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ジーク・エルメルダの休日

 ジーク・エルメルダは朝起きるとまず自身の身体がしっかりと動くかを確認する。

「今日も、自分はしっかり生きてる……」

 魔力欠乏症が治ってからしっかりと睡眠を取ることが出来るようになり、息苦しさも日々の頭痛や吐き気も全てが消え去った。

 それでも長年連れ添ってきた病の恐怖は未だジークの心の奥底に眠っている。

 朝になったら身体が思うように動かなくなっているかもしれない、息ができなくなっているかもしれない、そんな悩みは未だ消えない。

「ジーク先生ー、今日も届いてましたよ」

「ああ、ありがとうございます」

 アルミア魔法学園では教職員宛に届いた郵送物の類いは全て朝、その日の担当の手により配られる。

 ジークの元にはほぼ毎週、同じ人物から手紙が届く。

「……メアリーも元気そうで何よりだなぁ」

 いつもと変わらない日常の報告、ジークの身を案ずる言葉達、それはジークの心を癒してくれる。

 そして、生きなければいけない、死ぬわけにはいかない、そう思わせた原因の大きなひとつでもあった。

 そう、手紙の相手はメアリー・ブラウン。

 リューデスハイム家に仕える幼馴染みだった。

 今はハイネ・リューデスハイムの専属メイドをしていると聞くがハイネの本性を知った今、少しの不安と安心の狭間で揺れている。

 多分ジーク本人のように変なことをしなければ牙は剥かれないだろうが、ジーク自身はハイネの大きな地雷を踏み抜いた経験があるからこそ、ハイネと幼馴染みの接点を勝手に心配している。

 ハイネはよくも悪くも自身の身内には甘いが他の人間には容赦ない。

 そしてジーク同様に転生者であるせいで行動が読めないからだ。

「……今日は確かオムレツだったかな」

 メアリーの手紙を読み終えるとジークは早々に朝食を取りに行く準備を進める。

 ハイネとユーリの助力を得て自身の病気を治してからジークの人生は一転し、ずっとジークに転生したことを悔やんでいた彼はもういない。

 しっかりと眠り1日三食ご飯を食べて、幼馴染みからの手紙を読んで返信を綴る。

 教師として生徒達と交流し、自身の病気を治すために始めた研究は今ではひとつの趣味のようなものだった。

「……明日の授業の準備が終わったら町に出て、メアリーに贈り物でも買いますか……ついでにあの人にも」

 名門学校の教師、給料も決して少なくはない。

 だがジークの給料の使い道はそこまで多くない、自身の研究材料か、誰かへの贈り物か、たまに美味しいものを食べるくらい。

 でも今はそれで充分なくらいにジークの生活は充実していた。

 結構な頻度で自分のしでかした行為で傷付いた生徒達の顔がフラッシュバックすることは勿論あるしその度に大きな罪悪感に苛まれる。

 それでも全て、結果としては自分が選んだ道である。

 だからジークはそれから目を反らさずに、今日も自分の業を背負って、自分なりに生きていく。

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