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48話 新しいイベント、アルミア祭が始まろうとしています

「おーい、そっち持ってくれるかー?」

「まだ何やるか決めてないのにこんなに進めていいのか?」

「こういうのは売り出しが大切なんだよ、これ見せてアピールすんの」

 いつも通り私達が学食に向かっていると二人の男子が何やら言い合いながらひとつの大きな木の板、おそらく看板を校内の廊下で運んでいた。

「何か、みんな浮き足立ち過ぎじゃないすかね」

 そのまま隣を通りすぎていった二人に視線を投げ掛けながらセリムが苦笑いする。

 魔法祭は私に合わせてくれていたが基本的にセリムはこういう行事ごとにはいつもあまり乗り気ではない。

「アルミア祭は一年に一回だからね、以前の魔法祭は中途半端に終わってしまったからみんな気合いが入ってるんだよ」

 王子が口にしたアルミア祭、そうこれは年に一回行われる前期の魔法祭と対を成すように後期に開催されるひとつの行事だ。

 現世で言うところの文化祭のようなもの、魔法祭は途中でユーリ誘拐イベントが発生したこともありなあなあで中止になってしまった。

 だからこそ今回はとその気になっている人達も多い。

「でもみんな楽しそうだよー、私達のクラスは何することになるのかなぁ」

「劇とか、定番じゃないかな?」

「……私は劇は勘弁してほしいな」

 なんでこの王子はそんな定番に詳しいのかとか、ここまで来て人前に出るのをまだ嫌がるのかこのヘタレ騎士はとか、色々突っ込みたいことはあったけどはっきり言ってそんな場合ではない。 

「最悪シグナは裏方とかでもいいんじゃねぇか?」

「私もあんまりお芝居は自信ないかも」

「せっかくこんなにかわいらしい見目なんだから舞台に上がらないと勿体無いよユーリ」

 そして、いつもだったら聞き逃せないようなアベルの台詞も今回ばかりは頭を右から左へ通過していく。

「おい、変なこと言うまたハイネ様がぶちギレ……ない?」

「ハイネ? さっきから何ずっとぶつぶつ言ってるの?」

 慌てて私の様子を伺おうとして驚嘆の色を漏らすセリム。

 そしてハイネ自身からの問いかけに、ついに私の中のメーターが振りきれた。

「……ってたのよ」

「え、なんて?」

「待っってたのよ! この日を私は!」

 叫びながら私は思い切り顔をあげる。

「うおっ、ビックリした」

 私のすぐ横にいたセリムは私の勢いに驚いて軽く飛び上がる。

「……ついに壊れたか?」

「あんたを最初に壊してやりましょうか?」

 シグナの台詞に私は笑顔で拳を鳴らす。

「また私のだけ聞こえてるのか、全くいい耳を持っているようだな」

「……買いましょうかその喧嘩、なんてね、残念だけどあんたに付き合ってる場合じゃないのよこちらはー」

 私が地獄耳というのもあるのだろうけどシグナの声は低くて聞き取りやすい、だからいつも耳に残るっていうのもあるんだけど言ったら調子に乗りそうだから教えてはやらない。

 そして、今はシグナからの喧嘩を買っている場合ではなかった。

「……は?」

「今度のアルミア祭は、絶対にやりたいことがあるのよっ!」

 驚いたように声を漏らしたシグナを無視して私は強く拳を振るって宣言する。

 そう、この一年生のアルミア祭で、私は必ず、いや絶対に実現したいことがあった。

 その為なら転生者の権限も、自分でも忘れがちな悪役令嬢の権利も、全てを行使することも厭わない。

「……ここにもいましたね、浮き足立ってる人」

 そんな私を眺めていたセリムはから笑いしながら呆れた声を漏らした。

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