全校集会
三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅうよん。
開けられた扉から、冷たい風が入り込む。
眠気覚ましには丁度いいが、さすがに寒くて堪えてしまう。
これ、冬場でも開けているから教師陣は何を考えているんだろうと思う。
「……」
そりゃ、生徒と違って。
それなりに厚着をしていて、それが許されているから、開けられていても寒くないんだろうけど……こちらは、制服しか許されていないのだ。
少しは考えて欲しい。
「……」
夏場はそれなりに涼しいんだけど、さすがにまだ寒い。
朝はまだ冷えるんだから、考えて開けてくれ……普段から風が強くて体感温度なんて他より低いのに。
その上、ここは体育館だ。冷えるに決まっている。
「……」
広いとも狭いとも言えないそこに、全校生徒が集められている。
なんだかんだ入るんだから、それなりに広いんだろう。
体育館なんて、自分が通っていた学校の体育館くらいしか知らないから分からない。
「……」
その全校生徒から視線を向けられているのは。
舞台の上に立ち、マイク越しに何かをモゴモゴと話している校長だ。
今年に入ってから変わったので、まだ名前を覚えていない。
ただでさえ人の顔と名前が一致しづらいので、滅多に見ることも話す事もない校長の名前なんて覚えようがない。
「……」
定期的に行われる、全校集会とかいう。
必要があるのかどうかという。
ただ校長のありがたいお話を聞くだけの。
「……」
ダラダラと、毎回よくしゃべる。
毎回と言う程回数は重ねていないはずだが、まぁ、よくしゃべる。
ダラダラと……生徒の反応を見てみたらいいのに。
こっくりこっくりと船を漕いでいる人がたくさんいる。
「……」
こういうのって、尺が決まっているからあまり話してもよくないのでは……。
ほら、少し離れた位置で今日の視界をしていた教師が迷惑そうな顔をしている。
一応、今日のメインは校長の話の後だろう。
「……」
長期休みの前は、必ず生徒指導からの話がある。
毎回だけど、今回はゴールデンウィーク前で、色々と話す事があるのだろう。
それをヘンに端折るわけにもいかない。プリントは配布されるだろうけど、話したという事実がいる。
「……」
もう何の話をしていたのか分からないが。
なんか……何かの運命だとか、さよなら……なんて?さよならだけが人生だと言ったか?校長が何の話をしているのかさっぱり分からないが、どういう流れでその言葉が出てくるんだろう。説法でも話しているのか?なら本職の人に任せた方がいい。
「……」
もう聞く気にもなれないし、興味もないし。
寒いし、何を言っているかさっぱり分からないし。
元々集中していなかった意識は、あっさりと途切れる。
代わりに、なんとなく、周囲に視線を動かす。
「……」
ゆらゆらと揺れる頭が複数。
隣の生徒とコソコソ話している生徒が何人か。
もう既に頭が落ちている生徒も何人か。
「……、」
その中にあの子もいた。
出席番号順に並んでいるので、大体いつも同じくらいの位置にいる。
ゆらゆらと頭が揺れているようだ。そりゃ眠くもなる。
「……」
今日は1限目から体育があるのか、髪をポニーテールに纏めている。
床につかないように前に流された髪が、頭に合わせて肩をすべる。
もうほとんど目をつぶっているように見えるが、さすがに寝てはいないだろう。
……いや、寝てないかあれ。
「……」
しかしそれを確信する前に、ようやく長い話が終わり。
急ぎ足で次のお知らせが告げられる。
少々大き目の声で話し始めたため、船を漕いでいたすべての頭があがった。
あの子も、は、と言う感じで。
「……」
この集会が終わったら声掛けに行こう。
寝てたでしょって。
お題:さよならだけが人生だ・運命・体育館




