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76話 しがらみは一旦置いておいて協力しましょう

「……協力? ハイネの身体にも心にも傷を付けたヤツとってことか?」

 ジークの言うあまりにも自分勝手な台詞にオレは嘲笑いながら言葉を吐き出す。

「……そう、なりますね」

「お前それ、本気で言ってるのか……?」

 そして目を泳がせているジークとの距離を少しずつ詰めていく。

 途中でシグナに腕を掴まれたけどそれは力の限り振り払った。

「はい、彼女を助けるのなら、自分がいたほうが必ず良い筈、役に立てます」

「……そういう問題で言ってんじゃねぇって、何で分かんないかなぁ」

 オレに距離を詰められても震える声で続けるジークに何かオレのほうがバカみたいに思えてきて自分の頭髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。

「罰は、彼女を見つけ出してからいくらでも受けます、ただ今は……彼女を見つけることが先決です、だから――」

「……っ」

 そして、次の瞬間には拳を振り上げていたけれど、それを止めたのはさっき同様にユーリだった。

「セリム、止めて」

「退けよユーリ、コイツのせいでハイネがどんな目にあったかなんてお前も理解しているだろ」

 オレは声でユーリに退くように促す。

 アベルやシグナならまだ無理やり目の前から退かすことも出来るけど、ユーリには流石にそれは出来ない。

 相手が女子だからとかそういうのはあまり関係ない、ただユーリは、ハイネが一番大切にしている人だ、それをオレが傷付けるわけにはいかない。

「それはそうだけど、でも今はそれよりもハイネ本人を見つけ出すことが優先だよね? 今どんなところにいてどんな目にあってるのかも分からない、それなら誰の力を借りたって、その人にどんな感情を覚えたって……ハイネを見つけるのが優先事項だと思う」

「……」

 ユーリの言っていることはもっともだった。

 今のオレは自分の怒りで暴走してるだけ、最初に優先しないといけないのはハイネの安否なのに、簡単に言えば守れなかったあの時と同じになってた。

 オレはいつだってハイネのことになると頭が回らなくなる。

「……もちろん国も手を尽くして探してくれてるけど、そんなの待ってなんていられない、探しだそう、私達でハイネを」

 そしてユーリは言いきるとオレとは違って希望の光を灯した瞳をこちらへ向けた。

 この瞳と似たような瞳を、オレは何度も身近で見たことがある。

 そして、ユーリのその瞳に別の誰かさんを重ねたら怒っているのもバカらしくなってきて

「……はぁー、お前本当にハイネに似てきたよな、分かったよ、今回は一旦しがらみは置いておこう、代わりにハイネが戻ってきたら本気で一発殴らせろよ」

 オレは適当な椅子にどさりと腰かけるとそれだけ言って一度ジークを指差した。

「……それくらいのことで良ければ勿論です」

 ほっとした様子のジークだったけど、多分オレが本気で殴ったらこんなモヤシ骨のひとつやふたつ折れるだろうけど、それを教えてやるほどオレは優しくはなかった。

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