58、魔界へ2
俺らは宿へと向かう。
とりあえず、今日は休み作戦会議を行うこととした。
宿は少し狭めだ。
ベッドが2つ敷き詰められているだけで他は何もない。
ラークはスペースがないためベッドの上に地図を広げた。
「明日からついに魔界ね……」
ラークは仮面を取るといつものラークの表情だった。
先ほどまですごい緊張感が走っていたからどんな顔をしているのやらと思っていたが……。
「魔獣がどうのこうのとか言っていたけど……大丈夫なのか?」
「問題はそこよね!」
サナヒラは先ほどから魔界から帰省する冒険者が多くなっている気がしている。
多分その原因としてはその魔獣というやつが問題だろう……。
「魔獣がこんなところに現れるなんてな……」
「ゲッツァ君は魔獣を見たことがあるの?」
「ああ……何回かな……でも、シーエーさん曰く最前線かその近くでしか会うことがないって言っていたぞ!」
「それってことは……最前線が……」
最前線が後退していることは聞いていたがまさかこんなところまで後退していることはないだろうな!
世界地図には魔界のは半分くらいまでは?表記だが少なくともサナヒラからずっと北に見えるシーフラットまでは地図表記がされている。
シーフラットは俺は以前訪れたことがあってホールグリットから船を乗り換えた記憶がある。
少なくともシーフラットまでは最前線が後退しているとは考えにくい。
「大丈夫だろうな!魔獣は多分かなり迷い込んできたのだろうな!」
「そう……なのね!」
ラークは不安そうだ。
俺はラークの方にそっと手を置いた。
「大丈夫だ!とにかく最前線にいち早く行くことを考えようぜ!」
「うん!ありがとうゲッツァ君!」
ありがとうは俺も言わなければいけないのだが……。
ここまで楽しい経験をさせてくれてな!
「じゃあ明日出発ね!」
「そうだな……できるだけ魔獣を避けていこうぜ!」
「そうね……。でも戦うことになったら全力で戦うのよ!」
「おう!」
俺らは一通り意見がまとまると今日は就寝することとした。
次の日の朝、俺らは準備を整えた。
服を着替えると魔槍を背中に収める。
そして、外へ出ると街の外に待機していたウマオを連れ出し、魔界方面の出口へと向かった。
大量の負傷する冒険者とすれ違う。
それだけで魔獣にやられたのだとなんとなく察する。
魔界方面の出口へと辿り着くと、街を出ようとする者はほとんどゼロに近かった。
「こちらでライセンスのチェックを行います!」
出口の近くに街の管理人的な人物に俺はライセンスを見せると、「はい。確認いたしました!」と言って通ることに成功した。
俺ら2人はウマオへと乗り込んだ。
目の前には魔界の大地だ。
魔界方面から吹かれる風に当たると俺は凄まじい緊張感に襲われた。
ここから……ついに魔界か!
改めて入るとなるとすげえ緊迫感があるな……。
自然と手が震えてくる。
だめだ……俺が強くいなければ!
俺は必死にウマオの手綱を握りしめる。
が、それでも手の震えが止まらない……。
――――ギュッ――――
俺の手が何かに支えられる感じがした。
「大丈夫だよ!私がいるよ!」
ラークが後ろから俺の腕を優しく握ってくれた。
気がつくと俺の腕の震えは詰まっており、力が入るようになっている。
「ありがとうラーク!」
俺は1人じゃないんだ!
ラークがいる……。
俺らは強い!自信を持っていこう!
「ラーク!じゃあ出発するぞ!」
「お〜う!」
ラークは右手を掲げると、俺はウマオの手綱を思いっきり引くとウマオは足に力を入れると思いっきり地面を蹴り上げて魔界へと進んでいった。
俺らは今は森の中へと入っている。
サナヒラの目の前には森が広がっている。
サナヒラからダークニールまで行くにはこの森を越えなければいけない。
だが、ウマオはそんな森をものともせずに右に左に足を動かし木をかわしていく。
「なんだか……魔物に出会わないわね!」
「そうだな……ちょっと不気味だな!」
人間界でもその辺を走っていると魔物というものはゴロゴロといる。
だが、魔界に入ってから俺らはまだ、魔物に一回も出会っていない。
少し不気味だ。
「ちょっと!ゲッツァ君……ウマオを止めて!」
ラークが突然大声で叫んだ。
俺は手綱を引きウマオを止めた。
「どうしたんだラーク?」
「あれを見て!」
ラークはそう言うと、右側を指差した。
俺は目の焦点を合わせてラークの指先の方面を見た。
――――――――
「え……なんだあれ?」
そこで俺が見た光景というのは驚くものだった。
そこには何百本と倒されている木々達と、魔物の大量の死骸だった。
ちょっと気持ち悪い……。
でも驚いたのはその量だ。
多分、数百匹の魔物達が死んでいる。
魔物達というのはよく仲間割れというものをしてこのように魔物の死骸と出会うのは別に珍しいことではない!
でも、あんな量は異常だ!
「あれは……どういうことだ?」
「わからないわ!でも、多分だけどあれを倒した魔物がいるってことでしょ?」
俺らはウマオをその辺の木に引っ掛けると魔物の死骸が転がっている場所へと向かった。
遠くから見ても気持ち悪かったが近くから見たらもっと気持ち悪い。
様々な魔物が殺されている。
それも圧倒的なほどに……。
「これは……殺されたが全部一緒わね……」
ラークはそう言った。
「それって……全員がおんなじ奴にやられたってことか?」
「ええ……多分そうね……」
俺とラークの背中は凍りついた。
何かを思い出したのだ!
「これって例の……」
「そうね……多分噂の魔獣の仕業よ!」
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
森中にとんでもない生物の叫び声が聞こえてきた。
――――ドン――ドン――ドン――ドン――――
とんでもない足音が聞こえてくる。
それも……こちらへと近づいてくる。
「ラークこれって……」
ラークの顔も青ざめている。
それだけの強敵ということだ!
「ええ……来たわよ!魔獣が……」
――――ガルロオオオオオオオオオオ――――
俺らの目の前には巨大生物がいる。
巨大蛇のように長くしなやかな胴体に鋭い牙。
背中には鳥のような翼が生えている。
そして、金属のような光沢を放っている鱗。
顔は俺らを一口で飲み込めるように大きな口に牙。
その生物は空気を一瞬で支配したようだった。
俺とラークはその魔獣とゆったりと目を合わせた。




