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ユーリ・ローレライの休日

 ユーリ・ローレライは休みの日の朝、起きると必ず歌を歌う。

 誰かに聴かせるためでは別にない。

 昔から歌を歌うことが好きだった、あの日のハイネやアベルとの出会いもそこから始まった。

 だからこそ、ユーリにとっても歌は好きというだけでは収まらない大切な存在になっている。

「今日も綺麗な声ね」

 窓辺で暫く歌っていると歌の区切りでいつものように声をかけられた。

「ハイネ! おはようー、今日も聴いてたんだ」

「おはようユーリ、それは勿論、こんな特等席で聴けるならいつだって聴きたいもの」

 ハイネの部屋はユーリのちょうど隣に位置している、だから窓を開けて歌っていれば自ずとその声はハイネにも届くから、このやり取りは最早毎週の恒例となりつつある。

「今日はみんなで町に行く予定だけど、ハイネ準備終わってるのー?」

「あー、いけない、歌に聴きいっちゃってて手が止まってたわ……それじゃあまた後で食堂でねー」

「うん!」

 ハイネが少し慌てて部屋に戻っていくのを確認するとユーリも歌うのを止めて窓を閉める。

 今日はユーリかっての希望でみんなで町に出る約束をしている。

 町と言えばユーリは一番最初にドッキリポンポを思い浮かべる。

 ポンポ特性の爆弾チョコレートは食べると口の中でランダムな時間経過で爆発する珍品で、好んで食べる人は早々いない。

 基本的に罰ゲームとかそういう扱い、でもユーリの好物でもある。

 今のところ理解を得られたことはハイネ含め一度もない。

「……今日はこれ着ていこうかなー」

 ユーリはすでに手荷物の準備は終えているが着る服はその日の気分で決める。

 その日の服はカジュアルなワンピース、色はハイネの瞳と同じ色をしているが、多分偶々だろう。


「それじゃあユーリ、また夕食の時にね」

「うん、またねー」

 みんなで町に遊びに出て、帰ってくる頃にはすでに夕方だった。

 この日はせっかくだしみんなで夕食を取ることにして時間だけ決めるとそれぞれの寮へ戻っていった。

 女子寮までは道も一緒だったハイネとも部屋の前で別れる。

 すぐとなりにある部屋だがハイネはいつもユーリを部屋の前まで送り届ける。

 それにたいしてユーリも別に何か文句をつけたことはなかった。

「んー、今日は楽しかったけど、チョコレート売り切れてたのは残念だったかな……でもまた今度お出掛けする口実が出来たし、いっかー」

 どさっと鞄を下ろしてユーリは大きく伸びをする。

 珍しく爆弾チョコレートは売り切れていたがユーリからすればそれは好都合だった。

 ユーリは自分から何かに相手を誘うことがあまり得意ではない。

 ダンスパーティーの時もそう、相手から誘われて、それを快諾した。

 結果としてはハイネとも踊ることになったわけだが。

 だからこうしてまた町にみんなで行くという口実が出来るのはユーリにとっては嬉しい誤算。

「……ちょっと早いけどもう行っておこうかな」

 ユーリは身だしなみを軽く整えるとすぐに部屋の扉に手を掛けた。

 まだ約束の時間にはそれなりに早いがハイネがすでに来ているであろうことをユーリは察していた。

 そしてその感は正解で、ハイネはすでに準備を終えて談話室で待っている。

 長年一緒にいるとそういうところを察せるようになってくるがその事実をハイネは知らない。

 早めに合流した時のハイネの一瞬浮かべる嬉しそうな笑顔を見るのがユーリが好きなこともまた、本人は知らないのだけれど。

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