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第七話:偽りの帰還、真実の牙

第七話:偽りの帰還、真実の牙

 雨音を切り裂き、突如として放たれた銀色の閃光。

 それはスマートブレインの量産型ライダー兵器『ライオトルーパー』の精鋭部隊だった。

「ターゲット・ハル、およびイレギュラーの回収を開始する」

 店の周囲を包囲する無機質な兵士たち。その中心に、一人の大柄な男が悠然と立っていた。

 九条暦の腹心――レオ。彼は首を鳴らし、野獣のような笑みを浮かべる。

「おいおい、シケた面してんなぁ。再会の挨拶にしちゃあ、ちょっと地味すぎやしねえか?」

「……レオ、か。スマートブレインの犬が、群れを成して何の用だ」

 海堂はまだ癒えぬ体に鞭打ち、ハルを背に庇う。脇腹の傷が熱く疼き、全身の倦怠感が「変身するな」と脳に警鐘を鳴らしていた。

 だが、海堂の隣で、一人の男がゆっくりと前に出た。

 記憶を失い、自分の名前さえ定かではない男――乾巧だ。

「……巧、下がってろ。てめえは今、ただの人間なんだよ」

「人間……か。そうかもしれないな」

 巧は自分の掌をじっと見つめ、それからレオを、そして震えるハルを見た。

 15%の記憶。そこから溢れ出すのは、理屈ではない「不快感」だった。

「けどな。……弱い奴を大勢で囲んで、笑ってる奴らの顔。……それを見てると、どうしようもなく腹が立つんだ。胸の奥が、熱くて仕方ねえんだよ」

「はっ! 記憶がなくても御託だけは一流かよ、乾巧!」

 レオが地を蹴った。その姿が、獰猛なライオンを模した怪人――レオオルフェノクへと変貌する。

 鋭い爪が巧の喉元に迫る。

「巧!!」

 海堂が叫ぶ。だが、巧は動かなかった。

 否、動けなかったのではない。

 極限の集中の中で、彼の脳内にノイズ混じりの「戦闘記録」がフラッシュバックしていた。

 ――左だ。

 巧は最小限の動きでレオの爪をかわし、カウンターの拳を叩き込む。

 生身の、それも再生されたばかりの脆弱な拳。だが、その一撃は的確にレオの急所を捉えていた。

「ぐっ……!? てめえ、変身もしてねえのに……!」

「……体が、覚えてるんだ。……お前みたいな奴を、どうやって黙らせるか」

 巧の瞳が、一瞬だけ鋭い「ウルフ」の光を帯びる。

 その背中を見て、海堂は自嘲気味に笑った。

「……けっ、全くだ。記憶なんかなくても、最高にムカつく乾巧のままだなッ!!」

 海堂は震える手で『000』のベルトを腰に巻く。

 砂化の恐怖。死へのカウントダウン。そんなものは、この男の背中を見た瞬間にどうでもよくなった。

「真理、ハルを連れて奥へ行け! ……ここは、俺とこいつのステージだ!」

『0・0・0』

『STANDING BY』

「変身!!」

 漆黒の閃光が店内に溢れ、仮面ライダーゼロが降臨する。

 海堂はゼロ・スリンガーを引き抜き、ライオトルーパーの群れへと突っ込んだ。

 一方で、レオは不気味に笑った。

 彼が懐から取り出したのは、一本の銀色のシリンダー。

「九条様からのプレゼントだ。……乾巧。お前の『15%』を、100%の『絶望』に変えてやるよ」

 シリンダーから放たれた黒い霧が、巧の体を包み込む。

 巧の叫び声が、雨音にかき消された。

「ああああああああああッ!!」

 その背中から、かつての「救世主」のものとは似て非なる、禍々しい漆黒のフォトンブラッドが噴出する。

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