56、ライセンス2
俺らは半年前に行った窓口に再び行くとライセンスを受け取ることに成功した。
「はああ〜……負けたぜ!」
「いやあ、俺もここまで苦戦したのは初めてだったよ!」
シュバは自慢げに語っている。
なんだかんだ半年もシュバと一緒にいるんだ。
最初は少し避けていたが……今や学校で唯一話せる人間だ。
それに、魔法のことになると2人とも熱く話してしまう。
まあ、戦い方に関しては全く盛り上がらないのだがな……。
まあ、今日はここで解散だ!
嬉しいことに今日でちょうど半年。
宣言通りにライセンスを獲得できた。
これで……やっと魔界へと行ける。
「じゃあここらでな!」
「おう!お前らも魔界へ行くんだろ?」
「おう!」
「どこかで会ったら仲良くしようぜ!」
半年も一緒にいれば内情などシュバにもなんとなく話してある。
まあ、言ってはいけない情報は言っていないが……。
それにしてもシュバも魔界か……。
シュバの魔界に行きたい理由はただただ、強い魔物を倒したいというものらしい。
まあ、魔界に行きたい立派な理由だ。
シュバみたいな戦力が最前線にきてくれたらカルバーツも喜ぶだろうな!
シュバと別れると、俺は真っ先にいつもの部屋へと帰宅した。
「ただいま〜!」
俺は部屋の扉を勢いよく開けた!
「おかえり〜。なんか嬉しそうだね!」
そこにはいつもの光景。
笑顔で迎えてくれたのはもちろんラークだ!
半年前に比べて髪が伸びていてボブだった髪の毛は今はロングだ。
そして、少し大人っぽくなったのかな?
清純派美人としての魅力が上がっている気がする。
そして、半年間欠かさずに作ってくれた料理の腕も多分上がっている。
「今日……なんと……試験に合格したんだ〜!」
俺はラークにライセンスを見せびらかした。
「お〜頑張ったじゃない!」
「まあ、結構ギリギリだったけどな……」
「ギリギリでもなんでもいいのよ!今日はとにかくパーティーよ!」
半年間も一緒の部屋に住んでいるのだから俺らは多分前よりも仲を深めている。
俺も前まではなんだかんだ敬語を使っていたと思う。
が、今は身分関係なく同級生として楽しく話せている。
そして恋愛でも………………発展していないな。
残念ながらな……。
まあ俺は変わらず好きだよ!
でも多分、ラークがそう言う感じじゃない気がする。
まあ、ラークからしたらそんなことを考えている暇はないだろうな。
相当な覚悟で水の国を飛び出してきたのだ。
そんな感情は持っていないだろうな!
「今日はギルドでクエストはしなくていいのか?」
「今日はいいのよ〜。宿は今日でおしまいだし、お金は貯金ができるぐらい貯まっているし……」
本当にラークは頑張ってくれたと思う。
毎日、朝早くからギルドへと行きお金を稼いで帰ってくる。
なんならあまりの強さに巷では有名なのだ!
“水色仮面“という少女が!
“水色仮面”とはラークの異名的なものである。
常に仮面とフードをかぶっていることから最初は“フード仮面”だったのだが、
戦いの最中にフードが外れた時に髪色が水色だったことから異名が途中から変更されたらしい。
今や“水色仮面”はギルドの稼ぎ頭らしいな。
「そうだ!今日はゲッツァ君もこのあと暇でしょ?」
確かにな……。今日は試験だけで帰ってきたのもちょうど昼時。
お互いに久しぶりの休日というやつか……。
「暇だよ〜」
するとラークは目を輝かせた。
「なら……今日のパーティーのお買い物にでも付き合ってもらおうかな!」
すっかりラークは買い物に慣れてしまっている。
昔、屋台で買い物をしただけで興奮していた時が懐かしいな。
もうすっかり主婦だ。
「いいよ!」
もちろん断る理由がない!
「よし、じゃあ準備をしたら早速出発しよう!」
ということで……準備が整ったため早速出発だ!
外ではラークの素顔をみることができないのがちょっぴり残念だが、まあ2人でいるだけで楽しいしな!
そこから俺らは思う存分、買い物を楽しんだ!
