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61話 たまには幼馴染みと本音で語り合いましょう

 オレが色々と考えながら自室に戻るとそこにはいる筈のない人が勝手に居座っていた。

「……ハイネ様ー、男子寮は女子禁制ですよー」

「ええそれは知ってるわ」

「知ってるほうが問題なんですけど」

 知らないわけはないんだけど、知らないで入りましたのほうがまだマシなレベル、しかも勝手に椅子にまで座っているその人は相変わらず横暴で、オレには出来ないことを簡単にやってみせるから嫌いになれないんだけど。

「あなたが捕まらないのがいけないんじゃない」

「……どうやってここに?」

 確かにオレがずっと逃げていたのは悪いけどここはアルミア魔法学園、貴族のご子息達を預かっている名門学校で、もちろん警備は他の学校とは比べ物にならないくらいには厳重なのに一体どうやってしれっと入ってきたのかは普通に気になる。

「アベルに入れてもらった」

「……あいつもまぁよくやりますね、王子と公爵令嬢でもこんなのバレたらめちゃくちゃ怒られますよ」

 何も悪ぶれもせずに言いきるハイネに頭が痛くなる。

 アベルもアベルだ、王子と公爵令嬢、この先この国を統治していく奴らがこれじゃあ将来が不安にすらなってくるレベル。

「それは承知の上で来てるのよ、それよりもこれ、どういうこと?」

 だけどハイネはそれすら気に留める様子はなく眉間に深くシワを刻んでオレの部屋を指差した。

「何がですか?」

 何のことを言われているのかなんて分かってる、それでもオレはわざととぼける。

「荷物がほとんど整理されてるじゃない、しかも段ボールとかに、あなたやっぱり、行く気なの、戦場に……」

「……まぁ、そうですね、その予定です」

 さっきまでのオレだったら多分、いや絶対に適当言ってはぐらかしていた、でも今のオレはさっきまでのオレじゃない、だから、聞かれた質問にしっかりと答えた。

 遺恨を残したまま戦場にはもう行けない。

「それは、何でなの? 私には言えないことなの?」

「……言えないというよりは言いたくなかった、が正しいですかね」

 言い淀みながらも踏み込んでくるハイネにオレもちゃんと答える。

 少し前までのハイネだったら多分踏み込んで来なかったのにここまで言うってことはハイネにもどこかの誰か、お節介な奴が口出したんだろうな。

「言いたくない……」

「でも今は、言ってもいいと思ってます」

 ポツリとオレの言葉を復唱するハイネにオレも適当な椅子に座ると言い直す。

 多分少し長くなるだろうし立ちっぱって状況でもない。

「そう、なの……?」

 さっきまで、隠すように少し不安に揺れていた瞳が一瞬だけ輝く。

 オレが急にこの選択をすることはそれだけ意外だったんだろう。

「はい、ただ、多分聞いていてハイネ様が気持ちの良いものではないのでそれでも良ければになりますが」

 いきなり話しだしても別にオレは構わない、でもそれをオレは、ハイネに選んでほしかった。

「……聞きたい、ちゃんと聞かせて、あなたの気持ちを」

 そして、ハイネはしっかりとオレを見据えて聞くという選択を選んだ。

「……オレはあの日からずっと自分の力不足を痛感していました」

 それならもうオレは、自分の気持ちを語るだけだ。

「あの日……」

 あの日、ハイネも同じ日のことを思い出しているだろう。

 だけどオレの中であの日はもうひとつある。

 ハイネが背中に傷を負った日、そしてその傷跡をユーリが少しも残さずに消し去った日。

 あの時からオレは、自分がハイネの横にいるに相応しくないと思っている。

 ユーリに勝てないと、確信した日をオレは忘れたことはない。

「次は守る、そう言って、もっと強くならないとって焦りは日に日に増えていきました、でも最近は一向に技量の向上を感じられなかった」

 それからの鍛練量ははっきり言って常軌を逸脱していると思う。

 身体も魔法もどちらも鍛えた、それでも一定を越えた辺りでどちらの技量も向上が止まった。

「そんな折に戦場行きの話です、戦場に出れば確実にオレは今よりも強くなれる、今のハイネ様には周りに沢山の頼れる仲間がいます、今年は色々ありましたけどそれは多分偶然で、だから普通の二年くらいならオレがいなくても楽しく学園生活を送れるって判断を下したんです、だから戦場に行くのも悪くないかなって」

 戦場とは違うけどストリートで生きてた頃はそれは死にものぐるいの生活だったことだってあった。

 一つ間違えればすぐとなりに死がある。

 だから、またそういう場所に放り込まれればもっと強くなれるかもしれないって思った。

「……あなたはそれを、私に少しも相談しようとは思ってくれなかったの?」

「そう、ですね、ずっと独りで勝手に考えてました、オレがいなくなることが別にそこまで重要だと思ってなかったから」

 あからさまに悲しそうな声で訴えかけられて、オレの中に罪悪感が積もる。

 ユーリに言われるまでユーリ以外の誰かだったとしてもこんなことになればハイネが心を痛めるってことを思い出せなかった辺り、多分オレも焦ってたんだと思うけど、今考えればバカみたいな考えだ。

「でも今は違います、誰かさんのお節介のお陰でちゃんと向き合おうと思えた、だからオレはこうして話しました、次は……ハイネ様の番ですよ」

 オレの言葉を聞いて黙り込んでしまったハイネにオレはさらに続ける。

 今はもう、オレが勝手にいなくなっても誰もなにも思わないなんて思っていない、だから、オレが話した今、次に自分の気持ちを語るのはハイネの番だ。 

「私は……」

 一瞬、視線を惑わせた後にハイネはしっかりとオレの瞳を見据えて、語りだした。

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