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アニ・ユースクロイツの休日

 アニ・ユースクロイツが休日自分の部屋から出ることはほとんどない。

「……だる」

 朝の光で自然に目を覚ましたアニは寝返りをうちながらごしごしと腕で目元を擦る。

 起きる時間もまちまち、ベットから起き上がらないことだってよくある。

「…………今日は起きないと」

 だがこの日は珍しくアニは重い身体を起こした。

 卒業を間近にしてやらないといけないことが残っていたからだ。

 

「よし、これでいいか」

 アニは引き出しからレターセットとペンを取り出すとそれを机に並べて椅子に座る。

「……」

 それから何度かペンを手に持ち、机に戻す、それを繰り返した。

「……やっぱこういうの向いてないんだよな、ボク」

 最近は休日が来る度にアニはこうしてずっと頭を悩ませていた。

 これは自身のファンクラブの子達にあてた手紙。

 ハイネの言葉を受けてアニはみんなの中にちゃんと自分が残るようにと、それから少しのお礼の気持ちを込めてこうして手紙をしたため始めた。

 それぞれの子が好きそうな便箋を選んだ。

 その子達が喜びそうな文面を書き連ねた。

 そしてそれを考えた末に破り捨てると今度は自分の選んだ便箋に書きたいように言葉を書き殴っていった。

 本当の自分、をその場に残すために。

 ずっと好きでいてくれた人達に誠意を示すために。

「……これは、まぁ、ついで程度にね」

 何日も何日もかけて完成させたたくさんのファンクラブの子達に向けた手紙の山、その横でアニは誰に言うでもなくいいわけをしながらもうひとつのシワの寄った紙面にペンを向けた。

 これはハイネに向けた手紙、休みの度に少しずつ書き足されていくそれは嫌みと小馬鹿にした台詞が沢山内蔵されたはっきり言って嫌みの詰め合わせの手紙だった。

 他のファンクラブの子相手の手紙には少しずつでも今までのお礼が込められていたがこれには全くそれがない。

 いや、書いて消した跡は見て取れるほどにあるが、ハイネにだけは本音、お礼の気持ちを書くことが何故かアニには出来なかった。

「……いやいや、別にあのオバサンにお礼が言いたくて書いてるわけじゃないし? 何よりお礼を言うようなことされてないし、いつも巻き込まれてたばかりで……」

 アニは普段から独り言の多いほうではあるが今日はいつも以上に饒舌だった。

 アニは自身の内心に近付けば近付くほどにそれを本音にすることが出来なくなる。

 だから色々な言い訳をしてみるも、この手紙が最後のやり取りになるかもしれないという自分の爵位ある立場を考えれば言い訳に逃げることは出来なかった。

「……まぁ、これ見てたまには思い出して欲しいなとは、思わなくもないかもね」

 散々な嫌みを書ききった後にアニは最後に一文、お礼の言葉を付け足してから三つ折りにして封筒に入れ、蝋印を押した。

 これでもう書き直しは出来ない。

「よし、後はもう寝るかー」

 書き終わったすべての封筒を引き出しに仕舞うと代わりに栄養食を取り出して口のなかに放り込む。

 そして適当に咀嚼して飲み込むと外がまだ明るいなかベットに大きく転がった。

 アニは休みの日は食事も適当で学食に行くこともほとんどしない。

 大きく欠伸をしたアニはそのまま大きなその瞳を閉じる。

 こうなってしまえば早くても次にアニが目を開くのは、翌日の登校日になるだろう。

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