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第三話:10秒間の不協和音


 ――キィィィィン!

 鼓膜を刺すような高周波音が、廃バスの車内に響き渡る。

 偽物のカイザが構える『カイザブレイガン』。その銃口から放たれた黄色の光弾が、俺の肩をかすめてシートを灰に変えた。

「ターゲットの戦闘能力を再評価。――排除レベルを最大に引き上げます」

 無機質な声。あいつ(草加)なら、ここで「死ねよ、海堂」とでも吐き捨てて笑うはずだ。目の前の機械人形には、その毒気すらねえ。

「……ハル。奥で縮んでろ。いいか、絶対に見るんじゃねえぞ」

 俺は懐から取り出した劇薬を、迷わず自分の首筋に突き立てた。

 熱い。血管の中を、溶けた鉛が走り抜けるような感覚。全身の細胞が、無理やり心臓を叩き起こし、限界を超えた速度で燃焼を始める。

「……さあ、開演だ。俺の葬送曲を聴かせてやるよ」

 俺の肉体が、スネークオルフェノクの姿へと変貌する。

 だが、その輪郭は陽炎のように激しく揺れていた。

『START UP』

 視界が、一瞬でモノクロの世界へと切り替わる。

 落ちていたガラスの破片が宙で止まり、降り注ぐ雨の一粒一粒が空中で静止する。

 10秒間。俺に与えられた、死へのカウントダウン。

「らあああああッ!」

 加速の領域で、俺は地を蹴った。

 偽カイザの懐に飛び込み、渾身の突きを叩き込む。

 一撃。二撃。三撃。

 だが、おかしい。機械のくせに、こいつの防御ガードには淀みがない。

 加速している俺の動きを、まるで「あらかじめ知っていた」かのように、最小限の動きでいなしていく。

『THREE……TWO……』

「……なっ!?」

 加速が切れる直前、偽カイザの目が不気味に赤く明滅した。

 奴は、俺が実体化する瞬間に合わせて、ブレイガンを逆手に持ち替えていた。

「計算通りです。あなたの動きは、過去の海堂直也の全データと一致します」

『TIME OUT』

 加速が解けた瞬間、強烈な衝撃が腹部を貫いた。

 ブレイガンの刃が、俺の脇腹を深く抉る。

「ぐっ、あああああッ!!」

 吹き飛ばされ、廃バスの壁に激突する。

 変身が解け、床に這いつくばる俺の指先から、今までとは比べ物にならない量の砂が溢れ出した。

「……ここまで、かよ。結局、俺は何も……誰一人……」

 霞む視界の向こうで、偽カイザがトドメを刺そうと剣を振り上げる。

 ハルが悲鳴を上げる。

 最悪の結末だ。木場に、巧に、合わせる顔がねえ。

 その時。

 廃バスの入り口を、一台のバイクが突き破って現れた。

「――海堂!! これを使って!!」

 真理だ。

 彼女が投げ飛ばしたのは、かつて村上と呼ばれた男から託された、一つの奇妙なアタッシュケースだった。

 そこには、俺の知っているどのギアとも違う、漆黒のベルトが収まっていた。

「……なんだよ、これ。ファイズでもカイザでもねえ……」

「村上が言ってたの! あんたが、巧の意志を継ぐつもりなら、その『ゼロ』を受け入れろって!」

 ベルトのバックルには、三つのゼロが刻まれている。

 俺は震える手で、そのベルトを腰に巻いた。

 砂になるか、あるいは怪物として生き永らえるか。……そんな選択、もうとうの昔に終わってんだ。

「……やってやるよ。俺の人生、最初から最後まで不協和音だらけだったからな!」

 俺は、スマホ型のコード入力デバイスを手に取り、死に体の指でコードを叩き込む。

『0・0・0』

『STANDING BY』

「……変身!!」

 漆黒の閃光が、廃バスを飲み込んだ。

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