見いられたように紙をひっくり返したり、撫でたりしている警官には見えていないらしい。


(どうやって此方の事を見ているのか知らないが、狡猾な奴等だ!!)

瞼をとじて、迷いを打ち消すと、それまでと違い、すんだ笑みをはりつけた。


「申し訳ございません、よく見たら彼でしたわ。ふふ、やはり常日頃からメガネをかけていなくてはなりませんわね。」

鞄から取り出したダテメガネをちゃっかりつけて、可憐な笑顔をうかべるも反応なし。


「・・・あの、お巡りさん?」

いまだに紙に夢中な警官に、私の中に住む天使が「こいつ、ぶん殴ったろうか!!」と、自分の代わりに憤ってくれ、「呆けている間に天使の事をうやむやにすれば、こちらの経歴に傷は残らない。―――そこの警官がどうなるかは知らんがな。」と、素晴らしいアイデアを悪魔が囁いた。

善良な市民で在るところの私が、警官を殴れるはずがない!で、あるならば、私達市民を護る勤めの警官さんに、胸をお借りするとしよう。


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