52、宴2
夜になると宴が開かれた。
村の住民だけでなく近隣の村の住民も集まってきて盛大に行われた。
多分、俺らがリュウガ一家を倒したことによって解放された村の住民たちだろうな……。
俺は3日間も何も食べていなかったので宴で出される食材を喰らいに喰らいまくった。
うまい!
全部の食材が美味く感じる。
俺の腹も心も満たされていく。
俺が暴飲暴食を行なっていると美しいお姉さんが3人やってきた。
どこかで見たことあったような……あ、あの館の牢で肌けていたお姉さんのうちの3人だな。
ラークの手によってよくは見えなかったけれど、記憶はしていた。
「ゲッツァさーん。助けてくれてありがとー!」
突然、1人のお姉さんが俺へと飛びついて来た。
「ほんとよ。大きくなったらお嫁にもらいに来てちょうだい!」
すると次々と飛びついて来た。
「いやよ〜。私をお嫁にもらってちょうだいよ〜!」
俺はいきなり囲まれ始めた。
「ちょっっっと………」
やめてくれえええ!!!
こんなのラークに見られたら……最悪だ!
やめてくれ!
俺は急いで振り解くと、その場から脱走を図った。
「どこへ行っちゃうのよ〜ゲッツァさ〜ん!」
当然、追いかけてくる。
そこから俺は追いかけっこが始まった。
その光景を遠くからエマとエルロン兄弟は見ていた。
「まったくゲッツァはモテモテだな。お前は行かなくていいのか?」
「別にいいですよ」
エルロンはからかった口調でエマに言うも上手に流されてしまった。
その2人が話す光景をラークは静かに後ろから見ていた。
彼女らを巻き、一旦落ち着くと俺は街の隅にあるベンチに移動して寝込んた。
「ハアハア………。もう疲れた。」
なんだかんだリュウガよりも強敵だったかもしれないな……。
まあ、多分ラークに見られていないから大丈夫だろう。
変な誤解はされたくないからな!
そうしていると後ろからエルロンがやってきた。
「ようゲッツァ!モテモテだったな!」
やっぱり俺……今のはモテていたんだよな……。
ちょっとだけ嬉しくなった。
前世では経験できないことだったからな!
この世界の俺も……顔は良い方ではない気がするが……まあ、それでも良しとしよう。
でも、モテるよりも俺にとって……1人の人からの愛情の方が欲しいな。
「おかげさまでですよ……。ほとんどラークがやったていうのに……」
「そういえば、ラークちゃん。また仮面かぶっていたよ!何か事情でもあるの?」
「そうなんですよ……ラークの顔はなるべく見られちゃいけなくてですね……」
まあ、エルロンさんなら行っても大丈夫そうだが、一応伏せておこう。
「まあ、いえない事情があるなら無理に聞かないけれどな……」
「ありがとうございます!」
優しい人だエルロンさんは……。
「で、ずっと聞きたかったことがあったんだけど、なんで俺らの村を助けてくれたんだ?」
なんでだっけ?
ああ……エマが襲われているのに直面したからだったな。
「旅の途中でこの村に寄って、なんとなく見逃せなかったんですよ!」
「そうなのか……。改めていうよ!本当にありがとう……」
エルロンさんは俺に深々と頭を下げた。
「先ほど、ラークちゃんにも言ったんだが、この村は俺が唯一魔法が使えて、俺が守るべきだったんだ……本当に自分の無力さを痛感するよ」
「いやいや……そんな……頭を上げてください!もう無事だったので……これからはエルロンさんが守って行ってください!」
「おう!」
エルロンさんは力強く返した。
「それでお前たちはなんで旅をしているんだ?」
そうだったそうだった。
いろいろなことがありすぎて旅の目的を忘れるところであった。
「実は俺ら魔界の最前線を目指して旅をしていて……」
「え?!」
エルロンさんは口をあんぐり開けて驚いた。
「魔界の最前線か!その年齢でか……すごいな。じゃあもうどっちかはライセンスを取得したってわけか!」
「ライセンス……?」
俺は何もピンとこなかった。
「ライセンスだよ!魔界へ入るためのライセンス。たしか少年学校を卒業すると取れるんだったよな……しかも、今12か13歳だろ?早期卒業は火の国だけの特権だからな……」
え……?
「魔界って誰でも入れるというわけではないのですか?」
その俺の発言にエルロンさんは――は?みたいな顔をした。
「もしかして……ライセンスを持っていないのか?」
俺は小さく頷く。
「じゃあ入れねえぞ!多分……」
え〜〜〜!!!
