74話 学園は私のことで騒然としているようですが
「なぁ聞いたか? あの公爵令嬢卒業式パーティーの後に忽然と姿を消したって」
「ああ聞いた聞いた、あの目立ってたリューデスハイム家のご息女だろう? 今度は一体何したんだろうなー」
「なんか失踪前に誰かといるところを見たやつがいるとかで、誘拐じゃないかって話になってるみたいだぞ」
「マジかよ、俺も気を付けないとな」
「爵位的にお前は大丈夫だろ」
「……」
ハイネが突然姿を消してから学園内はずっとその話でもちきりだった。
「セリム、あまり気にしない方がいいよ、ユーリとシグナもね」
「……別にあんなの気にしてねぇって」
気を使ったアベルがオレ含めてみんなに声をかけるけど、別にオレはそこまでこんな下らない噂話は気にしていない。
オレが気になるのはひとつだけ、ハイネが今どこにいて、無事なのか、それたけだ。
「皆、他人事だから好き勝手言えるんだろうな」
「……ハイネ、どこに行っちゃったんだろ」
ユーリはまぁもちろんとして今回の件に関してはシグナも隠すこともせずに心配の声を漏らしている。
それだけオレ達はずっと一緒だったし、いるのが当たり前になっていたってことだろう。
「少なくとも自分の意思ではないだろうね、さっきの人達の説を押すわけじゃないけどハイネは周りが心配するって分かっててこんな風に姿を消すような人じゃないから」
「……じゃあ何だ? 誘拐されたってか? ここは天下のアルミア魔法学園だぞ、そんな簡単に生徒拐わせるようなお粗末な警備なのか? まぁ一年の時にも二回も襲撃されてるからそういうことかもしれねぇけど」
アベルは別に変なことは言っていない、だけど今はどんな言葉を聞いても心にさざ波が立つ。
別に食いつきたいわけじゃないのに食いついてしまう。
別に、オレだけがハイネのことを心配しているわけじゃないって分かってるのに。
「セリム、そんなにイライラしたって何も進まないよ、今度は私が助ける番、だから絶対に助ける、ハイネには数えきれないほど助けられてきたんだから……」
「ですがこういうときに真っ先に動いて何で知ってるんだってことまで知ってて何でも解決してしまう台風の目が今はいません、私達ではまだ誘拐なのか意図があって消えたのか、それすら分かっていないんですよ」
ユーリはオレを止めようとして、本当に珍しくそんなユーリにシグナが物申す。
「……それはそうだけどでもっ!」
「あの、友人間でそう言い争いをしないでください」
それにたいしてこれまた珍しくユーリが憤ったように声を張った時だった、あの胡散臭くて何故かハイネの手下みたいになっているジーク・エルメルダがおずおずと会話に割って入ってくる。
「……ジーク先生」
第三者の登場で少しだけ落ち着いたユーリがジークの名前を呼ぶ。
「……今回の件について話がしたいのですがここではちょっと、ついてきてくれますか? 彼女ほどではありませんが私でも少しは役に立てるはずです」
そしてジークは意味深なことを言うとそのまま歩きだした。




