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17話 正規攻略キャラ最後の一角の登場です

 魔法祭とは、アルミア魔法学園で年に一回開催される祭のことだ。

 所謂現実世界で言うところの体育祭みたいな感じ。

 さらに簡単に言えば体育祭に魔法を追加したようなものだ。

 そしてこれは学年対抗戦。

 アニは三年生、たいする私たちは一年生。

 三年間魔法や実技を習ってる三年生のほうがもちろん有利。

 それでも負けられない戦いというものがこの世にはあるのだ。

 私を筆頭に本気で練習に練習を重ね、ついに魔法祭当日、これから魔法祭イベントが始まろうとしていた。


「皆、いいわね、今回の魔法祭絶対勝つわよ、三年生に」

 朝、私は集まったいつもの四人に真剣な声色でそう呼び掛ける。

「相変わらず本気だね、クラスの皆君のあまりの闘志に引き気味だったけど」

 アベルの言う通りすでに他のクラスメイト達は私に捕まらないように組のテントの下に集合してたまにこちらへ視線を投げ掛けてきていた。

「付き合わされるほうの身にもなるべきだ」

「自主練で身体痛いんですけど……」

 シグナに続いて珍しくセリムからも苦情が上がるけどあの男、アニに勝てさえすれば他の相手からの好感度なんて気にしない。

 ユーリに言われればまぁ、絶望するだろうけど。

「でも、本気でこういう行事に挑むって楽しいよね」

「ユーリは分かってくれると思ってたわ……!」

 だけどそう! ユーリがそんなこと言うわけないのだ。

 なぜならそういう子なのだから。

 本当に愛しい。

「なんだ、随分と楽しそうじゃないかわたくしの愛する末妹ちゃん?」

 ぽやぽやした気分でユーリを眺めていれば凛とした声が響いた。

 私を◯◯ちゃんなんて言い方をする人はこの世界に二人しかいない。

「ララお姉さま! いらしたんですね、お仕事は大丈夫なんですか?」

 私はすぐに声のしたほうを向いて全力の笑顔でその人を迎える。

「お前の初めてのデビュー戦なんだ、仕事なんてしてる場合じゃないだろう」

 ララと呼ばれたその人はふっとクールに笑むと私の頭をくしゃくしゃ撫でる。

「ララ様もいつも通りですねー」

「セリム、ちゃんとハイネのことを頼んだよ」

「ええ勿論」

「この方はハイネのお姉さま?」

 私とセリムの反応を見てユーリがふとそう尋ねてくる。

「……ええそうよ、この人は私の姉のララ・リューデスハイム」

 本当は、あまり面識を持って欲しくないけどいえ知らない人ですなんて言ったって通じないし、ララを邪険に扱うわけにもいかないので紹介する。

「ご紹介に預かったララ・リューデスハイムだ、君達二人は初対面だね、アベル様もご機嫌麗しいようで何より」

 ララはそのハスキーな声でユーリとシグナに挨拶を終えるとアベルにもペコリと軽く会釈する。

 ララは私と同じ公爵の家のもの、しかも長女であり嫡男のいないリューデスハイム家では時期当主になるのではと話が上がる程の存在、勿論アベルとは面識がある。

「ララ様もお元気そうで、お父上に負けず劣らずの武勲はよく聞き及んでいます」

 そう、ララはアダム同様自ら戦場に立つタイプであり既に武勲は数知れず。

「ゆ、ユーリ・ローレライと申します、こちらはシグナ・マグナス、ローレライの家の騎士です、ハイネ様とは日頃から仲良くさせていただいております」

 ユーリは慌てた様子で、それでも尚しっかりと挨拶をして頭を下げる。

 私は、まぁこの長い付き合いもあるけどそりゃいきなり公爵の爵位を持つ者が目の前に現れれば慌てもするだろう。

 それでもしっかり側つきのものの挨拶まで済ます辺りは流石元貴族……いや、流石ユーリたんと言うべきか。

「そうかしこまる必要はないよ、ハイネからよく話に聞いている、いつも妹と仲良くしてくれてありがとう」

 そしてララも特に何も気にすることなく笑顔でユーリにお礼を伝える。

 ララは作中でもユーリを差別しない珍しいタイプのキャラだ。

 それにしてもそこまでユーリの話を家でしていた記憶はないのだけれどそんなに愛が溢れてしまっていただろうか。 

「い、いえそんな……」

 あ、待ってヤバい。

 ララの一挙手一動がさまになりすぎているせいかユーリが照れてる。

 このままではこれまでの努力が無駄になってしまうではないか。

「……それにしても君がハイネの心を掴んで離さない御子か、大変興味深いね」

「お姉さま……」

 ほら、何故かララも興味持っちゃってるし。

 やっぱりゲーム内の根本となる設定というものはどうにかするのは難しいのだろうか。

「ん、いや、何でもないよそれじゃあ観客席から見てるから頑張って」

「……ハイネのお姉さまなんか、作動が格好いいね」

 手をひらひらと振りながら去っていったララの後ろ姿にユーリがひそひそ声でそう漏らすから

「……そうでしょうね」

 それだけ返すので精一杯だった。

 そう、ララ・リューデスハイムは女性でありながらこのローズクォーツの姫君の攻略対象なのだ。

 まぁ乙女ゲーをやってれば意外と少なくもない女性攻略キャラだけど、友愛が多い中でもララはしっかりと恋愛という形で攻略できるキャラの一人だ。

 赤い瞳に短めの白髪をポニテにしている高身長美人と言えばいいだろうか。

 そんな見目で溺愛系のキャラクター。

 正義感の強い彼女はハイネとは犬猿の仲……というのはゲーム内での話。

 今世の私は必死でララに媚を売ってきた。

 甘えに甘えた。

 なぜなら、その溺愛対象を私にしてしまえばいいと思ったからだ。

 そしてその作戦は無事に成功したわけだけど、まさか愛する妹が気にかける存在、なんて遠いところからフラグを立ててくるとは思わなかった。

 流石ゲーム内攻略キャラ。

 これからはララにも気を張らないといけないということだ。

 だがまぁ、取りあえず正規の攻略キャラが全員出揃ってくれたお陰で動きやすくはあるかもしれない。

「あ、ハイネ壌見っけ」

「アニ様……」

 そしてこのタイミングでもう一人、今日一番気を付けないといけない相手が登場してテンションは駄々下がりなわけだけど。

「よく逃げずにここに立ってるねー、それじゃあ、楽しみにしてるね」

「……こちらこそ」

 アニはそれだけ言うと楽しそうに陣地に戻っていくから後ろ姿に生暖かい返事を投げつけておく。

「どうしたのハイネ?」

「いいえ、何でもないわ、この魔法祭、全力で楽しみましょうね」

 心配して声をかけてくれたユーリに笑顔を返してから、私は強く拳を握った。

 ララのことは後でいい、何故ならユーリたんの為にも負けられない戦いが始まるのだから。

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