もう爆買いの爆買いだ。
食べ歩きもしたしちょっとしたゲームなんかも楽しんだり、絶対に買わないであろう骨董品なんかも見たりした。
もうデートだろうなこれは……。
いつもは魔物がどこから襲って来るかわからないような状況のため、冒険感が強いが、気を抜いて楽しむことができるなんて素晴らしい。
「疲れた〜!」
気がついたら日暮れくらいに部屋に戻ってきた。
そこから本格的に買い込んだもので料理の開始だ。
俺も手伝おうとしたのだが、途中で「ゲッツァ君はいらない」というラークの言葉で解雇されることとなった。
俺の手際がよほど酷かったのだろうな……。
料理はどの世界でもしたことがないからな!
徐々に美味しい匂いが漂ってくる。
俺は一つだけつまみ食いなんかもしてみる。
が、当然怒られてしまう。
そして……ついに完成だ!
肉に魚に野菜に……もう大量だ!
「ちょっと作りすぎちゃったかも〜……」
うん……。作り過ぎではあるな!
「大丈夫、残さず食べるから……。いただきま〜す!」
俺は食材たちを胃袋へと次々に運びに運ぶ。
どれもこれも新鮮で感動もんだ!
それにラークの味付けも絶妙だ。
文句のつけどころがない!
♢ ♢ ♢
俺のお腹はあっという間に満腹へとなった。
が、なんとか完食!
そして、流れるように温泉へと直行!
毎日、水魔法を使ったシャワーなので温泉の日は特別だ。
久々に入る。
う〜ん……やはり温泉は気持ちが良いものだな〜!
それに、明日からはこの火の国を出発だ。
当分、温泉に入ることがない!
温泉のお湯を体全身で感じ取った。
♢ ♢ ♢
温泉から上がると部屋に戻ると、2人で明日の予定について話す。
久しぶりにテーブルの上に世界地図を広げる。
「明日はついに出発ね!」
「おう……なんだかんだ短かった半年間だったな!」
もうこの生活が終わってしまうというのは少し寂しい気がする。
なんたって共同生活はとても楽しかったし幸せだったしな!
でも、こういう時のラークの真剣な眼差しを見ていると早くカルバーツに会わせてあげたいという気持ちになる。
ラークの思いが早く報われるように……進む方が大切だ!
「ここから魔界までは……多分、ウマオに乗って3ヶ月といったところかしらね……」
地図を確認して分かる通り、火の国から魔界に入るまでもだいぶ離れている。
ここから3ヶ月は野宿の機会が増えてくるだろう……。
なんか残念だな。
「そして、3ヶ月がやっと魔界へと……」
「そうね……気合いを入れないとね!」
俺の今のレベルが魔界で通用するのか……。
いや自信を持て俺はこの半年間も魔法と真剣に向き合ってきたのだ!
大丈夫だ!
「ゲッツァ君……大丈夫そう?」
ぼーっとしていた俺に声をかけてくれた。
「ああ!準備バッチリだ!」
「なら大丈夫そうね!」
「じゃあ明日に向けて……早く寝るか?」
と俺は提案したのだが……、
「え〜……せっかく最後なんだからさ今日くらい夜更かししよ!」
――――ドキッ――――
上目遣い……。
「よし……今日は存分に夜更かしでもするか!」
「やった〜!」
ラークは存分に喜んでいた。
上目遣いなんかされたらそりゃあ……無理だろ!
「なんか久しぶりだね〜!前はよく夜に抜け出して夜更かししていたのにね!」
「そうだな〜!また、海とか行きたいな〜!」
「海〜!懐かしい……また行こうね!」
「うん!」
とか会話をしながら俺らの夜は過ぎていった。
結局は買い物や色々でお疲れだったラークは椅子で寝落ちをしてしまっていた。
俺はそっと寝落ちしたラークをお姫様抱っこをするとベッドまで運んでやった。
こうやって抱えてみるとわかる……非常に軽い。
圧倒的な強さを持つラークでも女の子なんだなって思った瞬間だ。
ラークの寝顔は幸せそうだ!
これから魔界へと行くのにここまで幸せそうな顔ができるかね?
俺はこんな顔がずっと守っていけたらいいな!
って心から思っている。
いや、守っていけたらではなく、守っていくのだ!
