89話 私が気になっていたって本当ですか?
「ほら頑張ってー、次はそっちのもやっつけちゃえ」
「お前急にどうしたんだ! ぐわっ!」
「そっちも負けるなー、でも殺したらダメだよ」
「……アニ様の、仰ることは、絶対」
転送された先でボクは状況を察するとすぐに精神魔法を発動させた。
そして適当に転がらせた男のムダにでかい図体に腰かけると手駒にした数体の敵達にやる気のない声援を送り続けていた。
あのハイネ・リューデスハイムをどういう手を使ったにしろ誘拐した一味だ、何かとんでもない罠でも張ってあるのかと思って覚悟して来てみれば何てことのないただの待ち伏せ。
はっきりいって呆れてしまう。
あれだけの準備する時間があって、あんなにもしっかりと場所や時間まで指定しておいてこのおざなりとなるとどうやらこの集団には良い軍師はいないらしい。
それか誰かがワガママ捏ねて自分で立てた作戦でいきたいとか宣ったのか。
あのご令嬢が関係してるってことは多分後者が正解なのは目に見えているのだけど。
こっちのご令嬢だったら多分だけど本当にえげつないこと思い付くんだろうしそれを実現させてさらに成功させるところまで想像に容易いのがまた笑えてくる。
「……こんなところで離脱なんてしないよね、オバサン」
気付けばそんな台詞が口をついて出ていた。
どうやら人というのは敵同士の戦いをただ見つめている独りの時くらいは本音を溢してみたくなるものらしい。
そもそも最初っからボクが興味を示していたのはユーリじゃない、オバサンことハイネ・リューデスハイムだ。
いや、別に恋愛感情とかそういうものではないけど。
最初に見かけたときから面白そうな子だと思ったし、見ていれば見ているほどに飽きることなく次から次へと新しい問題を起こしてはそれに飛び込んでいく。
そんな公爵令嬢を見たのははっきり言って生まれて初めてだった。
そもそも爵位のある人間に幅を広げても見たことない。
まさに異端、その一言に尽きた。
何をすれば彼女の新たな一面が見られるか、そんなことばかり考えて、最終的にユーリを引き合いに出したら見事に食いついてくれたわけだけど。
まぁまさかその後こんなところまで巻き込まれるほどに入れ込むことになるとは流石のボクでも思っていなかったけどね。
学園を卒業したことに今でも少し未練があるって知ったら多分笑われるかな。
でもきっと、それは嫌な笑いじゃないはずだ。
「ボクはまだ、君で遊ぶんだからいなくなられたら困るよ」
粗方敵を倒し終えるとボクは魔法を作動させたまま発信器を見てそちらへ向かい出す。
こんなの最後まで見ていたって別に面白いものじゃない。
それより早く見つけ出してこのボクを走らせた責任を取って貰わないとね。




