65話 一応お世話になった先輩にお礼をしましょうか
その日私達は談話室に集まるととある会議を繰り広げていた。
「やっぱり花束とか、無難かな」
「花束なんてあいつファンクラブの奴らから嫌というほどもらうんじゃねーの」
アベルの上げた案はセリムの言うとおりだと思うので取り敢えずは無しの方向。
「じゃあお菓子とか?」
「それはダメ、あの人甘いもの苦手よ」
ユーリの上げた案、これも残念ながら却下。
甘くないお菓子ならってのも考えたけどそもそもアニはそこまで食に頓着しているキャラでもないし。
「よく知ってるなそんなこと」
「知ってるだけで別に他意はないから」
横から突っ込んでくるシグナに私は釘を刺しておく。
「別に何も言ってないだろう」
思いのほか鋭い刃にシグナがたじろぐけどこの場にはユーリがいる。
もし、万が一にもアニとのことを勘違いされたら本当に困る。
「うーん、どうしたら喜んでもらえるかなぁ」
「早め早めに行動しないと間に合わなくなるかもしれないね」
「どうすっかなー」
「……別に、物にこだわる必要ないんじゃないかしら」
途方に暮れだすみんなを見ていて、ついに私は重い口を開いた。
「お、ハイネ様なんか良い案思い付いた感じですか?」
「まぁ、そういうことにしておくわ……」
「なんでそんなに歯切れ悪いんですか……」
良い案かもしれないけど私からしたら全然良い案じゃない、だけどとりあえずはそういうことにしておいたほうが当たり障りがないだろう。
「あの人、名家の三男だから多分あんまり城下町とか行ったことないと思うのよ」
これは勿論公式の設定を引用している。
アニのお家であるユースクロイツ家を取り仕切るアニの父親は自他どちらにも厳しい厳格な性格をしている。
だからアニは幼少の頃からほとんど遊びというものをしたことがない。
そんな中全寮制の学校に入ったことでたがが外れた結果が今のあれなわけだけど。
アニの小悪魔通り越して悪魔な行動は少なからず家のせいもあるだろう。
「あー、確かに聞いたことあるね、ユースクロイツ伯爵家は色々厳しいって」
私の言葉にうなずくアベルはさすがに王族だけあってその辺りの関係性には詳しいようだった。
「ハイネ様が名家とか言うと嫌味に聞こえますけどねー」
「まぁ何でもいいけど、一緒に町に遊びに行って、そこでお礼を伝えるのも良いんじゃないのってだけの話よ」
確かに伯爵より公爵のほうが爵位は上かもしれないけど前世で染み付いた平民根性はもうどうにもならないし、今はそれどころではない。
「それ、すごく良いかも!」
「確かに悪くない案だと思うが、なんでお前はそんなに不機嫌なんだ……」
だけどやっぱりというかなんというか、私のテンションの低さと真逆に場は盛り上がっていく始末。
そんな中シグナが怪訝そうにそんなことを言ってくるから
「……別に不機嫌じゃないわよ」
返した言葉はあからさまに不機嫌の色を隠しきれていなかった。
まぁ元々隠す気もなかったんだけど。
そう、このアニと城下町散策イベントは、アニルートに入る上で必須のイベント。
つまりはそれだけアニルートに近付いてしまうということになる。
私は勿論それを避けたかったわけだけど、さすがゲームのいたずら、無事に通ることになってしまった。
私が、提案したことで。




