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58話 いつもと同じいつもと違う日常

 セリムの一件から既に数日が経とうとしており、生徒たちのアルミア祭の余韻も薄れてきていた頃。

「はぁー、授業疲れたわね、数学は得意じゃないのよ」

 午前最後の授業である数学を終えると私は凝り固まった身体を解すために軽く伸びをする。

「でも当てられた時ちゃんと答えてたよー」

「本当に出来ないやつへの当て付けだな」

「別にそんなんじゃないんだけど……まぁいいわ、早く食堂行きましょ、セリムは今日も来ないの?」

 同じく数学が得意じゃない勢のユーリからはじっとりとした視線を、得意な座学を探すほうが難しいシグナは隠すこともせずに憎らしげな瞳を向けられながら私は軽くぼやくと立ち上がる。

 前世と今世の世界では数学の形式が違うこともあって苦労しているのは本当のことなんだけど。

「やることあるんで、すいません」

「別に謝る必要ないわよ、それじゃあ残りの人達で行きましょうか」

 そしてセリムは今日も一緒に食堂には来ないらしい。

 あの日から一回も一緒にご飯に行っていないけどそれを詰める権利も勇気も私にはない。

「最近セリム忙しそうだよね……」

 内情を知らないユーリは心配してくれているようでガタガタと机を揺らしながら教材を片付けているセリムに視線を向けて呟くけど

「まぁ、拗ねてる子供は放っておいたらいいんじゃないかな」

 理由を知っているアベルの言葉は刺々しい。

「アベル」

 私は名前を呼んで窘めようと試みるけど

「事実だよ、私は自分の気持ちを疎かにする奴はあまり好きじゃないんだ」

 アベルはより強い言葉を選んだだけだった。

 普段だったらアベルは絶対にこんな言葉は選ばないし当て付けみたいなことはしない。

 多分、私と話した後にセリムと何かあったんだとは思うけど何があったのかは聞けないし、教えてくれないと思う。

「……」

「……とりあえず行きましょ」

 無言でアベルを睨むセリムに気付かないふりをしてみんなを促す。

 ここで喧嘩騒動になったらそれこそ目も当てられない。

「あーごめん、おばさんいるー?」

「アニ?」

 そんな少しだけ険悪になった空気をぶち破るように教室に現れたのはアニだった。

 そんなアニは両手には沢山の紙面を抱えている。

 おばさん呼びは今さらだから無視するけど。

「悪いんだけど先生からご指名、一緒に午後の授業の準備行くよ」

 言いながらアニはくいっと顎をしゃくってみせる。

「……分かったわ、ごめんお昼は三人で行って?」

 私は内心アニの行動に呆れながら、それでもこの耐えられない空気のなかにいるよりも良いと判断して謝りながら早々にアニの後を追った。

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