【乾巧:残された15%のアーカイブ】
スマートブレインの演算装置が「ノイズ」として処理し、削除しきれなかった深層意識の断片。
1. 「熱い」という感覚(味覚・触覚の拒絶)
真っ白な空間に響く、カチャカチャという食器の音。
目の前に出された湯気の立つスープ。それを口に含んだ瞬間の、舌が焼けるような痛みと、それを見て笑う誰かの声。
「猫舌なんだから、無理しなきゃいいのに」
――その「誰か」の顔は見えない。だが、その声を聞くだけで、胸の奥が締め付けられるように熱くなる。この「熱さ」だけが、彼が人間であった証として深く刻まれている。
2. 「灰」の匂い(死への恐怖と受容)
自分の指先が、パラパラと崩れ落ちる光景。
風に舞う、無機質な灰の匂い。
死ぬことは怖くない。だが、**「誰かに忘れられること」**だけが、耐え難い恐怖として残っている。
「俺は……ここにいた。確かに、生きていたんだ」
この強い自己肯定の意志が、記憶を失ってもなお、彼を「戦う者」として立ち上がらせる本能となっている。
3. 「守りたい」という衝動(唯一の行動原理)
夕暮れの土手。誰かの背中。
その背中を守るために、自分は何かを手に取った。
重い金属の感触。赤い光のライン。
具体的な「ファイズ」の形状は思い出せなくても、**「誰かが泣いているなら、その涙を拭うために拳を握る」**という回路だけは、上書き不能なOSのように彼の魂に焼き付いている。




