6、魔法
俺は住宅街の狭い道を右、左、右、右、左と曲がると住宅街から少し離れたところに大きな屋敷のような建物がある。
魔界だっていうのにお金かけて作られている。
「バヒ〜!いるか〜!」
外から呼びかけてみる……。
返事がない。
「お〜い!バヒ〜!」
――シーン――
やはり返事がない。
「今日はバヒさんは最前線へと行ってるぞ!」
後ろから声が聞こえてくる。
この声は……
「シーエーさん!」
先ほど俺に読み聞かせをしてくれていたシーエーさんだ。
シーエーさんは俺の教育係だ。
元々はカルバーツの側近としてやっていたのだが、3歳から俺の教育係となり付きっきりでお世話をしてもらっている。
なぜ、シーエーさんが選ばれたかというと、カルバーツのせいである。
俺のことをカルバーツが育てる!とか自信満々に言っていたのだが、カルバーツは最前線への戦争が忙しい。何たって人間の中で一番強いらしく、カルバーツが最前線にいないと崩壊するらしい。ただでさえ押し込まれているというのに……。
そのため、その代わりと言っては何だが、側近であるシーエーさんに俺のことを任せてもらっているらしい。
「さっき呼びかけたんだがな……。聞かないで行ってしまうから……」
それは聞こえなかったので申し訳ない。
「すみません……」
「まあいい……。さっきの場所まで戻るぞ!水魔法を教えないとだからな!」
く〜。
「え〜……水魔法は楽しくないよ〜」
「ダメだ!水魔法をやるぞ!」
「は〜い……」
仕方なく承諾する。
俺は今、火魔法と電魔法しか使えない。
5歳で2種類の魔法を扱えるだけでもすごいことのようだが……。なかなか、残り4つの魔法は扱えない。
白属性に生まれて、恵まれていたのだけどそれはそれで難しい。
元々、サッカーでも体力と気合いヘディングの二台看板でやっていたのだ……。
不器用なのをこの世界でも引きずっている……。
でも、まだ5歳だ。
いつも聞かされている。ダンテさんだって全部の魔法を極めることができたのは20歳の頃なそうだ。
そう考えると俺は優秀だ。
だから、それほどキツいことは言われないし、よく頑張っていると褒められることの方が多い。
毎日、一歩ずつ成長していくことが大事だ。それは昔の世界で教えてもらった経験が今に生きている。
俺たちは先ほどの場所まで戻ってくると、二人で座り込む。
「よし……じゃあ早速始めるか……」
「は〜い」
正直、水魔法は……。難しい。
魔法によって練り方というものが全然異なる。どちらかといったら不向きかもしれない。
シーエーは胸の辺りで両手の間を少しだけ開けると、意識を集中させた。
「水魔法“水玉ウォーターボール”」
シーエーの手の間に小さな水の玉が生成され始めた。
「まずは、ここまで!昨日は初めて水を生成できたんだ!今日からは意識を集中させて留めておくことが課題だな……!」
簡単にやっているようだが、案外難しい。
俺はシーエーと同じように胸の前に手をやり、少しだけ開く。
手に意識を集中させる。
「水魔法“水玉ウォーターボール”」
すると、手から生成された水が小さな渦を巻くように生成され始めた。
「よし!その調子だゲッツァ!」
ここからこの水を大きくして行く。徐々に徐々に……。
大きくさせればさせるほどコントロールが難しくなる。
水の玉はどんどんと大きくなる……。が野球ボールぐらいの大きさになった瞬間に弾かれた。
――――
「くっそ〜!」
俺は体勢を崩すと弾かれた水を顔にかぶる。
「いや、惜しかったぞ!まだ魔技マジックセンスも昨日から上昇しているからバッチリだ!」
シーエーはグッとマークを俺の顔へと突き出した。
この世界には魔法を極めるために必要な要素が3つある。
一つ目は魔力マジックパワーだ。
魔力マジックパワーは魔法を生成する力だ。魔造細胞から生成された魔力は神経を通り外部へと生成される。この魔力が無いと魔法を生むことができない。そして、魔力の力が強ければ強いほど魔法の威力も強大となる。
