50、決着2
俺は震える手足を懸命に踏ん張りながら体を起こしていった。
「あ?そんな体で起き上がって何をしおうっていうんだ?」
リュウガはまたしても俺を嘲笑うかのように見下ろした。
そういうところも合わせて倒し甲斐があるってものだ。
「なあに……?決まってるだろ……。お前を倒してみんなをここから解放するんだよ!」
「はっはっっはーーー!ここに来て、とんだ冗談を言うとは、俺の攻撃で頭でもおかしくなっちまったか?」
「いいや……ただただ小さな約束を思い出しただけだ………」
俺のの脳内にはエマの……ラークとの、カルバーツ、シーエーさんとの……母、ピサロ……そして、部長やたくみ……そして、前世の父、母の顔が思い浮かんだ。
どの…誰の約束だったかなんて覚えていない……。
しかし、俺がこんな相手にやられそうになっているのはどうにもおかしいしな!
「やめてくれ少年!それ以上戦ってしまったら君の体が持たないぞ!」
エルロンは必死に止めるように声を出している。
しかし、俺は絶対に引かない。
そう、こんなところでは……。
「お前、エマのにいちゃんなんだろ………?だったら俺の気持ちも少しはわかるんじゃねえか?」
「でも……お前みたいな赤の他人がなぜ俺たちにそう深入れするんだ?」
「何でだろうな?でもエマは美味しい鍋を作ってくれたんだ……。ただそれだけだ!」
俺のまっすぐな瞳でエルロンを睨みつけた。
エルロンは食い下がる決意を固めたようだ。
わかってくれて嬉しいぜ。
「遺言はもう済んだか?」
リュウガはニヤリと余裕の笑みを浮かべる。
「なあに?お前こそ済んだか?遺言……」
「何を言う必要がある?今追い詰められているのはお前の方なんだぞ!」
「言うねえ。俺が追い詰められてる理由はお前の不意打ちだっただろ。ってことはまともに戦ったら勝てねえからだろ?」
俺のの煽りは効いたようだ。
リュウガは頭に血を上らせた。
「ぐわあーー!この生意気なガキが殴り殺してやる!火魔法“火拳“」
リュウガは声を発しながら、拳を振り上げて俺に飛びかかってきた。
しかし、その攻撃が俺に届くことはなかった。
――――――――
「なに?」
いつもより動きが遅く見えるように感じた。
俺もこの土壇場に来て一つ上のレベルに乗ったのかな……。
俺は一瞬で距離を取ると流れるような動作で魔法を撃つモーションへ入り、とった距離を一瞬のうちに詰めた。
「なに?!」
「あばよリュウガ!水魔法“水竜“」
――――バンッ――――
ゼロ距離で放たれた俺の“水竜“はリュウガの脳天を撃ち抜いた。
「水魔法だと……。貴様……まさか……」
その言葉を境にリュウガは白目を剥くと意識が飛んだように地面に倒れた。
勝った……。
すると、牢の中から歓声が聞こえてきた。
「ありがとう少年!」「やっ…やったー……!」
リュウガ一家に囚われていた囚人たちは喉がはち切れるような声をあげ、喜びを分かち合った。
「よっしゃー。少年があのリュウガを討ち取ったぞ!」
「ありがとう少年!」
「これでやっと村に帰れるわー!」
まあ、これで一件落着ということだな……。
今まで、一回も成功できなかった“水竜“を発動できたな。
俺は……この戦いで一皮剥けたのかもな……。
ありがとうなリュウガ……。
「ゲッツァく〜ん!上は片付いたよ!」
先ほどまで階段があった場所に開いた大穴をラークが飛び降りてきた。
ラークは俺の元へと寄ってきた。
綺麗だ……。
いや、そういう意味じゃなくて……さっきまで戦っていたのに傷一つない。
まさか100人ぐらいを無傷でこの短時間で……恐ろしいものだな……。
「え?ゲッツァ君大丈夫?」
ラークの第一声はそれだった。
奥には倒れているリュウガがいる。
まずは俺の心配からとは優しいものだな!
「うん……大丈夫」
「大丈夫じゃないでしょ?出血がひどいじゃない!」
俺は自分の身体中を見てみた。
身体中があざだらけだ。
そして、顔からは血滴がポタポタと流れてきている……。
こんな怪我をしたのは初めてかもな……。
でも、不思議と体は元気で痛みもそんなに感じないな……。
「いや、大丈夫っぽい!それよりみんなを解放してあげないとだな。土魔法“……”」
俺は手を鍵穴にかざすと、土魔法で鍵穴に合うようにして土を張り巡らせていく。
――――ガチャ――――
見事に牢の鍵を開けることに成功した。
それから牢は10数部屋ほど用意されており、全ての部屋を解放した。
肌けた女性が入っている牢をの鍵を開けるときは俺にラークが目隠しをしてきた。
まあ……そりゃそうだよな……。建前上な……。
そして、無事にリュウガ一家に捕えられていた住民は全て自由の身を手に入れることにした。
「どこの誰かわからないけど、ありがとうな!俺の名前はエルロン」
声をかけてきたのはエマの兄、エルロンだ。
「俺はゲッツァ!みんな無事でよかったよ!」
俺とエルロンは固い握手を交わした。
「ゲッツァ君……。このお方は?」
何も知らないラークとしては当たり前の反応だ。
「ああ、エマの兄のエルロンさんだ!」
エマが俺らと同い年ぐらいだからエルロンの歳は俺らよりずっと上だろうな……。だから一応敬語!
「あ〜……エマにお世話になりました。私はラークです!」
「ああ、こちらこそよろしく……」
エルロンはラークの仮面姿にちょっと気が引けているようだ。
俺は見慣れたけど、人前で謎の仮面は不思議がられるもんな。
「それよりエマのことを知ってるみたいだけどエマは元気なのか?」
少し心配そうにエルロンは問いかけた。
「もちろん!」「もちろん!」
俺らは口を揃えて言った。
「よかっった〜……」
エルロンも一安心のようだ。
体の力が抜けてその場に尻餅をついた。
俺はエルロンと言葉を交わした後に、土魔法で地上への階段を作り上げると無事にみんなを解放することに成功した。
リュウガ一家の処置は俺らが解放した中に数人、火の国の兵士が混じっていたため、この後に国に報告して処置をしてくれるらしい。
それなら初めから国が動けばよかったのに……とも思ったが、文句は言わないでおこう。
国にも事情があるのだろうな……。そう言うことにしておこう。
館の一階にはそこらじゅうに転がるリュウガ一家……100人ほど。
「これを君たち2人で?」とエルロンは震える声で聞いてきた。
「まあ」とは答えたがこれはラーク1人で何だよな……。
そして、それぞれが自分の村や集落へと帰っていった。
俺らはたくさんの人に感謝された。
非常に嬉しいものだな……感謝されるのは!
「そろそろ私たちも行こっか!」
ラークは少し離れた場所に大人しく待機していたウマオに跨ると元気よく手綱を引っ張った。
エルロンさんも俺らと帰る村は一緒なので一緒に帰る事とした。
俺も乗らないとな……。
ってあれ……。体に力が……入らない……。
俺は動きを止めた。
「ゲッツァ君……?」
ラークの声は聞こえている……。
――――バタン――――
俺は地面へと倒れた。
体が言うことを聞かない。
目もぼんやりとしてきた。
あれ……これ……やばいか?
「ゲッツァ君……ゲッツァく……ゲッツ……」
どんどんラークの声が遠くに聞こえてくる……。
俺の視界は闇に包まれた。




