3、・・・
何匹、殺しただろうか……。
何匹、凍らしただろうか……。
「氷魔法“氷竜”喰らえ!」
氷の形で形どられた竜が魔物たちに襲いかかる。
――――「ギュウルイイイイ!!!」――――
今ので何匹の魔物が死んだのだろうか……。
それでも、魔物の数は全く減らない。
「へっ!まいったなあ……」
流石のカルバーツも弱気を見せた。
戦いが始まって一日は軽く経過しただろう。
赤ん坊の俺も、こんな状況になったら一睡も出来ずにいた。
それに腹が減る。ミルクが欲しいとはこういう気持ちなのか……。
もう、ダンテやミュウラは逃げることが出来ただろう……。なぜ、こんなに粘るのだろうか……。
それとも、ここで命を落とすつもりなのか……。
カルバーツが戦っている中、俺はあることに気づいた。
これは夢でもなんでもない。現実だ……。
でも、多分、日本ではない。いや、おそらく俺が生きてきたところではない。
転生……。
そんな話はどこかのメガネオタクが教室で言っていた気がする。
無論俺はそう言う奴はあまり好きではない。というか、学生時代に運動部に所属していない奴は信用ができない。という偏見。
でも、おそらく、俺は転生したのだ。
これは俺の新しい人生だ。
そう思った瞬間、目の前の生にしがみつきたくなる。
カルバーツの目は魔物にしか向いていない。
多分、ゾーンに入っているのだ。サッカーでもたまにある。
でも、このまま続けていれば……。おそらく……。
――――――
カルバーツはまだ魔物を切り続けている。
体はもうボロボロだ。
先ほどからパタリと魔法を使わなくなった。多分、ダンテと話していた魔量マジックストックが尽きたのだろう。
それでも戦い続けるこいつは何なのだろうか……。
何かを背負っているのだろうな……。
俺も、誰かのために自分を犠牲にした身だ。何となく気持ちはわかる……。
でも……今は、ダンテやミュウラを逃し、尊い命を助けることが出来たのだ。もうこれ以上続けることもない。
(目を覚ましてくれ!あと、俺がいることにも、気づいてくれ!)
――カプ――
俺はカルバーツの腕に噛みついた。
もちろん、生まれたてで口元の操作はままならないし、歯も生えていないので痛くはないだろう……。
「ゲッツァ……」
気づいてくれた……。
カルバーツは腕に収まる俺に視線を向けた。
こんな時、どうすればいいのだろう……。泣けばいいのか?それとも……。
――ニカッ――
笑ってやった。笑っている時の方が、俺らしくていいかも。そして、赤ん坊の笑顔を見逃す大人はいないだろ。
「ゲッツァ……」
カルバーツの表情は和らいだ。何かを思い出したようだ。
「そうだったな……。わりい……もう、これ以上、やる必要はないな……」
カルバーツは何かを悟ったように視線を後ろへとやった。
「よし!俺らも撤収だ。氷魔法“氷壁アイスウォール”」
魔法を唱えると目の前に横幅、500メートルほどの大きな氷の壁が設計された。
「うっ!」
カルバーツは大幅にぐらついた。
「もう少しで、魔量マジックストックが尽きるところだったぜ!」
何とかカルバーツは体勢を持ち直すと、槍をしまい、俺を大事に両手で抱えると軽くはないが重くもない足取りでその場を後にした。
「ゲッツァ……。俺を生かせてくれてありがとうな……」
そんな言葉を溢し、風のように戦場から身を引いた。