例えばでいうと、先ほどの“水玉ウォーターボール”でも魔力が強みものと弱いものが放ったものでは全く威力が異なるものとなる。
魔力を極めれば極めるほど魔法の威力が上がることとなる。
その魔力を強くするには様々な方法があるが、生まれた時の才能や身分によるものもあるが基本的には魔法を使えば使うほど魔力は強くなる。
部活みたいなものだ。
サッカーを習っている人は習っていない人より上手い。
しかし、サッカーを習っている中でも個人差が生じるものだ。
プロになるものもいればならないものもいる。
この世界も才能と努力の単純計算の世界で非常にわかりやすくて良い。
だからこそやり甲斐がある。
二つ目は魔技マジックセンスだ。
この力は放出させた魔力をコントロールするための力だ。
先ほどもあったが、俺が“水玉ウォーターボール”をうまく出来なかったのはこの魔技が無かったからだ。
つまり、魔技とは魔法を扱うためのコントロール。技術という部分にあたる。
この魔技が高くないとどれだけ魔力が膨大であっても、上位魔法を扱うことができない。
逆に理論的には魔力がそこまでの人でも上位魔法を扱う者もいる。(基本的には上位魔法は難易度が高く、ポンポンと扱える代物ではない。上位魔法が使える比率で言うと、何万といる中でちゃんと売れてテレビに出ている芸人ぐらいの比率だ)
三つ目は魔量マジックストックだ。
これは単純に魔法が扱える総量のことだ。
この魔量が切れると魔法が使えないし、なくならなければいくらでも魔法が扱える。
簡単に言うと魔法における体力のようなものだ。
この魔力マジックパワー、魔技マジックセンス、魔量マジックストックをそれぞれ上手に扱う事により、魔法が使える。
最初に見たカルバーツがポンポンと上位魔法である氷魔法を使っていたため、感覚がおかしくなっていたが単純に魔法は奥が深い。
そんな魔法を一人一つを極めるのでも大変な中、俺は6つ全て極めなければならない。
でも、単純に才能はある方だと思う。
あとはお得意の努力でどこまでも突き進むだけだ!
「今日はここら辺で終了だ!」
俺は息を荒くして、寝ながら空を見上げていた。
さっきまで青天井だった空がもう夕焼けでこんがりと焼けている。
魔法をやっていると時間が進むのが早く感じる。
部活のようだ……。
「まだ足りないよ〜。シーエーさん!」
「ダメだ!休むことも大切だ!」
「わかりました〜」
結局、水玉ウォーターボールを成功させることはできなかった。
まあ明日も頑張ろう!
でも、水魔法ばっかりやっていたため、火魔法と電魔法も使いたい気分だ……。
俺は視界に入るシーエーさんに視線を向けた。
シーエーさんもムッとした表情をしている。
「火魔法“火玉ファイヤーボール“」
俺はサッカーボールくらいの大きさの火の玉をシーエーさんに向けて放出した。
「ったく……。水魔法“水玉ウォーターボール”」
シーエーさんにあたる直前にシーエーさんは魔法を放出した。
大きさはバランスボールくらい……。
――――――
無論、俺の“火玉ファイヤーボール“は鎮火され、俺はその水をかぶることとなった。
「ブッハ〜!」
シーエーさんは呆れた顔をしている。
「なんとなく仕掛けてくると思ったぜ……」
「ごめんなさい……」
まだまだ仕掛けたいところではあったが、しょうがない今回は見逃す事にする。
自分より強い人がいると勝負を仕掛けたい性格は治っていないみたいだ。
「よ〜し……そろそろ行くぞ!今日は一ヶ月ぶりにカルバーツが帰ってくる日だぞ!」
カルバーツが……。
俺の胸は心が踊る。
「え〜!じゃあ早く帰らないとだ!」
「そうだぞ!夕飯の支度を手伝ってくれよ!」
「おう!」
シーエーさんはこう見えて料理もうまい。
とにかくどのメニューも絶品だ。
今日は胸が踊ることが多い!




