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悪魔か天使  作者: 桃太郎
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一話第一部

これは奪われた私の自由と日常を、やつらから奪い返すため、孤軍奮闘した私の戦いの物語である。




明日の天気を確認していると、突然ヒゲ親父のアップに切り替わった。


いきなりの怪奇現象をテレビを切り替える事で排除しようとしたが変わらない…………。


「御主が桐本雪華(きりもと・せっか)か」


電源を押すと、切ることは出来たので満足していると又ついた………。


「切るか普通!え!?とか。な、何これ!?どんな仕掛けよ!?とか。だ、誰!?とか、色々あるだろ!!そういった可愛い反応を」


「ふー」なんか知らんけど、しょうがない。


立ち上がり、コンセントを抜いてみた。

又つきやがった!!


「だから切るなっつーの!!何で冷静なの!?話しやすくていいかもしれんが、混乱に乗じて…?ちょっ!ちょっと!?待て待て、待って下さい!壁に向けないで、布を被せないで!自分実は神です!話をきいてー!!」


コンセントを抜いても消えないということは、諦めるしかないわけで…。


諦めると言う言葉が腹立たしいが、さすがに自分のテレビを壊すのは嫌なわけで……。


変な生き物に耐性のある自分に嫌気がさしながらも、そんな事は感じさせない。


堂々とした態度で相手をうながした。


「あ、あの~。テレビの向きとか、掛かってる布とか、お話しするのに邪魔になると思うのですが……。どけてもらえないでしょうか?」


「私は気にしないけど、直したいのなら全知全能の力でご勝手に」


「そ、そんな…。全知全能の力でテレビて…。そんな孫の手みたいな扱いを……。」


珍しく私が譲歩してあげたのに、なぜか嘆かれた。

(こいつ、心底めんどくさいわね。)


思うと同時に立ち上がりかけると、慌ててこちらに向き直ってきた。


……こちらが見えてる?なら、向きなんか関係ないじゃん。とも思うが、脱線しそうだったので黙って話をうながした。


「実は、貴女はこのままでは地獄逝きが決定してしまうのです!!」


「?。別にいいけど。」


「ですが、大丈夫です!今回の事を天界では大変重く見ております!そこで、あなたの地獄逝きを阻止するための人材を派遣することにしました!!」


悲壮な声から一転、妙なテンションで喚きだし、こちらに身を乗り出すように身振り手振りではなしてくる。


正直、かなりのウザさだった。


「いらない。地獄逝きは気にしてないから、来なくていいわ。」


こういう相手には、冷静に、ゆっくり言い聞かすのが肝心だ。


「その人物はすで……え?い、いいの?気にしないの?」


キョロキョロと目を動かして、ああ……、とか。


そ、そんな……、とか。かなり挙動不審だ。私の言葉がよっぽど予想外だったらしい。


「だ、だってじごくですよ!?怖いんですよ!チクチクですよ!!」


チクチクって何だよ。どうでもいいけど、ヒゲ親父がウルウルしながら画面いっぱいに映ってるのがとても嫌。


私が顔をしかめたのが、自分のセリフの効果だと勘違いしたのか、とたんに餌を前にしたような(注意:優しそうな)顔になった。


「デモでも大丈夫です!あなたが地獄に逝かなくてもいいようにきょうせ…。もとい!修正してくれる優秀な天使を派遣しますので!!」


{「神様……本当によろしいのでしょうか。今回のこと、冥界に内密にするには彼女のエネルギーは強すぎます。それに、彼女が天界に来たときの歪みは」}


画面の外から囁くように、けれど、確実にこちらにも聞こえるように言われた言葉か聞こえたとたん、真っ赤に興奮していた顔を、爽やかな笑顔に切り替え、頭をたれて"少しお待ちいただけますか?"とこちらの了承もとらず、三途の川をバックに蛍の光が流れる画面に切り替わった。


「うるさい!その事はわしが何とかする!だいたい、サタンの奴にどれほど煮え湯を飲まされたか!サッチャンだってそうだろ!?俺が間を取り持ってやる。とか言っといて、サタンめがとったんだ!!」


(……駄々漏れなんですけど)


もともと話しに興味がないので、雪華はコーヒーを作りに台所に足を運ぶ。


(はぁ~、なんか面白いことないかしら…)


テレビ画面にいきなり神が現れるという奇怪な出来事がおこっているにもかかわらず、雪華の心にはさざ波すら起こらない。


コーヒーを飲み終え、小さな欠伸をこらえながら寝室に向かう途中、テレビにチラリと視線をやって、釘付けになった。


先ほどまでは穏やかな情景が流れていた三途の川に、小さな乱闘が始まっていた。


船頭に乗船を拒否されたものが、無理矢理乗ろうとして叩き落とされ、何度もチャレンジしているうちに、他の乗船拒否された者逹も奮起。


暴徒と化した彼等は、船頭を集団で叩き落とした舟を乗っ取り、勝利の雄叫びを上げながら自分達で漕ぎ出す者、返り討ちにあい、川の中に沈んでいくものがでる大乱闘を繰り広げていた。


