80話 喜んだって知ったら多分また怒られますね
「大人しくしていろ、暴れてもどうせ出られない」
あのまま食事を終えると私はまた同じ部屋に戻された。
「一回も暴れてないけど……」
部屋に戻すだけ戻したモブはいかにも小物みたいな捨て台詞を吐いて出ていったけど、残念ながら一回も私は暴れていない。
「……はぁ、みんなは元気にやってるかな」
適当な椅子に腰かけて、時間があると途端に思い出すのはみんなのことだった。
セリムは多分荒れてるんだろうなーとか、ユーリには心配してて欲しいなとか、シグナも何だかんだ気にしてくれてるんじゃないかとか、アベルに関しては……よく分からないが本音かもしれない。
あの王子本当に考えが年々読めなくなってきてるのよね。
「……やっぱり、こんな状況だけど不安はそんなにないかな」
誰もいない部屋のなか、言葉にしてみても私の気持ちは変わらなかった。
今ここにいるのが主人公のユーリではなく悪役令嬢のハイネでも、きっとみんな動いてくれる。
ゲーム風に言えば幼少期とこの1年間で救出イベントを起こすだけの好感度は上がっていると言っていい。
あの日の校内放送で私はそれをちゃんと自覚したから、だからこんなにも不安な感情とは縁遠いのだろう。
「でもだからこそ、これは知られたら怒られそう……」
私本人としては今回ユーリ誘拐イベントが私に移ったのは嬉しい誤算だった。
それだけユーリの危機を肩代わり出来たわけだし、まぁ死ぬ可能性のあるイベントの肩代わりは軽く恐怖ではあるけれど。
そして好感度を知った今だからこそ分かるのは、こんなことを少しでも考えたとみんなに知られたら絶対に怒られるということ。
そうじゃなくても二、三度やらかしているわけだし。
だからまた再開できた暁には代わりになれて良かったなんて馬鹿げたことを言わないようにしないといけない。
そんな自分の日常を考えながら、私は夜をただ待つのだった。




