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15話 悪役令嬢でも愛してくれるんですね、あれ、この展開は

「皆、どうしたんだろ」

 私は独り残された学食でぽつりと呟く。

 どこへ行くのかも教えられていないから追いかけるに追いかけられないし、何故皆が皆あんな険しい顔をしていたのかも分からない。

「……いや、それどころじゃないわ」

 一瞬もしかしたら私のこの噂のことで何か思うところがあったのだろうかとも考えたがすぐにその思考は放棄した。

 私はユーリ・ローレライじゃない、ハイネ・リューデスハイムだ。

 主人公じゃない悪役令嬢で、そんな人物のためにそこまで感情を隆起させたりしないだろう。

 そして、自分のことよりももっとかんがえなければいけないことが残っている。

 そう、それはアニ・ユースクロイツの件。

 ハイネ告発イベントが発生したということは、アニとユーリが出会うのも間もないということ。

 出来ることなら面識を持たないで欲しいというのが本音。

 だからどうにかしないといけない。

 ゲームのシナリオも裏設定も全てを網羅していても尚私というイレギュラーがいる限りは完全にストーリー通り進むなんてことがないことは幼少期から理解していた。

 だからこそ即興での物語の組み立てが必要になってくる。

『あー、テステス』

「……え、セリム……?」

 瞬間、設置されたスピーカーから大きすぎるくらいの音量でセリムの声が聴こえてついスピーカーのほうへ視線を向ける。

『全校生徒の皆様に宣言します! 私、ローズクォーツの姫であるユーリ・ローレライがリューデスハイム公爵家令嬢、ハイネ・リューデスハイムに虐げられているという事実は一切ありません、私は……彼女の親友です!』

 いなくなったと思ったら本当に何をしているのか、そんなことを悠長に考えていたのに次の声を聴いたら両手で口を押さえるしかなかった。

 え、推し……私を親友って……

 いや、嬉しいけど、本当に嬉しいけど、思いを寄せてるとか言ってくれてたらもっと……いや、高望みが過ぎる、何度も言うけどありがとう神様、転生させてくれて。

『次期国王候補、アベル・ラインハルトが今ここで証明人になろう、この名に誓って今の話は事実であり、私たちは七年らいの親交があることを知って欲しい』

 独り頭のなかがヘブンになって何を考えているのか分からなくなりそうななか聴こえてきたアベルの声で現実に引き戻される。

 そしてそれっきりぶつっと音を立ててマイクが切れたようで音声がなくなった代わりに今度は周りの生徒達が騒ぎだす。

 あの王子、私がいないのをいいことにユーリと距離積めてそうなのが気に触る。

 さっきもとなり座ってたし。

 でも

「……ありがとうみんな」

 最初は蹴落とさないといけない相手達だった。

 ユーリたんを私が落とすためにも。

 それが今では……いや蹴落とす対象なのは何も変わっていないけど、欠片もユーリたんをあげる気は無いけれど、それなりに大切な存在に昇格していたという事実とはちゃんといずれ向き合わなければいけないときが来るかもしれない。

 少なからず彼らの中の私は、作中のハイネではなく私という意思の入ったハイネとして見てくれているのだから。

「彼女、突拍子もないことをするんだね」

 そんな感慨深さを勝手に感じていればふと、声をかけられて振り返る。

「アニ……様」

 そこには以前廊下ですれ違った、現状頭を悩ませている理由が笑顔で立っていた。

「あれ、名乗ったことあったかな」

「あ、いえ、その……」

 しまった、名乗られてないのについ名前を呼んでしまった。

 アニは頭の良いキャラだ。

 綻びは出来るだけ見せないほうがいいのに。

「……ま、どっちでもいいけど、それにしても彼女は面白いね、実力テストの件もそうだけど今の放送も」

 でもアニはそれをスルーするとまたユーリの話を始める。

「そう、ですね」

 私はなんとか返事を返すけど、待って

「そこで、ひとつ提案があるんだ」

 私このやり取り知ってるんだけど。

「……なんですか?」

 私は奇しくもゲーム本編をなぞったセリフを吐き出す。

 そうすればアニは小悪魔みたいな笑顔を浮かべて、その口を開いた。

「次の魔法祭でボクが君に勝ったら、ユーリ・ローレライをボクに頂戴、ユーリ・ローレライの親友、ハイネ・リューデスハイム壌?」

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