「三途の川を自分で渡ったり、川に沈むとどうなるのかしら?」


普通のテレビと違い、生々しいまでの現象を感じさせる乱闘をみても、眉をひそめるどころか楽しげに見惚れる姿は、なるほど、地獄へ逝くのもうなずける。


興味深く見守っていると、天界もやっと気づいたようで、「三途の川が!」「帰るべき人間が渡っているぞ!」「霧を止めろ!吸っちまうぞ!」「どうなってるんだ!?」「警備はどうした!?」「神への抗議の署名をこちらに持って来ているようです!」「すぐに向かわせろ!」「このままでは死神から苦情が来ますぞ!」「何てことだ!洗浄の川へ落ちているのは、生き返りの奴です!!」「早く救い出せ!!」「消えた記憶はどうします?!」「知るか畜生!!……おい!神は!神はどこいきやがったー!!」


疑問も解決したし、いきなりきれたので、話しも終わりと油断していた。


魔の手はすでに、我が家に迫っているとも知らずに…。





次の日、部屋で休んでいるとゴング(チャイム)が鳴った。


「はい、どなた?"ドアを開けるとそこに、天使のコスプレをした変態が立っていた。"さいなら!!」


急いでドアを閉めたのだが、変態はしつこかった。


「いやいやいや、小声で言えば何を言っても許されると思うなよ!!つーか、神から俺のこと聞いてるだろが!おいこら!開けやがれ!」


ガチャガチャガチャガチャ、ヒジョーにしつこい。


「えい。」電流撃退システム作動。


「ぎゃぁぁぁあぁあ!」


「ふっ、一件落着」


しかし、ホーム・アローンに憧れて作った物が、本当に役に立つ時が来るとは………。


「世も末ね」


ソファーに腰かけ、ポツリと呟くと、目の前の空間がゆがみ、そこから撃退したはずの変態が部屋に入ってきたので、


「世も末とか、お前が言うな!!」


机のポケットに入っているコックローチで撃退。


「靴はいて入ってくんな!!」


「ぎゃぁぁぁあっっ!○△×□」


顔面を押さえてのたうち回っているが、五秒で"シトメル"という効果は発揮されていない。


「うーん。……不良品かな?」


「不良品かな?じゃねーだろーが!!」


さっそくクレームを!と、携帯片手に殺虫剤を睨んでいると、ヒョイと抜き取られ逆噴射。


今度はこちらがのたうち回ることになった。


「ギャア!?てっ、何すんのよ!!これはね、人様に向けてするような物じゃないのよ!!」


「お前が先に俺に向けて使ってきたんだろーが!!」


「はぁー!?あんたなに言ってんの?私は人様にって言ったじゃろ?ハン!!まさか自分が人間の定義に入っているとでも!?背中に羽と、頭に触角持ってんのは、虫って決まってんのよ!恥を知りなさい!!」


はん!私の言葉にぐうの音もないようね。


絶句するその姿は私の哀れみを誘い、この私が!譲歩してやろうとしたというのに。


「はぁ~?!触角?触角つったの!?背中の羽は良しとしよう、羽だし。でも、頭のコレはリングだろ!?触角違うし!スゲーキレーだろ!?なんで触角にみえんだよ!!アホかテメーは!」


背中の羽を怒りに膨らませ、頭のリング?を指差してわめいている相手を、上から下までジックリと眺めて、気持ち、頭を下げ。悔やむように呟いた。


「そうよね、確かにあんまりだわ。私、あんまり虫って得意じゃないけど、喚きちらすウザイ奴よりましよね…謝る…」


「うがー!!ふざけんな!俺はな!て・ん・し・だ!虫っころや、テメーら人間よりはるかに貴重で、希少で、奇跡のような存在なんだよ!分かったか!!」


噛みつくように放たれた言葉は、雪華を撃ち抜いた。


(貴重!希少!ああ!どうして気が付かなかったのかしら!?)


「ごめんなさい!私ったら、何てひどいことを…。混乱してしまっていたの……許してはもらえないかしら?」


意志の強そうな切れ長の赤瞳を潤ませながら見上げ、祈るように組まれた両手は胸を強調しするように押し上げる。


見上げたときに揺れた白銀の髪が、甘い香りと煌めきを放ち。短く整えられた髪からは、形の良い耳がよくみえる。


ホンの些細なその行動が、天使の怒りで赤く染まった顔をさらに赤くした。


(お、おのれ!面妖な技を使いやがって。)


「混乱~?靴がどーの言ってたお前が?」


削がれた気勢を取り戻そうと、ことさら意地悪な口調になった。

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