63話 幼馴染みから貰ったペンダントはどこか彼の瞳に似ている気がします
ハイネと多分初めて本音をしっかり語らってからは不穏な日々は一転、穏やかな日常が戻ってきていた。
「それにしても毎年毎年みんな律儀よねー」
ハイネはみんなから貰ったお返しを手に廊下を歩きながら口を開く。
「まぁ、貰ったら返しますよそりゃ」
今日はセントモニカデー、セントハルトデーのお返しをする日だ。
アベルもシグナも、それからついでにアニもハイネからチョコを貰っていたようで会うたびにポコポコと荷物は増えていった。
今年はハイネが手作りだからなのか何なのか知らないけどお返しも手の込んだものが多いような気がする。
あんまり良い気はしないけどこればっかりは仕方ない。
「セリムからは何も返ってきてないけどー?」
「……いや、ほら色々あったじゃないですか……だから、そのー」
「冗談に決まってるじゃない、別に無理してお返し準備する必要なんて――って何?」
「嘘ですよ、それ、お返しです、開けてみてくださいよ」
いつもみたいに二人で適当におちゃらけているなか、オレはハイネの荷物を受け取って代わりに一つの小箱を手に掴ませた。
「これは……」
ハイネによってぱかりと開かれた箱のなかでは一つの赤い宝石が光っている。
「……サントライトで出来たペンダントです」
「サントライトってあの?」
サントライトはプレゼントするとされた人間がピンチになった時に知らせてくれる。
この世界に生きる人なら誰でも知っている有名な伝承だ。
まぁそんなもの信じている奴のほうが少ないとは思うけど。
「ええまぁ、そうなりますね、出来たらで良いんですけど身に付けなくてもいいのでしっかり持ち歩いて貰えると助かります、まぁ……嫌なら返してもらっても……」
「どう、似合う?」
はっきり言って別に好意があるわけでもない男からセントモニカデーにアクセサリー貰うとかキモいかもしれない。
そう散々こっちは迷ったってのに等の本人は迷うことなくそのペンダントを首にかけてそんなこと聞いてくるから考えてたこっちのほうがバカみたいだ。
「まぁ、似合ってるんじゃないっすか?」
オレが選んだオレの瞳と同じ色の宝石をハイネが首から下げている、その事実にどぎまぎしていることがバレないようにオレはいつもより適当に返事をする。
「なんか、適当言ってない?」
「適当は言ってないですよ……」
ハイネに怪しまれたけどまぁ、色々と雑念があるのは事実だが似合っていると思ったのは本音だ。
「何かあったらちゃんと願うから、しっかり助けに来て頂戴ねー」
「ま、そんなことがあったらちゃんと助けに行きますから」
そんなことを言うハイネも別にサントライトの伝承を信じているわけではないんだろうけど、ハイネに何かあればこの石がなくたって探しだして守る、それは何も変わらない。
「期待してるわよ」
「……そんなことより、今年もユーリにお返しするんじゃないんですか?」
ハイネが珍しく毒気のない笑顔なんてこっちに向けるものだからオレは慌てて話をそらす。
自分がどんな顔してるか分からないから今はあまりこっちを見ては欲しくないかもしれない。
「まぁ当たり前にそのつもりだけど」
そしてハイネの返事は即答でイエス。
ハイネとユーリは毎年どちらもセントハルトデーにもセントモニカデーにもお互いにプレゼントを送りあっている。
まぁどっちも女の子なのにハルトデーにチョコあげてるんだから当たり前と言えば当たり前なんだけど。
「じゃ、オレは一足先に退散させてもらいますわ、これは寮監に預けておきますね」
オレはさっき受け取ったお返しを持ったまますぐそこの曲がり道で向きを返る。
「別に一緒に来たらいいのにー」
「オレもそこまで野暮じゃないんで、それじゃまた」
後ろからハイネはそんな風に言ってきたけど、あそこまでしてもらっておいて茶々を入れるほどにはさすがのオレも野暮ではなかった。




