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21話 弱気で諦める私なんて私のキャラじゃないですね

 あの後すぐにセリムの探知魔法でユーリのいる場所を探しだしてセリムに先導される形で走り出せばすぐに敵と思われる真っ黒なローブを着た集団から襲撃を受けた。

「言ってた通り、ユーリのほうへ向かえば向かう程に敵が沸くな……土埃で周りも見えずらいし!」

 だけどそれをセリムは苦戦することもなくばったばったと倒して行くから私の通る道はただただ真っ赤で、平和な道だった。

「頑張って! この先にいるんでしょ!」

 やはり苦戦するのは風で巻き起こされたこの砂ぼこり、目の前のセリムの背中ですら見えなくなりそうな程だ。

「その通りな筈なんだけど、少しだけ変な感じもするんだよな」

 セリムは戦う手を止めないままにうーんと唸りながら首を傾げる。

「っ……ウォーターセーバー!」

 私はセリムの前に飛び出してきた敵に一番得意な水魔法を使って倒すことに成功する。

「……やるようになったじゃん」

「私だって、守られてるだけのお姫様にはなりたくないわ」

 別にきっと私がやらなくてもセリムが倒していた。

 それでも、自分だけ何も出来ていないという事実がどうしても嫌だった。

「……オレが一生守ってやるってのに、とんだお転婆お姫様だな」

 入学前のような会話につい気持ちが緩んでしまうけど、笑うのはユーリを救出してからの話だ。

「私のお転婆は死んでも治らないと思うわよ、苦労するわね」

 私は転生前の時はよくお転婆が過ぎるとも言われた。

 だから死んでも治らなかったこれがこの今世で治るわけもない。

「ほんとーに、その通りで」

『聞こえる!?』

「この声は……アニ?」

 そんな中、頭の中に直接声が響いた。

 声からしてアニが精神系の魔法で語りかけてきているのだろうけどどこか慌てた様子なのが気になる。

『今敵の頭から手に入れた情報だけどそのシグナルは……』

「そろそろ見えてくる、っ……これは」

『ダミーだ!』

 アニの声と同時に目の前に現れたそれはよく、分からない機械。

 前世で言うところのノートパソコンみたいなものが机の上でピッピッと電子音をたてている。

「だ、ダミーって……」

 この機械でユーリと同じ魔力の形式を発信しているということか。

 だけど、こんな機械作中でも、特典冊子でも、ドラマCDでも出てこなかった。

 そもそもこんな科学の力みたいなものを作る技術は魔法の発展したこの世界には存在しない。

『追っ手対策だと思う、本物のユーリにはサイレントの魔法がかけられてるから魔力頼りでは追えない……!』

 アニの言葉にさらに追撃を受ける。

 それではユーリを見つける方法がないと言っても過言ではない。。

「そ、そんな……いえそれよりも、こんなこと出来るのは……」

 わざわざユーリの魔力と同じものを発生させる機械で翻弄する。 

 それは私じゃないにしろ誰かがユーリを狙ってることを知ったうえで追いかけてくるって予想が出来ていた者だけだ。

 私はイレギュラーな存在だ。

 私がいなければ狙われているのがユーリだと断定することすら難しいのに、どうしてそんなことが可能だったのだ。

「ハイネ! 考えてるとこ悪いけど、次の手を考えてくれ!」

「っ……次の手……」

 セリムに肩を揺すられてハッと現実世界に引き戻される。

「……ハイネ!」

 戦いながらセリムが急かす。

 だけど

「……ダメ、かもしれない」

 私の口から漏れたのは自分のものとは思えないほどに弱々しい言葉だった。

「……は?」

 セリムは目の前の敵を切り捨てると驚いたような声を漏らす。

「……わ、私じゃ、出来ないのかもしれない」

 だから、私はさらにそう続ける。

「いきなりどうしたんだよ……?」

 セリムはそう言うけど、いきなりなんてことはない。

「指示する以外のことが出来ないのに、何も持ってないのに、今はそれも出来ない、やっぱり私じゃあ……」

 だって、ゲームの知識があるからこうして生きてこれたのに、周りにも人が集まって、ユーリからの信頼も得れた。

 だけど私の知識が及ばない範囲に引きずり出されてしまえば私はただのお一人様を極めていた寂しいしがないOLに戻ってしまう。

 知識を失った私はあまりにも無力で、もしかしたらこれはちゃんと奪還イベントと向き合えというゲーム側からの警告なのかもしれない。

 散々にねじ曲げたから、順を追って進めと言っているのかもしれない。

 そんことまで考えてしまって……

 だから、それならストーリー通りに進めたほうがいいのかもしれない。

「らしくねーなぁ!」

 そんなことを考えてしまった私にセリムが大きな声で待ったをかける。

 自然と地面とにらめっこしていた視線をあげれば粗方敵を倒しきったセリムと視線がかち合う。

「何も持ってない? 出来ない? 違うだろ、今皆が動いてんのは確かにユーリが大切だってのも根底にあるんだろうけどさ、お前が動いて、諦めなかったから皆が皆動いてるんだ、ユーリが誘拐されたあの時も、それ以外の時だって、お前が見放さなかったから皆こうしてここにいる、皆だってきっとそう思ってるし、思いながら振り回される道を選んでる、オレにだってお前が手を差し出したんだ、自分の手も服も汚れるのすら気にせずに、それなのに何もないなんてお門違いもいいところだろ、見ろよ、今、誰も諦めてないぞ、それなのにお前が一番最初に諦めるのか? お前が命より大切にしてるユーリのことなのに、諦めないことが取り柄のお前が」

「……セリム」

 セリムの紡ぐ言葉に私はただ名前を呼び返すことしか出来ない。

 周りからはそんな風に見えて、そんな風に思ってもらえてたなんて、指摘されなければ気付くこともなかっただろう。

 考えれば放送室の件だってあるのにそんなこと考えもしなかった。

「それに何も持ってないなんてことないだろ、お前はもう持ってる、自身のナイトだ」

「っ……」

 そんな私を見てセリムはそう続けると、自信満々な表情でしっかりと自身を指差した。

「最強の幼馴染みなんだろ? だったらもっと頼れよ、オレはお前の騎士、お前の持ち物だ、時間ならいくらでも稼いでやるし、お前のことも守ってやれる、お前の敵は倒すし、どんな無茶だって聞いてやる、叶えてやる、だから……いつもみたいに考えろ、ユーリを助ける方法を!」

 セリムは言うが早いか増援に現れた数人の黒マントの男達を剣を使うことすらせずに地面に転がす。

 それは、あの日も私を助けてくれたフレイムランスだった。

「セリム……分かった! ありがとう!!」

 それを見届けた私は早々に諦めることを諦めて、

 自身の身の安全を完全にセリムに預けて長考に入った。

「……その顔のほうがやっぱりお前らしいわ」

 セリムのその言葉を最後に私は脳内の情報を整理することを開始した。

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