一話第二部
(私が神妙にしてるのに疑うなんて!なんていやな奴なの!!)
コックローチを口に突っ込んで噴出してやりたがったが、耐えた。
「非現実なことばかりだったでしょう?そういう時は、普通の事が気になるものなのよ」
「ふーん…。まあいいや、俺は天使なんだからな、ちゃんと敬えよ。さっきから叫びっぱなしだったからな、咽がいてーや。なんか出せ。」
優越感にゆがんだ顔でドッカと、私の、この私専用のソファーに座りやがった!!我慢、我慢よ雪華!!怒りの形相を、必死で押し隠して笑った。
「……今コーヒーのスイッチ入れたから、ちょっと待ってね?・・・待つ間に、これで遊ぶ?カメラって、言うんだけど。知ってるかな?」
「カメラ?もちろん知ってる」
興味なさそうに装っているが、目がチラチラ動き、カメラを意識しているのがまる分かりだ。
「買ったばかりだから、試し撮りしたいのよ。自分を写すのも寂しいものがあるし、あなたで試し撮りしていいかな?」
反応は劇的だった。
「マ、マジで!?まあ、ええけど。」
普通にしているつもりなんだろうけど、緊張のためか、背中の羽がひろがり、細かく震えるたびに、羽が抜け落ち、床をよごしていく・・・。
(が、我慢よ。これがうまくいけば、全てにけりが、ケリがつく!)
ペット売ります。
先ほどの写真をのせて、準備よし♪
機嫌を直してコーヒーをいれ、私の財布を潤してくれる奴めの、最後の奉仕を施してやろう。
……ところが!!
「なあ、なんで俺の写真がオークションで売りにだされてんの?」ときた。
「チッ、なんで人外生物が文字読めるわけ?オークションを知ってるわけ?はー、私丸め込むの苦手なんよねー。たいぎいわー。(え?ほんまよう!?これじゃあ厄介払いとお金、両方手に入れようとしているみたいじゃん!?こんな気分悪いの見ることないよ!!)」
「本心駄々漏れだし!つか、心の中の建前もヒデーし。喧嘩売っとんのか!!」
「ウッサイ!人の心読むなんて、なんてクズなの!!」
「それお前が言うか!?どんだけ自分のこと棚上げなんだよ!つーか、神の許しのあるお前と違って、天使たる俺様が一般人に見えるわけねーだろ?ネットの世界から見たら、テメーは自分のソファーを撮って、自分のペットです♪て言い張っている頭の悪い女だぞ。ま、これで。俺のカッコイイ姿が見える、それがいかに幸運か分かったろ?」
天使の言葉を聞いたとたん、顔から表情が抜け落ち、持ってきたコーヒーをぶちまけ、それでも収まらない苛立ちに、カップまで投げつけてしまった。
「ギャー!!あじあじあじぃぃぃぃぃギャフ!?」
(チッもったいない事を!!)
躍り狂っていた天使は静かになったが、割れた物は直らないのに。
「お前が来てから最悪なことばっかりじゃん!人のソファーも汚しやがって!!帰れ!チリに帰れ!!」
「はぁ!?コレはお前だろ!!お前がぶちまけたんだろーが!!最悪なのはこっちじゃボケ!!テメーなんざ地獄逝きになってろ!神様!神様!!まだ天界につながってるんでしょ!?聞いてましたよね!帰りますからね!?あいつは地獄がお望みだそうですよ!!」
テレビに向かってひたすら喚いていたと思ったら、こちらに向かってニヤリ。
「じゃあな!!せいぜい苦しみながら逝け!!」