俺は密かに決心をした。
ラークをベッドに下ろし、掛け布団を優しくかけてあげた後に俺も無事に就寝だ。
ふかふかなベッドは俺を一瞬のうちに眠りへと吸い込んでいった。
明日からついに……魔界へと向けて出発だ!
♢ ♢ ♢
――――ツンツン――――
「ん……ん…うん……」
俺が目を開けるとラークの顔があった。
なんか雰囲気が違うような……。
「ゲッツァ君起きて……出発するわよ!」
俺は起きてからすぐに顔を洗った。
冷たい冷水を顔に浴びると目はすっかり冴えてくる。
「ゲッツァ君!朝ごはんできたわよ〜!」
キッチンの方からラークの声が聞こえてきた。
「は〜い……」
俺はキッチンの方へと向かって行く。
――――――――
え………………。
俺は驚いた。
なんとラークの髪型が…………ボブになっていた!
「あれ……髪……?」
「そう!今日切っちゃったの……。今日からまた気合いを入れ直さないとね!」
うん……、まあロングも似合っていたけどやっぱりラークといえばボブヘアだよな!
「どう……変かな?」
「いや……似合っているよ!」
俺は女の子にそんなこと言うなんて……少し恥ずかしかった。
「そう?それならよかった!」
ラークも満足そうだ!それなら言った甲斐があったな。
俺は朝食を食べると、準備を整えて半年ぶりのチェックアウトをした。
まじで、半年分の宿賃を払うのってだいぶ稼がないとダメだもんな……。
それに俺は誕生日プレゼントまでもらってしまったのだ!
これはいつかきっちりお返しをしないとだな!
――――ヒヒーン――――
ウマオも元気そうだ。
ラークは毎日のように面倒を見にきていたようだが、俺は半年ぶりのウマオだ!
ウマオに乗り込むと俺の股関節はウマオにフィットした。
やはり、馬はウマオでないとな!
その後、ラークを後ろに乗せると……いざ!魔界に向けて出発だ!
火の国は非常に良い国だった。
こんな巨大都市はもう当分はくることがないだろう……。
俺らはしっかりと目に焼き付けると火の国を後にして、南西の魔界方面へと出発した。
出発してしばらくすると、ラークが「ここらで止まって!」と指示が出た。
なんだ……?どうしたのだろう?忘れ物か?
ラークはゆっくりとウマオから降りた。
「ゲッツァ君……見て欲しいものがあるんだ!」
突然そんなことを言い始めたので俺は少し困惑した。
「うん……みるよ……」
カタコトな言葉で俺は返した。
すると、ラークは何やら集中し始めた。
この時にラークの姿が少しカルバーツの影を見るような感覚が俺にはあった。
何かとんでもないことをしそうだぞ!
ラークは両手を前の方へと突き出した。
「私の半年の成果!氷魔法“氷壁”」
氷魔法だと……?
――――――――
ラークが魔法を放つと目の前にはすごい音を立てて大きな氷の壁が現れた。
「ふ〜う……」
ラークは一息ついて俺に笑顔を向けた。
自慢気だ。非常に。
「え……ラーク……氷魔法を……?」
「そう……。ゲッツァ君が少年学校に入っている間にね。ある日クエストをしていたら出来るようになっちゃって!」
嬉しそうだな……。
氷魔法は水魔法の上位魔法で非常に希少な存在だ。
なんせ相当な魔技がないと氷魔法をコントロールすることはできないからな!
でも……ラークならあり得るか。
元々、魔技は凄かったし……当たり前っちゃ当たり前か!
「これを見せたかっただけね!」
そう言うと再び俺の後ろに乗り込んだ。
「なんか……また差をつけられちゃったって感じだなあ……」
俺としては悔しさは多少ある。
「それはそうよ!これからもゲッツァ君からドンドン差を開いて行くからね!」
「いや……すぐに追いつくから!」
「やれるもんならね〜!」
なんて会話をしながら魔界方面へと旅立って行った。
家事やクエスト、お金稼ぎやウマオの世話をしながらさらに氷魔法までも……。
正直にラークに顔が上がらないな……。
俺ももっと頑張らないとな……。
俺は少し自分の存在がちっぽけに見えてきながらもまだ見ぬ大地へと足を進めて行った。




