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38話 もっとお菓子作りをしておくべきでした

「えーっと、これで合ってる……はずなんだけど……」

 私は口に出しながら手元の粉をヘラで切るように混ぜ合わせていく。

「あ! いけない!」

 次の手順を踏もうと一冊の本に視線を落としたその時、鍋に火をかけていたことを思い出して慌ててかけよる。

「あー、焦げちゃった……」

 だけど時既に遅し、火にかけられていたキャラメルはしっかりと真っ黒焦げになっていた。

「……こんな難しいとは」

 私は一人嘆きながら焦げた鍋をシンクに放り込む。

 前世の時の私はよく自炊はしていた。

 今世にハイネとして生まれ変わってからは公爵令嬢という立場上料理をする機会は全くなかったけど多分作れと言われれば作れる。

 でもお菓子作りというのはどちらの人生を振り返っても一度もしたことがなかった。

 そしてそれを今、とても後悔している。


 もうすぐ訪れる11月の25日、この日はセントハルトデー。

 元いた世界で言うところのバレンタインデーにあたる日。

 もちろんローズクォーツの姫君のゲームの中でも大切なイベントのひとつだ。

 今までは家にいたからユーリにあげるお菓子を作ることは出来なかったが、寮生活となった今、私を止めるものはいなかった。

 そして寮の共用キッチンを占拠して早数時間、キッチンは惨劇の場と化していた。

 焦げ付いた鍋、いびつに固まったチョコレート、かつてはキャンディーだったはずのもの。

 おそらく失敗の原因は一度に何種類も作ろうとしたことと用量や手順を省いたり省略したせいだと思われる。

 料理は意外とその場のノリで何とかなるものだけどお菓子はそうはいかないのだと強く実感するいい礼になった。

 ちなみにセリムは試作品をひとつ味見した後にとっとと適当な理由をつけて逃げ出していったわけだけど。

「はぁ、もっとしっかりやっとけばなぁ……」

 私は一度作ることを断念して洗い物を終わらせてしまうことにすると誰に言うでもなくポツリと嘆いた。

 前世は手作りお菓子なんてあげようと考えたことすらなかったけど、ユーリにあげられるのならいずれは絶対に手の込んだ手作りのチョコレートやお菓子、そう心に決めていた。

 だから意気込んで始めたのにこの末路である。

 シグナの件とか色々あって全然練習出来ないうちに既にセントハルトデーは目前に迫っている。

 あんな美味しいクッキーとかを簡単に作ってしまうユーリに下手な完成度の物なんてあげられない。

「はぁー……」

 時間が経つにつれてため息は大きくなるばかりだった。

「わたくしの可愛い末妹ちゃん、一体何があってため息なんて吐いてるのかな?」

「ララお姉さま……!」

 この際今年は市販にして来年新しく作り直す、そんなところまで考えがいったところでいつもの若干気持ち悪い口上が真後ろから聞こえて、私はタイミングの良さに感謝して後ろを振り返った。

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