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46話 私達の死には共通点がありました

「……話したいことですか?」

 私は真剣にジークの話を聞くために手に持っていたコップを机に戻す。

 多分、これから話されることは私達のこれからを揺るがしかねないそんな気がしてならなかったから。

「ええ、以前から気になっていたのですが貴女の死因は何ですか?」

「死因……」

「ああ、前世の話です」

「前世の死因は……」

 ふと、聞かれたそんな質問。

 答えは多分だけど殺人だ。

 帰宅ラッシュだったとか、私も疲れていたとか、色々理由はあってもしかしたら事故死かもしれない、ずっとそんな風に考えていたけどどうしても忘れられないものがひとつだけあって、今でもたまに考えてしまう。

 最後に感じた背中の暖かさを。

 あれは多分だけど、人の手の暖かさだった。

「ちなみに私は、他殺です」

「っ……」

 死んだあの瞬間のことを思い出していれば迷うことなく発せられたジークの言葉に私はらしくもなく息を飲む。

「……やはり貴女もそうですか?」

 そして私のそんな反応はジークの思い通りだったようで

「……いや、断定は出来ないんだけど、そう捉えることも出来るのよね、私の場合は線路に落ちたのよ、帰宅ラッシュの中だったから誰かが偶々ぶつかったのか、押されたのか、そのまま死んだから事実までは分からないんだけど」

 私は口許を軽く手で押さえながら説明する。

「実は私も、自分が殺された瞬間は見てないんです」

 ジークはやっぱりといった表情を浮かべた後にカタリと小さな音を立てて座っていた椅子から立ち上がる。

「……どういうこと?」

「私の場合は歩道橋の階段から落ちました、雨の日でしたから自分で滑った、とも考えられますが、私は確実に背中を押された、と思っています、あの時絶対に私の背中には誰かの手が押し当てられていた」

 そして、私の後ろに回り込むとそっとその手を私の背中に押し当てた。

「……」

 そう、この感覚だ。

 あの時感じたのも、今と全く変わらない人の手の温もりだった。

 ジークの死因との気持ちの悪い合致点に背中にはじんわりと脂汗が滲む。

 同じ死にかたをして、同じ世界に転生した?

 そんな都合の良いことが、偶然が、そうそうにあるだろうか。 

「そして、これは言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが以前のユーリさん誘拐イベントとスターダストインパクト事件、どちらも私が主犯ではありません」

 ジークは私の背中から手のひらを剥がすとまた椅子に座り治して、今度は少しの自責の念を感じさせる瞳でまた、衝撃の事実を告げる。

「……待って、どういうこと?」

 私は額に手を添えて待ったをかける。

 ユーリ誘拐イベントではこの世界にある筈のない機械が使われていて、ゲームの史実でもジークが後ろで糸を引いていた。

 スターダストインパクト事件に関してはゲームの史実ではセリムが主犯だったがこの世界のセリムがそんなことをする筈もなく、またその裏にはこの世界にない技術も使われてた。

 だからどちらも主犯はジーク・エルメルダに転生したこの男だと結論付けていたのにその根底が揺るがされれば全てが狂ってしまう。

「どちらも誰かから持ちかけられたものです、どちらも相手の素性までは全く知りませんからどこの誰かと聞かれても答えることは出来ませんが、あの時はどんなものにでもすがり付きたいくらいでしたから、だからこの身体を治す約束の代わりに私は前世の職業の知識を貸した、それだけです」

「……そう」

 そう語るジークの瞳には明らかにいまだに消えることのない罪悪感が宿っていて、私はだから何だ、あんたのしたことは変わらないなんて詰め寄ることは出来なかった。

 この男は、死ぬかもしれないという恐怖に取り憑かれていただけで、多分だけどその内面はそこまで悪い人間ではないのだろう。

 スターダストインパクト事件で死人が一人も出ないように調整されていた時点でそこに少しだけでもある葛藤は見て取れていた。

 何よりも、次の日にはもう自分が死んでいるかもしれないなんて恐怖は実際にその人の立場になってみなければ理解なんて出来る筈もないのだから。

 だからといって全てを許したわけではない、ただ、前よりも少しだけジークに生まれ変わってしまったこの男を理解できただけのこと。

「……おかしいとは思いませんか? ここまで全てが噛み合うのは、そこで私はひとつの結論に至りました」

「……」

 そして、私はジークの台詞に黙り込んで次の言葉を待った。

 既に私もひとつの、嫌な結論にたどり着いてはいたけれど、それはきっとジークと同じものだと思ったから。

「おそらくですが、ゲームの統合性だけではなく私達以外にこの世界の物語を操作しようとしている黒幕がいるのではないでしょうか」

 そして、やはりジークの結論は、私の懸念としっかりと合致してしまった。

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