水の中、水の外
掲載日:2026/02/10
僕は水の中の街に住んでる。
水は音を伝達するのが難しくて、僕たちは言葉を発しない。
髪がゆらゆらしているずっと向こうに何かが見えた。
街の建物は、水の上の世界にもそびえている。
階段を登ると、水の外へ出た。
「大丈夫?」
水の外の街の少女が僕を見つけて言った。
「だ、じょ、ぶ」
僕は生まれて初めて言葉を発した。
「水の中からきたの?」
「み、ず」
「水。空気」
僕は彼女から言葉を習った。
「一緒に、僕の街へ行こう」
そう言って彼女の手を引いたら、彼女は水の中でもがき苦しんだ。僕はびっくりして彼女を空気の街へ帰した。
「お水」
ちっちゃな子が指差して言った。
「お水の中には、誰も行けない街があるのよ」
妙齢の女性が言った。
「街?」
「不思議な人たちが住んでいるの」
ふうん、と子どもは言った。
「おーい、おーい、聞こえるかあ?」
みんなで叫んだけれど、届いたかどうか、誰もわからなかった。