俺は急いでラークをこの場へと呼んできた。
ついでに、ラークと話していたエマもついて来た。
そして、魔界へ入れないという話をすると、ラークも俺と同じ反応だ。
一国の姫様なのにこの情報は知らなかったのだな……。
まあ元々、魔界になんて行かなくて良い人物だったしな……水の国の授業でも習っていなかったしな……。
詳しくエルロンさんに聞くと、少年学校を卒業時に取得できるということ。
ライセンスはライセンス取得者1人につき同行者4人が魔界へと入れるルールとなっているらしい。
そして、少年学校を卒業していない場合でライセンスを取得したい時はちゃんとした試験を受けなければいけないらしい。
それなら俺もそちらの試験を受ければいい!と思っていたが、その試験は15歳以上からでないと受けられないらしい。
俺とラークは目をゆっくりと合わせた。
終わった……。
絶望感に俺らは襲われた。
俺は別にいくらでも待てるのだが、ラークは15歳になったら女王の見習いとして政治に参加しなければならない。
ライセンス習得が15歳以上なら15歳までにカルバーツに会うことは困難だ……。いや、絶対に無理だ。
「何か方法はないんですかエルロンさん!ライセンスを習得しないで魔界に入る方法とか……」
「ねえよそんなの!魔界に入るには少年学校を卒業するぐらいしか……」
少年学校を卒業なんて……俺らはもう12歳だ。
これからまた入学なんてできないしな……。
「どうしますラークさん……」
「考えましょうゲッツァさん……」
方法は……何よなあ……。
せっかく苦労してここまで来たのにな……。
「なんだよお前ら!そんなに魔界に早く行きたいなら大人しく少年学校に入れよ!」
エルロンさんは無茶苦茶な提案をしてきた。
「俺ら12歳と13歳だぞ!これから入学なんてできるわけないだろ!」
すると、エルロンさんは不思議そうな顔をした。
「少年学校は……何歳でも入学できるぞ!」
ええ…………!!
俺とラークは再び目を見開いた……。
「ほんと……か?」
「ああ、当たり前だろ!それで早期卒業をすれば早めにライセンスを取得できるだろ!」
そ…そ…そ……早期卒業?
そんな制度があったのか?
「ラーク……早期卒業なんてできるのか?」
「できないわよ!水の国の少年学校では……」
すると、エルロンさんは何かに気がついたようだ。
「ああ、お前らは火の国の少年学校のことを知らないんだな!そういえば……ゲッツァも水魔法使ってたしな……。でも、水属性なら火の国の少年学校は入れないか……」
俺はその発言にピンと来た。
俺が水属性なら……な!
「火魔法“火玉”」
俺は手元から火を出しみんなに見せびらかした。
「あれ……?」
エルロンさんは不思議そうに声を上げた。
「俺は実は……白属性なんだ……」
…………………………。
「ええええええええ!!!!」
基本的な反応だ。
俺はラークと静かに目を合わせて頷いた。
そこから俺は順を追って経緯などを説明した。
ラークが姫であることや、国を出て魔界の最前線にいる父に会いにいくことなど……。
もうここまで隠し通せない気がしたのもあったし……。
それにエルロンさんとエマは信頼できるような気がしたってのもある。
当然、めちゃくちゃ驚いていた。
「白属性って本当に存在したんだ〜」と何度行ったことか……あの兄弟は……。
そして、俺らの話が終わった後に、エルロンさんは火の国の少年学校の話をしてくれた。
火の国の少年学校は入学は15歳以内だったらいつでも入れるらしい。
その辺は水の国と違うところだな……。
そして、火の国の少年学校では弱い方からランク1〜ランク9という形で組分けされているらしく年齢関係なく実力で分担されているらしい。
ランク9まで上がり、見事に卒業試験を突破した者にライセンスが渡されるらしい。
早期卒業とはこの卒業試験を15歳になる前に突破することを言うらしい。
それなら希望の光が見えて来たかもしれない。
俺が火の国の少年学校へと入り、早期卒業をして魔界へと入る!
そうすれば15歳までにラークをカルバーツに会わせることができる。
「ゲッツァ君、頑張って!」とラークも熱く言っている。
これしかないな!
今後の俺らの進路が決まった。
火の国へと向かい、そこの少年学校へと入学して早期卒業!
俺とラークは希望へと目を向けて今夜の宴はこれにて終了した。
次の日の朝、早速準備をして出発だ。
黙って出ていこうとも思ったのだが……俺らが村を出ようとした時には住民が俺らの見送りとして待ち侘びていた。
「ありがとうちびっ子!」「村を守ってくれてありがとう!」「これからも頑張れよ〜!」
なんて声が聞こえてくる。
すると、エマとエルロンさんが俺らの方へと近づいてきた。
「はい!」
俺はエマからカゴを渡された。
中から何やら美味しい匂いがしてくる。
「これ……私が手作りしたんだからね……」
「まじか……ありがとう!」
なんかエマはモジモジしているような雰囲気だ。
どうかしたのか……?
「お前ら本当にありがとよ!」
「こちらこそ!エルロンさん!」
エルロンさんも気持ちが良さそうな笑顔だ。
「ゲッツァ!大きくなってもし良かったらうちのエマを…………」
と言いかけたところで視線をラークの方へと移した。
「……やっぱりなんでもねえわ!」
「は?なんだよ!エルロンさん!」
「なんでもねえって!」
誤魔化しているな……。
一体何を言おうとしたのだろうか……。
ラークもキョトンとした表情をしているし。
まあ、それはそれで良いかな!
「じゃあ!村のみんな!」
俺らは村を出発することとなった。
出発際にエマはラークに向かって「ラーク、負けないわよ!」って言っていた。
それに対してラークは何が?のような表情をしていた。
不思議な幕引きだったな……。
でも、最初はどうするか迷っていたが、今は確実にこの村に寄って良かったと感じている。
「ラーク、目指すは火の国だ!」
「うん!」
ラークも元気に頷いてくれた。
俺らは快晴な景色を背中に浴びると、火の国へと向かっていった。
(何かを忘れていると感じて、この後すぐにウマオを村へと取りに行ったのはナイショの話である。ウマオさん……非常に申し訳ありませんでした。)




