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12話 新しい攻略キャラの登場で気を引き締めましょうか

 次の日私は早々にユーリの隣の席を陣取っていた。

「ユーリと同じクラスになれてよかったわー」

 あの後テストの後張り出されたクラス分けを見たときは安堵の声が漏れそうになった。

 セリムの関係でイベント内容が大幅に変更されたことでもしかしたらそこら辺にも支障を来すかと思ったからだ。

 そして入学式の次の日、初登校後はローズクォーツの姫、王子、強い騎士と謎の最強キャラという色の濃い人間達が集まっているせいか他の生徒達は挨拶はしてきても積極的にこちらに関わってこようとはしないようで、これならユーリが虐めにあうこともないだろうと少し安堵もした。

 まぁ、ユーリが虐められない一番の理由はハイネが私で、本当のハイネがいないおかげだろうけど。

「うん、私も! だけどアベルだけ離れちゃって残念だね」

「……ま、そうね」

 にこにこと返事をしてくれるユーリは相変わらず可愛いけど、アベルに関しては同感ではない。

 まぁ、アベルがクラス別れるのは知ってたけど。

「ハイネ様全く思ってないすよねー」

 そして勿論セリムに突っ込まれる。

「私はお前よりアベルのほうが良かったけどな」

「ほんっとーに可愛くないわねあんた、私と同じクラスが嫌ならあんたも別のクラスに行ってどうぞ?」

 そんな中黙っていたと思ったら急にシグナが毒を吐くのでシグナの座っている椅子に手をかけて笑顔で退出を促す。

「……私はお嬢様の騎士だから確定でお嬢様と同じクラスだ、私が移るならお嬢様も移ることにな――」

「大歓迎! シグナも同じクラスで良かったわ」

 だけどシグナの発言で速攻前言撤回してから椅子をわざわざ机のほうに押し付けてあげる。

 机と椅子に挟まれてぐえって声漏れてたけど気にしない。

 それもそうだ、よくよく考えれば護衛を護衛対象と離すわけもない。

「手のひらの返しようが凄いですね……」

 そしてまた呆れるセリム。

 セリムに呆れられるのはもはやもう慣れっこみたいなものだけど。

「それにしてもあの王子だけ違うクラスなの本当に面白いわよねー」

 メインキャラなのに別クラスの彼ははたして元気にやっているだろうか。

 出来ることなら新しい出会いとか起きてないかなー、なんて思ったりすると口もとの緩みが止められない。

「あの王子とは私のことかな?」

「そうそう……アベル、あなたの……なんでいるの?」

 声に振り返ると教室に入ってきたアベルが近くの席に座って笑う。

 元関西人の性だろうか、ついノリツッコミしてしまったけど。

 いや、本当になんでいるんだよお前。

「身体が弱いから陽当たりもよくて保険室にも一番近いこのクラスへの移動を希望したんだ、次期国王候補の私が倒れたら手間を取らせることになると言ったら存外簡単に認めてくれたよ」

「身体が弱いなんて設定は聞いたこともないですけど……」

 どの冊子にもドラマCDにも載っていない情報をさらりと出すんじゃない。

 そんな話見たことも聞いたこともないわ。

 それに王子からそれ言われて断れる教師がいるわけないだろ。

「設定っていうのやめません?」

 そしてそんな私にさらに突っ込むのはやはりセリム。

 いや、だって実際に設定にないんだから仕方ないでしょこれは。

 なんなら同クラスって設定もないし。

「とりあえず、みんな一緒のクラスなんて嬉しいわ!」

「そうよねユーリ!」

 だけど嬉しそうにするユーリが可愛いからすぐに同調して笑う。

「手のひらくるっくるじゃないか……」

「なぁ、それよりさー、学食行きません? オレこういうところ初めてだから気になって」

 私の行動に頭を軽く抱えて唸るシグナを無視してセリムがそう提案してくる。

「そうね、じゃあ行きましょうか」

 今日は学則の説明や授業案内などが主で、頭を使っていたら脳が悲鳴をあげているのもまた事実。

 早々にエネルギーを補給するのも悪くないと席を立つ。

 セリムに色々なものを見せてあげたいというのもまぁ無くはないけど。 

「それにしても、次期国王候補が嘘つきなんて世も末ね」

 そして私は廊下な出ながらアベルにそんな辛辣な言葉を投げ掛ける。

 今後嘘つきな王様が世界を統治する、なんてことになれば本当に世も末だ。

「昔君に習ったことだけどね」

「そうだったかしら?」

 アベルの言うところには大変思い当たる節があったけど適当に誤魔化してしまう。

 その時

「おっとごめんね」

 ドンッと軽い音をたてて誰かがぶつかってきて、すぐに謝られる。

「あ、いえ、こちらこそよそ見してて、ごめんなさ……」

 聞き覚えしかないその声のするほうを見ればそこにいたのはこれまた見たくない顔だった。

「……ボクの顔に何かついてるかな?」

「あ、いえ、じろじろ見てごめんなさい、それじゃあ」

 でもやっぱり攻略キャラだけあって顔が良い。

 つい凝視してしまえばにこっと笑いながらそう問われて慌てて謝る。

「うん、また会ったらよろしくね」

 そしてその人懐っこい幼い顔に笑顔を浮かべてひらひらと手を振るとそのままその人は去っていった。

「大丈夫でしたかハイネ様」

「……ええ、大丈夫よ」

 声をかけてきたセリムに私は考えながらそう返す。

 だけど内心は大丈夫ではなかった。

 そう、彼、アニ・ユースクロイツはこのローズクォーツの姫君の三人目の攻略対象だ。

 ユースクロイツ伯爵家の三男、アルミア魔法学園の三年生、先輩でありながらその小柄に金髪の天パ、童顔というきゅるんきゅるんな見た目のゆるふわ系キャラ、そんな彼に魅了された女子が結成したファンクラブもある程というのが表向きの彼の姿。

 だがその実は小悪魔系でありファンの間からは小悪魔通り越して意地悪問題児として有名だ。

 ユーリのことも最初は珍しさからからかっていたけどどんどんユーリの魅力に気付いていき……という感じで個別ルートは進む。

 最近あまりにも平和過ぎて忘れそうになっていたがよく思い出した。

 この世界は乙女ゲーの世界。

 決して気を抜くことなかれ自分。

 ユーリたんはあいつにも絶対に落とさせないからな!

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