34話 休みが終わっても人生は続きます
その日、私達は登校の準備を終えると寮を出た。
今日は長期休暇明けの登校一日目。
流石に遅刻は出来ないからといつもより早く起きたからさっきから欠伸が止まらない。
一応公爵令嬢だから公の場で大口開けて欠伸も出来ないからこうして必死に噛み殺してるわけだけど。
「ねぇハイネ、どこも変じゃないかな、忘れ物も大丈夫?」
そんな私にユーリはスカートの裾をひらひらと軽く持ち上げたり整えたりしながら聞いてくるから
「ユーリ、もう三度目よそれ、大丈夫、ちゃんと似合ってるから、忘れ物もないって」
本日三度目、同じ言葉で返事をする。
何か、久しぶりのユーリたんの制服良すぎる気がするんだけど多分気のせいじゃない。
私服も勿論かわいいんだけど制服姿は今のうちじゃないと見られないから、断じて変な意図はない、断じて。
「似合ってるか聞きたかったわけじゃないんだけど、そっか、ありがとう!」
「どういたしまして」
満面の笑顔のユーリを見てたら尊すぎて何か眠気すら吹っ飛んだ気がする。
「ハイネ様ー、顔の筋肉が仕事放棄してますよー」
「あ、おはようセリム」
そんな私に突っ込みを入れたのはもはやお約束というかなんという、女子寮と男子寮の合流地点で既に待機していたセリムだった。
「おはようございます、ユーリもおはよ」
「おはようセリム、それからシグナとアベルも」
セリムは一度私に向かって軽く頭を下げるとユーリのほうに視線を向けて軽く挨拶をする。
「お嬢様、おはようございます」
「……おはよう、ユーリ、ハイネも」
セリムと一緒に待っていたシグナはいつも通りユーリにだけ挨拶したけどまぁ、これは本当にいつも通りなので今さら気にすることでもない。
そしてその隣に立っている完璧超人な王子様が低血圧のせいで顔色を悪くして立っているのもまた、いつも通りだった。
なんだろう、いつも通りの三人を見てたら本当に休み終わったんだなって実感した。
「相変わらず朝は調子悪そうよねあなた……」
「……大丈夫、すぐに良くなるから」
「そう、まぁ、お大事に……」
頭に手を当てて唸るアベルに私は一応、言葉限りの声をかけておく。
「それより朝飯早く食いにいきましょうよ、オレもうはらぺこで」
そしてそんなアベルに軽く手を貸しているセリムは大きく欠伸をしながらそうぼやく。
いいなぁ、大きな口開けて欠伸出来て。
っていうか1学期の時は手までは貸してはいなかった気がするんだけど、この二人日に日に仲良くなってる気がする。
いや、別に仲良くなるのは良いことだろうけど、相手は一応私からしたら恋敵なわけで、そこは少しだけ気になる、ほんの少しだけ。
「まぁ、そうね、じゃあ、とりあえず二学期もよろしくってことで」
だけど朝からそんなことをさんざん考えても仕方ないしきっとこのモヤモヤの答えは出なさそう。
それならとりあえず、登校してしまうのが一番だ。
それに
「夏休みは、あまり会えなかったし」
会えなかった分の時間を取り戻すことが私としては先決だった。
「え、でも海とか行ったじゃないっすか」
「まぁそれはそれ、これはこれということで」
真っ先に当たり前の指摘がセリムから飛んできたけど確かに海には行った。
でもみんなそれぞれ立場というものがあるからこうして全員集まる機会は意外と少なかったわけで。
まぁ、だって王子とか騎士とか、公爵令嬢がいるわけだからそれも仕方ないことなんだけど、なんていうか毎日学校で顔を合わせる人達と数日間会わないというのはなかなか自分のなかでは違和感があった。
正確にはユーリと会えない日々が辛かった、ってだけな気がしないでもないけどそれはそれで置いといて、昔の自分から計算したら年甲斐もなく、今の自分から計算したら年齢らしく、はしゃいでるのは事実だった。




