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86話 ここからは別れて進みましょう

 招待状に書かれたその日、ついにオレ達は案内に従ってその場所を訪れていた。

「日付、場所、時間……本当にここで合ってるんだよね」

 不安そうな声を最初にあげたのはユーリだった、でもきっとそう思ったのはユーリだけじゃなくてこの場にいる全員だ。

「ああ、読み間違えるわけないし合ってる筈なんだけど……」

 あの暗号を考えたのはオレ、だから流石にずっと使っていなかったからって間違える筈はない。

 でも目的地だったその場所は王都から少し離れたただの森林、建物もなければ人の気配だってしやしない。

 だからといって手紙の差出人が愉快犯だったって線はないだろう。

 そもそも知ってる人間の少ない暗号を使ったりなんて手が込み過ぎている。

「……あの招待状はセリム・フォスターに宛てられたものだった筈だが何やら不純物まで付いてきてしまったようだな」

「誰だ……!」

 ふと、考え込むオレ達に向けられた敵意のある声にすぐに反応して周りを見渡すもオレ達以外には誰もいない。

 ということは声の響きからも察するにおそらくは声だけを届ける拡声魔法の類いだろう。

「誰だって構わないだろう、まぁ他のものが付いてくるのも想定内、だけどここから先はそれぞれ専用の道しか用意されていない、仲良しこよしで手を取り合っては進めないだけさ」

「っ……全員固まれ!!」

 男が言いきったその時、確実に空間の歪みを肌で感じた。

 オレが反応するより先にいち早くララ様が集合をかけるも時すでに遅く、気付けばオレ達が立っていたのは暗い闇のなかだった。

「……これは、空間転移魔法か」

 見渡す限り無限のように漆黒が続き、オレ達の周囲を囲むように6つの玉が薄暗く光っている、これが高位の空間魔法であることはすぐに理解した。

 敵が先手を打って準備をしていたとしても戦場で戦い慣れしているララ様を含めて全員を一気に転移させるなんて芸当早々出来るものではない。

 魔法適正全知のユーリなら簡単に出来るかもしれないが適正最上のオレでもやっとといったところか。

 そしてどうやらオレ達以外のユースクロイツ家の兵達はここには迎え入れて貰えなかったらしく、この場には6人しかいなかった。

「数はちょうど6つ、バラバラに行けってことだね」

 アニはすぐに場の状況を理解して呟きながら軽く頷く。

「ユースクロイツ家の兵達は違う場所に転送されたか……」

「……でも、ここまで来たらもう戻れないよ」

 敵に一枚噛まされたララ様は苦虫を噛み潰したような顔をするがユーリは既に次にするべきことを決めていたようでひとつの光の前に立つ。

「っ……お嬢様まで一人で行かれる気ですか!?」

 それに対して慌てて難色を示したのはシグナ、シグナはユーリの騎士だから当たり前の反応だ。

 オレだって同じ立場だったら同じ反応してるし。

「相手がそれを望んでるなら仕方ないよ、このゲートもきっと一人しか通れないし、無理やり二人通ればそれこそ何が起きるか分からない、帰り道もない、それに何より……」

 ユーリは一度そこで言葉を途切れさせるとしっかりとその桃色の瞳に意思を宿してオレ達のほうを見据えて続けた。

「私だって戦える」

「はっ、流石だな、うちの女子達はみんな強すぎるだろ」

 そして杖を取り出したユーリにオレは耐えきれずに吹き出して額を片手で押さえる。

 ユーリやハイネにいつもこうしてカッコいいところを取られるからこっちはこっちで形無しなんだけど。

 まぁそれでこそって感じはするけどな。

「私だってハイネに負けないんだから」

 ユーリはそう言って笑うけどある意味で言えばユーリはいつだってハイネに並ぶか勝ってるくらいには癖が強いほうだとオレは思う。

「とりあえず一人ずつ行くとして、必ず無事に合流しよう、もちろん、ハイネも含めてね」

「……ああ!」

 オレ達はアベルの言葉を合図にそれぞれがそれぞれに光を選んで歩を進めた。

 オレは選ぶとき、ある光の先に少しだけ蒼い輝きを見たような気がして、吸い込まれるようにその光を選んでいた。

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