88話 嫌いだけど嫌いじゃない、何となく知ってました
「た、頼むからもう止めてくれっ……命だけは――ぐはっ!」
地面に倒れ伏して呻く男に容赦なく刃を振るう。
「……お前達は私達の命を狙ってるんだろう? それなら殺されても仕方ない」
人のことを殺す気で来ているのに殺されたからって文句は言えない。
そんなことも分からずに刃を握っているのなら愚か以外の何物でもない。
「……ほ、本当に学生なのか、っく……」
呻き声をあげて地面にまたひとつの骸が増える。
「……私を引き当ててしまったのは運が悪かったな、私は……人を殺すことに別に罪悪感は覚えない」
多分私達はランダムに割り振られたのであろうが私とララ様を引き当てた奴らは運が悪い。
多分他の奴なら殺しまではしないだろう、今のセリムがどうするかまでは分からないが。
「早いところ向かうか」
オレは襲ってきた全員が動かなくなったのを軽く確認してからすぐに魔道具を頼りに移動を開始する。
ハイネ・リューデスハイムのことをどう思っているのか聞かれれば即答でムカつく奴だと答える。
あの一件以来確かに前ほど嫌悪することはなくなったけど別に好きかと言われれば好きじゃない。
「……」
何でこんな関係性に落ち着いたのか、考えてもよく思い出せない。
出会った当初は普通にしていた筈なんだが気付いたらあの態度がデフォルトになっていた、何が気に入らなかったのか知らないがやられるこっちの身にもなって欲しい。
お嬢様曰く愛情の裏返しらしいがあんな分かりずらい愛情なら必要ないとすら思う。
でも、嫌いというわけではないと思う。
いや、嫌いではあるのだが、自分でもこんな感情を覚える相手はハイネくらいしかいないので実際に考えてみるとよく分からない部分が多いのは事実だ。
でも
「だからって……」
死んでいいとは思わない、不幸な目に合えばいいとも思わない。
あいつは、ただバカみたいに笑って人をバカにしていればそれでいい。
不要なもの、マイナスになるものは私みたいな覚悟を決めてしまっている奴か自身の騎士であるセリムが背負えばいい。
「……無事じゃなかったら、承知しないぞ」
私は誰に言うでもなく呟くとさっきよりも少しだけ走る速度を上げた。




