59、ウィングサーペンス
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
「あれは……ウィングサーペントだわ!」
ラークは魔獣から目を離さずに後退りをする。
「ウィングサーペント……?」
「ええ!ウィングサーペントよ!授業で習ったことあるでしょ?ウィングサーペントの特徴としては蛇としての圧倒的な筋力と……どんな生物も死に陥れるという牙の毒よ!」
毒かよ……!
解毒ポーションの持ち合わせは少ないぞ!
「どうするんだラーク?」
「どうするって……もう逃げるなんて無理よ!戦うしかないよ!」
気がついたらウィングサーペントは尻尾を高らかと上へと掲げていた。
これは……攻撃のモーションだ!
「来るわよ!避けて」
ラークは横へと飛び込むと木の後ろへと身を潜める。
「くそ……電魔法“電瞬足”」
俺は足へと電魔法を流した。
ウィングサーペントは隠れたラークは無視をして俺に焦点を合わせた。
そして、ウィングサーペントは尻尾を上からまっすぐに振り下ろした。
――――バコーン――――
森には凄まじい衝撃音が響き渡った。
「ゲッツァ君!」
「俺は大丈夫だ!」
俺は電魔法のスピードを使い緊急回避を成功させる。
そのままのスピードの勢いを使い背中に収めていた魔槍を引き抜いた。
「電魔法“電槍一閃」
俺は電魔法を魔槍へと流すと、“電瞬足”であげたスピードのままウィングサーペントの胸元目掛けて突き刺した。
――――キーン――――
全くと言っていいほど手応えがない。
槍先を見てみるとウィングサーペントには多少の血しか流れていない。
ウィングサーペントからしたら爪楊枝で刺されたぐらいだろう……。
致命傷からは程遠い。
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
血が流れたウィングサーペントは荒れ狂うと自分の体をすごい勢いで回転し始める。
「うわあああ!!!」
――――ゴン――――
俺はその回転の勢いで剥がされるとその勢いで木に頭をぶつけた。
これは……効くな……。
「ゲッツァ君!」
ウィングサーペントは伸びている俺をすぐに目につけた。
その瞬間、俺を目掛けて大きな口を開け、一気に飛び込んでくる。
――――グガアアアアア――――
「氷魔法“氷壁“」
飛び込んでくるウィングサーペントと俺の間は氷の壁で包まれた。
――――ガンッ――――
――――グガアアアアア――――
ウィングサーペントはその氷の壁に当たると氷は崩れた。
ウィングサーペントは俺から標的の目を写した。
「こっちよ!氷魔法“氷槍“」
ラークは氷の槍を作り出すと、ウィングサーペントの顔面目掛けて放つ。
しかし、ウィングサーペントは素早く身を動かすと氷魔法を回避する。
あのクソヘビ……。
動きも早いのかよ!
「ゲッツァ君……私が惹きつけておくから今のうちに回復ポーションを……」
「おう……!」
たまたま、身につけていた回復ポーションを俺は1瓶開ける。
壊れにくい容器を買っておいてよかった……。
この容器じゃなかったら今の衝撃で壊れていた。
――――ゴクゴク――――
瓶の中身を一気に飲み干すと俺の体は回復し始めた。
この回復ポーション以外はウマオに置きっぱなしだ。
取りに戻る時間なんてない!
これが正真正銘最後のポーションだ!
「氷魔法“氷槍」
ラークの魔法はウィングサーペントの胴体には突き刺さっているのだが、そこまで奥に刺さることがない。
そのため、ウィングサーペントの勢は止まることがない。
魔法のうち終わりのラークを狙い攻撃を仕掛けてくる。
ラークも“氷壁“や目を狙った“氷槍“などで視界の邪魔をしたりしてなんとかウィングサーペントの攻撃を間一髪でかわしている。
ラークは氷魔法が扱えるようになってまだ日が浅い。
そのため、コントロールがだんだんと雑になっていることが分かる。
これは俺が早く向かわないと!
俺は全開した体を起こすと、電魔法を足に流してスピードに乗って戦線復帰。
ラークと戦うウィングサーペントの後ろから襲いかかった。
「ゲッツァ君……デカい魔法をお願い!」
俺が襲い掛かろうとした瞬間にラークから指示が飛んだ。
デカい魔法……。まあ、なんでもいいだろう……。
「水魔法“水竜“」
少し卑怯ではあるが俺はウィングサーペントの背後を取ると、俺の水魔法最大級の“水竜“を撃ち放った。
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
“水竜“を背後から喰らったウィングサーペントは叫んだ。
でも俺の魔法じゃ傷は付かないだろうな!
