66話 思っていたよりはしゃいでいるようです
私達があの後アニを誘うとやっぱりというか当たり前というかもちろん返事はオーケーだった。
そして来るアニ城下町散策イベント当日、休みの日を選んで朝から出掛けていた私達は意外な状況に置かれていた。
「ねぇボクつぎはあのお店行ってみたいんだけど」
「ドッキリポンポのマジックアイテム屋さんかぁ、久しぶりにポンポ特製爆弾チョコレート食べたいなー」
「え、それボクも食べてみたい!」
「やめといたほうが無難だけどな、口死ぬし」
ガヤガヤと賑わう町中でそれに負けず劣らずずっと話をしているシグナと私を除く四人。
そう、思ってた以上にアニが楽しそうに率先してどこへ行きたいと発言するのだ。
ゲーム内ではここまで露骨に楽しそうにはしていなかった。
後爆弾チョコレートは冗談抜きに食べないほうがいい、ユーリは何故か気に入っているみたいだけど私はあれはお菓子ではなく凶器だと判断している。
「あそこに行った後はこのハンバーガーっていうのを食べに行こうよ!」
「そこのハンバーガーはこの間食べたとき美味しかったと記憶している」
「は? 誰と言ったのか言ってみなさいよ」
珍しく会話に参加したシグナの聞き捨てならない台詞に私の声が低くなる。
「……セリムと行ったんだ、別にお嬢様じゃない」
「ならいいけど」
それだけで多分私の感情を察知したようで早々に否定の言葉が呟かれる。
セリムが誰かと出掛けるのはそれなりに珍しい気もするけどユーリと二人きりとかじゃないならまぁ問題はない。
「……ねぇ、君たちっていつもこんな感じなの?」
「まぁ、普段からこういう感じだとは思うよ」
アニの口からふと放たれた質問にアベルは笑顔で答えて頷く。
「そうだなー、ユーリがはしゃいでそれ見てアベルが楽しそうにしててー、シグナがハイネ様にボコられる、お馴染みの展開だな、何か気になるか?」
「いや、うん、そうだね……」
ボコってるって表現はよくないけどまぁ、セリムの言っていることは九割がた合ってるからそこはスルーすることにする。
逆にアニは考えた様子を見せた後にもう一度口を開く。
「君たちはみんな立場が違うよね、国の王子にローズクォーツの姫、騎士が二人に公爵令嬢、そして今日はそこに伯爵家の冴えない三男、何も気にならないの?」
多分、アニの疑問は当たり前だと思う。
この階級世界でこれだけ色々な関係性の人物達が数年単位でこうして友好関係を築いているなんて厳格なユースクロイツ家で育ったアニからしたら考えられないことなんだろう。
「……まぁ、昔は色々あったけど今は別にって感じか?」
「そうだね、昔は私も緊張したけど今はみんな大切な友人達だよ」
「いや、私はお嬢様の騎士であって……」
「シグナ、あんたは少し黙ってなさいよ」
せっかくセリムとユーリが綺麗に纏めようとしたのに余計な口を出すセリムに私はまた雷を落とした。
「これはごめんだけどハイネに同感かな」
「っ……」
そして普段はだいたい笑っているだけのアベルによる華麗な追撃が加わりシグナは驚いた様子で黙り込む。
こいつ普段からそうなんだけど結構空気が読めないときが多い、それはゲーム内の性格設定とそこまで大差はないから、私のせいでこうなったわけではないと断言できる。
「ふ、ははっ……」
「どうしたー、急に笑って変なもんでも食ったか?」
私達のやり取りを黙って見ていたアニが突然吹き出して、そこにセリムが突っ込みを入れる。
相変わらずセリムは人の懐に入り込んでいくのが上手い。
「……いや、君たちを見てると少しだけ、自分がバカらしくなってくるね、早くあのお店に行こうよ!」
「あなたが最初に話し始めたんじゃないの……」
アニは笑ってそれだけ言うと私の指摘も無視してさっさとマジックアイテム屋に向かって駆け出すから、私達も慌てて後を追った。
アニがここまで私達の関係に踏み込んだわけは多分、この後のイベントで全てが判明するはずだ。




