53話 楽しい時間が終わると次に来るのは不穏なフラグです
私はクラスの喧騒を耳に使った食器なんかのキッチン回りの片付けを進めていく。
「ハイネ様ー、そっちの片付け終わりましたか?」
「あ、セリム、何とかもう少しで終わるわ」
ひょこっと顔を覗かせたセリムに私は一旦手を止めて返事をする。
「それ終わったら次もありますからさくさくやってくださいね」
「……あなたまだ根に持ってるの?」
今クラス内では打ち上げが開催されており殆どの生徒達は楽しそうに騒いでいるけど私含め数人はまだ片付けを続けていた。
ちなみに私とユーリは休み時間延長の罰として駆り出されている次第だ。
セリムも口調からするに多分まだ怒ってる。
「そりゃあんなに忙しいなかせっかく同じ時間に休み時間設けてもらって約束の時間に帰ってこなかったらまぁ」
「……申し訳なかったとは思ってるわ」
セリムが肩をすくめて呆れたようにそんなことを言ってくるけど今回は完全にこちらの落ち度なので反論することも出来ない。
「ま、冗談ですけど、みんなてんやわんやなだけですよ、思ったよりも盛況でしたから」
セリムは軽く笑ってから教室のほうへ集まっているクラスメイト達に視線を向ける。
「そうねー、たくさん人が来てくれたものね、この集合写真は貴重よねー、時期国王と騎士二人の女装姿、暫くシグナからかえそう」
大反響のうちに終わったメイド喫茶、そして残ったのは完璧な集合写真だった。
まぁ、私がユーリと一緒に写真を撮ってもらおうとしたら三人もおまけでついてきただけなんだけど。
「……またしょげるんで止めてやってくださいね、っていうかオレ達よりユーリが写ってるから貴重なだけじゃないですか……」
「まぁ、それもあるけど」
セリムは私の行動を窘めながらため息を吐き出す。
確かに推しのメイド服姿の写真は貴重、宝物だ。
だけど別にユーリが写ってるからというだけで貴重なわけじゃない。
確かに最初はツーショットを狙っていたけど終わった今見返したらこれはこれで悪くない。
「ハイネちゃん、頑張るのは偉いけどあんまり無理したらいけないよ」
「っ……お父様!? お姉さままで……どうしたんですか一体」
ふと、いきなり後ろから聞きなれた声が聞こえて慌てて振り返るとそこにはアダムが笑顔で立っていた。
ララももちろんのように引き連れて。
「今日はハイネの晴れ姿を見ようと思って来たんだがちょうどいなくて残念だったよ」
「あー、休憩時間の時に旦那様とララ様も来てくれてたんですよね」
「……それ先に言っといてくれないかしら」
「忙しすぎて忘れてました」
セリムの遅すぎるフォローに怒る気も失せる。
元々このゲームは当たり前だけどユーリをメインに進むから自分の父と姉が来ているのかまでは流石に把握していない。
どちらも忙しい身の上なのに来てくれて、来たら来たで丁度私がいないなんて申し訳なさすぎる。
「もう着替えちゃったのかぁ残念だな、せっかくカメラ新調したのに……もう一回着てくれたりしないかな……?」
「お父様……今忙しいので着替えて写真は少し……」
アダムはちらちらと既に脱いで畳んだメイド服に視線を向けながら首からかけた真新しいカメラを撫でるけど、こちらはまだ片付けの途中で、そんなことをしている暇はない。
何より身内のためだけにこの人数のいるなかもう一度この衣装を着るのは少しだけ恥ずかしいし。
「そうか、残念だ……」
「お父様、今日はアルミア祭の件もありますがもうひとつ話があるでしょう」
あからさまに落ち込むアダムにララは一度咳払いをすると話の続きを促す。
ララの口調からするに、多分これはいい話ではないのだろうということは流石の私でも理解した。
「ああ、そうだったね、忙しいところ悪いが、少しだけセリムを借りてもいいかな?」
「セリムを、ですか……?」
多分私に関する何かだと思っていたのに出た別の名前に驚いて、私は訝しげに聞き返す。
「少しだけ話したいことがあってね」
「セリム……」
「オレにご用とは一体何でしょうか? 借りるってことはここでは出来ない話なんですよね、すぐに行きます、悪いけどハイネ様、他の奴らに――」
「私も行くわ」
名前を呼んでも無視して勝手に話を進めようとするセリムに内心憤ってそのままの勢いで進言する。
「ハイネ、さま……?」
私の勢いにセリムは驚いたように大きく瞳を開く。
「セリムは私の騎士で幼馴染み、私にも聞く権利はある筈だもの」
そう、もしこの先に何か重要な話があるとしたら、それはセリムだけの話では終わらない。
セリムは幼馴染みで、私の騎士なのだ、だから、この先の話を聞く権利は自ずと私にもある筈だ。




