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ハイネ・リューデスハイムの休日

 ハイネ・リューデスハイムは意外にも休日も規則正しい生活を送っている。

 何故そんな生活を送っているのか、その理由は簡単で長きに渡る社畜時代の生活ルーティーンが染み付いて離れないのだ。

 7時台になればアラームをセットしていなくても目が覚めるし朝の準備にかかる時間も決まって二十分程度。

 その日に何か予定かなにかやることがあれば良いが何もやることがない日は早起きしても暇なだけで、本人はそれなりに困っている染み付いたルーティーンだった。

「……そろそろかしら」

 起きて準備を終えてからボケーっと時計を確認して、針がある程度の時間を刺すと窓を開く。

 そうすれば清んだ綺麗な歌声が耳に入り込んでくる。

 この時間になると休日ユーリは必ず歌を歌うから、それを聴く為にハイネは毎回こうして朝窓を開けるのだ。

「今日も変わらず綺麗な声で癒されるわ」

 歌がある程度区切りがつくとハイネはいつものように歌っていたユーリに声をかけた。

「あ、ハイネー、おはようー」

「おはようユーリ」

 そしてハイネに気づいたユーリは少し眠そうなぽやぽやした笑顔でハイネに微笑む。

 ハイネはユーリのそんな笑顔に朝から表情筋が緩みそうになるが何とか我慢する。

「さてと、それじゃあそろそろ準備しないと、昨日言ってたけど今日はこの後少し用事があるから先にご飯食べに行ってもらってもいい?」

「……ええ、分かったわ、それじゃあ昼食は一緒に取れるといいわね」

「うん、またね!」

 ユーリはそれだけ言うとそのまま窓を閉めた。

 確かに昨日からユーリは教師に呼ばれて用事があると言っていたがそれでも毎回何かあって一緒に朝食を取れない日は完全にいつもよりもハイネのテンションは下がる。

「……今日はセリムでも探してみましょ」

 窓を閉めたハイネは一人で朝食を食べるのも暇なものだと考えていつものごとく幼馴染みの名前をあげる。

 男子陣は別に用事があるとは言っていなかったから多分いつも通り一緒に朝食を取っているであろう、それならそこに混ぜてもらえばいいだけの話だ。


「今日なんかいつもより機嫌悪そうですね」

「……なんか、お昼も無理になっちゃったんだってユーリ」

 朝食後談話室で一人机に頬杖をついているハイネにどこからともなく現れたセリムが声をかける。

 さっき一度顔を合わした時にユーリは謝りながらハイネにそう伝えた。

「ああ、この世界で三人目の全知ですからそりゃ忙しいっすよねー」

「そうなんだけどー、それは分かってるんだけどー……」

 この世界で三人目の魔法適正全知を持つユーリ、それは当たり前に研究の対象で本人であるユーリが快諾したのもあり最近時間があるときはその研究に付き合っていることも多い。

 そしてその重要性は分かりながらもハイネはあまり良い気はしないわけで。

「……オレこの後暇なんですけど付き合ってくれませんか久しぶりに」

 セリムは言いながら談話室に常備してあるひとつのボードゲームに手をかける。

「あー、チェス? 全然良いけど……あなた強いのよねー」

 幼少の頃からたまにハイネはセリムとチェスをさすことがあるが今のところ勝てたことは一度もない。

「手加減して差し上げましょうか?」

「それは必要ないわね、今日こそ負かす」

「せいぜい頑張ってくださいねー」

「調子乗ってられるのも今のうちだけよ」


「……はぁ、相変わらず勝てないわー」

 良い顔して啖呵を切ったのはいいものの、数戦さしてやはりハイネは一度も勝てなかった。

「脳筋プレイじゃいつまで経っても勝てないですよー」

「バカにしてる……?」

「してないですって」

 別にハイネが下手なわけではない、ずぶの素人からずっとセリムと戦ううちにどちらかといえば上手い方にまで成長はしている、それでもやはりセリムには及ばない。

 そしてこの状況をセリムがバカにするわけもなかった。

「……まぁいいわ、この後図書館行くから付き合ってくれない?」

「本借りるんですか?」

「……チェスの本借りるのよ」

 そしてハイネの凄いところはどれだけ手痛く負けようと諦めることはしないところだ。

「めちゃくちゃ気にしてるじゃないっすか、ま、その間に夕食の時間になりそうですからちょうど良いんじゃないですか?」

「……いつもありがとね」

 そしてまた、気を揉んでいたハイネのことを気にしてセリムが声をかけてくれたことにもハイネはしっかりと気付いていた。

「さて何のことだか」

 勿論セリムがそれを認めることはないけれど。

 ユーリのいない日もハイネはこうして周りのお陰で項垂れることなく休日を過ごすことが出来ているのだ。

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