大魔法のおかげで俺の存在に気がついたウィングサーペントは反対側にいた俺の方を向いた。
「ナイス!氷魔法“氷槍“」
ラークは氷の槍を直接手で持つと、ウィングサーペントを目掛けて飛びかかっていった。
――――グサッ――――
ラークは“氷槍“を直接、ウィングサーペントの翼を目掛けて突き刺した。
その攻撃はウィングサーペントの右翼を貫通した。
――――グガアアアアア――――
先ほどよりも大きな叫び声をあげてウィングサーペントは苦しんでいる。
その隙に俺らは近くにあった木の上に集合することができた。
「ナイス!今、翼をやれたことはでかいわよ!もうこれであいつは飛ぶことができなくなったわ!」
そういえばこいつはまだ飛んでいないだけで空を飛べるのだった。
俺はそこまで頭が回っていなかった。
さすがラークだ……魔獣相手でも冷静に戦っている。
「で……これからどうする?俺の攻撃は全く効いていないみたいだし……」
「ゲッツァ君の攻撃だけでなく私の攻撃も全然効いていないわよ!せっかくの氷魔法なのに……もっと魔力があればなんだけど……」
いや、ラークは普通に互角の戦いをしている。
こいつを倒すには俺の活躍が肝になってくる。
「鱗は硬くて全然刺さらないわ!」
「ああ……そうだ、どこか鱗が剥き出しになっている部分とかないのかよ!」
するとラークが何かを思いついたような表情をした。
「何か思いついたのか?」
……………………。
しかし、ラークは黙っている。
「思いついていないのか?」
「いや、思いついたんだけど……ちょっと危険すぎるような気がする」
ラークの表情は険しい。
「大丈夫だ!俺だって多少の無理は承知だ!」
俺は真剣にラークの目を見つめた。
「分かったわ!これから作戦を伝えるわね!」
ウィングサーペントは木に隠れた俺らにまだ気がついていないらしい。
そこらで暴れ回っている。
「ウィングサーペントの鱗が張り巡らせていない唯一の場所……それは口の中よ!」
「口の中……?でも……牙には大量の毒があるんだろ?」
「そうよ……でもあいつを倒せるとしたら口の中を狙って一撃で頭を吹っ飛ばすしかないわよ!」
「一撃で……」
無謀なような作戦だが、倒すにはこれしかないらしいな!
口の中か……。
「でも、毒があるわ!だから……ウィングサーペントが口を開いた瞬間に口に触れないように顔の真ん前で大魔法をぶっ放すしかないわ!」
「触れないようにな……わかった!その役は俺がやろう!」
こんな危険な役目はラークにはやらせられない!
俺が引き受けよう。
「いや……私がやるわよ!」
ラークもその役を買って出た。
「いや、俺がやる!これは譲らねえぞ!」
俺はもちろん引く気はない。
ラークを危険な目にはしたくはない!
「この役は誰でもいいって訳では無いわ!正直にゲッツァ君の今ある魔法では多分、ウィングサーペントを一撃で倒すほどの火力は出ないと思うの……。多分、確実に殺る手段としては私の氷魔法じゃなければならないの!」
俺はその言葉に何も言えなかった。
俺の実力不足で危険な役をラークにやらせるなんて……。
「でも……」
「でもじゃないわ!これは命がかかっているのよ!2人が確実に生き残る選択を選びましょ!」
ラークの意思は強い。
でも、そんな危険なことは俺はやらせられない!
何か新しい方法を……。
俺は真剣に頭を巡らせた。
俺はふと自分が持っている魔槍を見た。
――――――――
そうだ……。
魔槍だ……。
「ラーク……この魔槍にラークの氷魔法を込めてくれ!」
「え……?」
ラークは困惑している。
「だから……俺の魔槍に氷魔法を込めてくれ!そうすれば氷魔法の火力で俺が攻撃することができるだろ!」
「でも……それじゃあチャンスは一回わよ!」
「いや……どっちにしろこんな無謀な作戦じゃチャンスなんて何回もない……。それに俺の実力じゃ悔しいけど、ウィングサーペントの隙を誘い出すことは難しそうだ……だからラークが囮とした方が隙を作りやすいだろ!」
「…………たしかにそっちの作戦の方が良いわね!」
なんとか納得してもらった。
「それじゃあ早速作戦に移るわよ!魔槍を貸して」
俺はラークに魔槍を渡した。
「氷魔法“――“」
俺の魔槍はラークの魔力を帯びて凄まじい氷の槍へと化した。
俺は魔槍を手に持った。
「じゃあ早速行くわよ!」
「おう!」
ラークは木陰から飛び出した。
すると、ウィングサーペントはすぐに目をラークにつけた。
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
「氷魔法“氷壁“」
ラークは氷の壁を使ってウィングサーペントを視界から外す。
その光景を俺はひっそりと見守る。
ラークから指示が出るまではここで待機だ。
隙ができた瞬間を絶対に見逃さない!
「電魔法“電瞬足”」
俺は電魔法に魔量をコントロールできる最大まで注ぎ込んだ。
俺の足は電力に包まれ、今にも飛び出しそうな勢いだ。
「氷魔法“氷壁“」
――――グガアアアアア――――
ラークとウィングサーペントの攻防戦は続く。
ラークは魔法や体を器用に使いこなし攻撃をうまく避けながら隙を誘い出す戦い方を行う。
見ていても無駄な動きがなく、魔量が尽きるまではラークが怪我することは無さそうだ!
――――グガアアアアア――――
ウィングサーペントは体を最大限まで伸ばし切ると体のスナップを今まで異常に効かすとものすごいスピードを帯びてラークへと突っ込んでいった。
その瞬間をラークは見逃さなかった。
「ゲッツァ君!」
指示が飛んできた。
「氷魔法“氷壁“×3」
ラークは“氷壁“を三層作り出すと強固な守りで固めた。
ウィングサーペントはなかなか攻撃の当たらないラークに痺れを切らしたのだろう……。
だが、最大の攻撃には隙がつきものだ!
――――バリンバリンバリン――――
氷の壁は次々と壊されていく。
だが、徐々にスピードは落ちていく。
ここだ……。
俺は最大限のスピードで飛び出した。
――――――――
俺はウィングサーペントの目の前へと移動した。
ウィングサーペントが最後の氷を割った時にはスピードは失速している。
そして、口をアングリと開けている。
目の前にはウィングサーペント……。
「ウォオオオオオオオオオ!!!」
俺は雄叫びを上げながら魔槍を槍投げのようにして振りかぶった。
目の前には大きな口だ。
そこに狙いを定めて――――
俺はラークの氷魔法を纏った魔槍を投げ放った。
いった!
ラークもこの瞬間に勝利を確信していた。




