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83話 幼馴染みの独断専行を止めたのは推しでした

「……持ち物は少ないほうがいいな」

 深夜、オレはもう一度装備を確認してから自室を出る。

「……ハイネ、今行くからな」

「やっぱり、張ってて良かった」

 寮の玄関で扉に手をかけて自分に発破をかけているとふと、よく知った声に呼び止められた。

「……ユーリ、こんな時間に何してんだよ」

 ここで無視することも出来ないし、オレは振り返るといつもと変わらないように努めながら返事をする。 

「それはこっちの台詞だよ、セリムはどこに行く気なの?」

 ユーリはずかずかとオレのパーソナルスペースなんて無視する勢いで詰め寄ってきて、一番聞かれたくないところに触れてくる。

「オレは……別に……散歩とかそういうところ」

「……ハイネのこと助けに行く気でしょ」

「……だったらなんだってんだよ」

 勿論その場限りの適当な嘘なんて通じるわけもなく、白状したオレにさっきまで優しく笑んでいたユーリの表情がスッと消える。

「招待状の日にみんなで動くって話したのに、何でまた独りで全部しようとするの?」

「その日まで待ってて、ハイネに何かあったらどうすんだよ」

 そう、招待状に記載された日にみんなで動く、そう話し合いで決まった、それでもオレは動かずにはいられなかった。

 オレがこうして呑気に生きてる今、ハイネがどんな目にあっているのかなんて想像しても分からない、だから、早く助けられるならそれに越したことはない。

 ユースクロイツ家の兵を動かすにも時間がかかる、だからこそ招待状の日付はちょうど良かったらしいけど、それなら兵なんていなくてもいい。

 オレが助けるから。

「それこそ、それなら何で私たちに言ってくれないの」

「……じゃあ逆にさ、言ったら何か変わるのかよ」

 怒ったように咎めてくるユーリにオレの声にも棘が孕む。

 ハイネとのことがあってからユーリとはぶつかってばかりだ。

「シグナもアベルもララさんも、アニ先輩だって戦える、私だって回復魔法も使える、それでも……セリムはみんなが足手まといだって、言いたいの?」

「別にそういうことを言ってるわけじゃ――」

「セリムはいつも態度で示してるじゃない……!」

「っ……」

 めったに聞くことのないユーリの怒声にオレは軽く怯んだ。

 別に他の奴らを足手まといだと思っているわけではなかった。

 あの封筒はオレ宛だったからオレも関係する誰かの仕業の可能性が高い、だから、兵もいないのに他の奴らを巻き込むべきじゃない、そういう考えは明確に頭のなかにあった。

 でも、心の奥底に、自分だけでどうにかできると思っている自分がいたことも少なからず事実で

「どうしてそんなに信じてくれないの、どうして自分だけがハイネのことを想ってるって、心配して身体が動くのが自分だけって、思ってるの、そんなの……ただの独りよがりじゃん……!」

「……ユー、リ、オレは……」

 オレの胸を泣きながら叩くユーリに、何も言い返すことは出来なかった。

 オレ達は確かに永い付き合いだけど、オレとハイネはさらに付き合いが永い、だから、自分だけがハイネの全てを理解してオレが一番に身を案じている、そう考えることが全く無いとは、言いきれなかったから。

「はい、そこまで、止めようよ、寮のほうまで聞こえてきてるよ」

 オレにすがって泣くユーリに固まっていればカチリと小さな音がして部屋の電気がつく。

 そして、部屋の入り口には見たことのない表情を浮かべるアベルが立っていた。

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