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68話 また遊ぶ約束をして今日はおしまいです

「はぁー、遊んだ遊んだ、毎日こうだったらいいんすけどねー」

 学校への帰り道、馬車を使うことはせずに歩いて帰路についた中セリムは大きく伸びをしながらめんどくさそうにぼやく。

「あなた勉強できるのに勉強嫌いですものね」

 セリムは基本的に何でもそつなくこなせるのにやる気がついてこないのは勿体ないところだと思う。

「勉強好きなやつのほうが珍しいだろう」

「私は嫌いじゃないよ」

「アベルは頭良いもんねー」

「……ねぇみんな」

 いつもみたいな中身のない雑談をしていればふと、アニがおずおずとした声色で口を開いた。

「どうしたのアニ」

「…………えっと、そうだね、うん」

 ユーリに聞き返されて、アニはそのふわふわとした金髪を指先で弄りながら一言二言呟くと意を決したように私達のほうへ視線を向ける。

「今日はボクのためにありがとう、また、卒業しても機会があれば……誘ってくれると嬉しいな」

 アニがこんな風に自分の気持ちをしっかりと口にして周りに伝えようとするのは珍しい。

 ゲーム内ではほとんどなかったように思うけど、きっとこの世界では少し考え方が変わったのだろう。

 他の人達と同じように。

「当たり前だろ、別に機会なくても適当に誘うわー」

 そして最初にセリム

「ねぇ今度はジーク先生も誘おうよ、休みの期間とかに」

「それならララ様も声をかけたいね、海の時みたいに、あの人は忙しい人だから難しいかもしれないけど」

 次にはユーリとアベルも楽しそうに次の約束を進めていく。

「……」

 かくいう私はそんなみんなの会話を聞いていて黙り込んでしまう。

 ここでジークとかララの名前が出てくる辺りゲーム側のどうやったって攻略キャラとユーリを絡ませてやろうという意志が見え隠れする。

 せっかくこっちが何とかユーリが攻略キャラ達と必要以上に関係を深めないように行動しているのに本当に嫌になる。

 まぁ海が楽しかったのは事実だけど。

「どうかしたんすかハイネ様」

「……あー、いえ何でもないわ、っ……!」

 今日も何だかんだでアニに助言してしまったし最近元々は悪役令嬢の身体であることにたいする自覚が薄くなってきてしまっている気がする。

 別に悪いことではないと思うけど微妙な気持ちにはなる、周りとどれだけ仲良くなろうとユーリを諦める気は絶対にないのに、仲良くなって蹴落とすのを少し躊躇ってしまうようになれば本末転倒だ。

 私が勝手に内心複雑になっているとどこから突然か現れた青年と肩がぶつかった。

「ハイネ様! 大丈夫ですか? おいお前危ないだろ」

 ぶつかった勢いで尻餅をついてしまった私にすぐにセリムが手を貸してくれて立ち上がる。

「あ、ごめん、少し急いでたんだ」

「急いでたかなんだか知らねぇけどちゃんと前見て歩けよ、これで怪我したらどうすんだよ」

 立ち止まって謝る青年にセリムは眉間にシワを寄せて詰め寄る。 

「セリム、大丈夫だから、こっちこそ気を付けてなくてごめんなさい」

 私はすぐにセリムの肩を掴んで止めると青年のほうを向いて私も謝る。

 今のは私も考え事をしていたから悪いし、まぁ突き飛ばされるくらいの勢いでぶつかられたから痛いは痛いんだけど。

「いや、君は悪くないよ、でもごめん今は急いでるんだ、それじゃあまた」

「……また?」

 青年はその青い瞳を少しだけ弧をえがかせるとそれだけ言ってすぐに走り去ってしまった。

 また、というのはなんのことだろうか。

 ゲーム内のメインキャラかサブキャラかと考えもしたけど私は彼を見た覚えがない。

 でもあの黒く淀んだ青い瞳には見覚えがある気もするけど。

「ハイネ! 大丈夫だった?」

「ええ全然」

 私は少しだけ逡巡していたけどユーリが駆け寄ってきて声をかけてくれてその嬉しさで一瞬で考えが飛ぶ。

「あいつマジでなんなんだよ……」

「別にわざとでもないし怪我もしてないんだから大丈夫だって」

 もう気にしていない私とは真逆にまだぶち切れているセリムを言葉でなんとか窘める。

 あの怪我を負ってからセリムの過保護が悪化しているような気がする。 

「あれ、本当に急いでいただけなのかな」

「というか今どこから出てきたんだ」

「……本当にわざとじゃないといいけどね」

 そしてユーリもシグナも、アベルまで不穏なことを言い出す始末だけど、ゲームの中に出てきていないという事実だけで私はこの時それ以上気にすることはなかった。

 そのせいで後々面倒なことになるなんて思いもせずに。

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