20話 作戦は即興で立てるものです
「まずはララお姉さま! お手をお借りできますか……?」
私は必死で頭のなかで作戦を考えながらまずはララを説得するところから始める。
「……よし、可愛い末妹の為ならなんでもするが、その白魚のような肌に傷を作らないように気を付けなさい」
だけどすぐにララは快諾してくれて、これは予想通り。
溺愛系のキャラは溺愛対象に弱いと相場が決まっている。
少し言ってることキモいけどそこはまぁ、この際許容する。
「ありがとうございますララお姉さま! それではララお姉さまはエンハンス魔法でこの場の全員のステータスを上げていただけますか、出来るだけ、高い効果で、特に集中して上げて欲しいのは、セリムには身体系、アニは、集中力を増強させるもの、アベルには……魔法全般を向上させるものをお願いします! それが完了したら出来るだけ沢山の敵の捕縛をお願いします、おそらく沢山潜んでいるし、私がユーリを助けようとしていることに気付いたら絶対に邪魔をしてくるから」
ララの魔法適性度は元のハイネと同じで低だ。
だけどエンハンス系の魔法には特化している。
ただアニと違ってその全ては努力の結晶と表していいと思う。
低認定されながらもエンハンス、それだけに特化した訓練をし続けた結果だ。
そして戦力に関しても申し分はない。
そもそも魔法使えなくてもめちゃくちゃ強いからこの人。
「任された、しかしエンハンス魔法は得意だが要求が難しい、少しだけ時間がかかるぞ」
言うが早いかララはすぐに杖を取り出して魔法の準備に取りかかる。
「次に……アニ! 精神系の魔法で教師達にユーリのことを伝達して、それから門の周りの警備も強化させて、その後はひたすら敵の精神にデバフ!」
「……この戦いの景品を奪われるのは気にくわないから、手を貸してあげるよ」
そしてそのままの流れでアニにも指示するけど特にいやな顔一つせずに了承して速攻で魔法を展開する為に額に手を添える。
小悪魔、性格が悪い、ファンから散々に言われている彼だが根の性格が悪いわけではない。
だからこそ手を貸してくれると踏んだが間違いではなかったようだ。
「アベルあなたはアニの精神魔法を介してなんでもいいから言って学園近くの警備を出来るだけ集めて、その後はララお姉さまと一緒に邪魔する敵を魔法で倒して!」
アベルにも指示を出すけどどこかまた、昔懐かしい匂いがする指示になったのは天の気まぐれだろうか。
「王子に戦闘面を任す人間はきっとどこを探しても君しかいないだろうね、人を集める、か、本当に昔みたいだね、いいよ、任された」
アベルは少しだけ苦笑しつつも強く頷いてすぐにアニの元へ駆け寄る。
「……セリム、あなたは……ユーリを助けに行く私についてきて、私を守って……!」
最後はセリムだ。
もし、これでセリムがダメだと言えば、立てた作戦の全てが無に消してしまう。
だから、しっかりとセリムのその赤い瞳に訴えかける。
「っ……はぁー、分かった、分かったよ、これでオレだけ反対も出来ねーじゃん……絶対に守るから、オレから離れるなよ」
一瞬、セリムは視線を地面に落として、それからすぐにいつもの調子に戻って私の肩から離した手を腰の剣に添えた。
「っ……ありがとう、それじゃあ、行きましょう!」
私はそれだけ一言宣言すると見えない砂ぼこりの先を見据えた。




