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白の|運命《さだめ》〜選ばれし白属性魔法として生まれた俺は……〜  作者: 生きてる水


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29、6年も経つのか・・・2



 ここはいつもの魔道場だ。

 もう俺はあまり近寄ることのない場所だ。


 試験は始まる。


 ♢ ♢ ♢


「決勝戦!ラーク・フリップ!ゲッツァ!前へと出てこい!」


 お決まりの組み合わせだ。

 準決で俺はレオと対戦した。


 レオに勝つのは当然だが、意外に魔量(マジックストック)を消費する。

 レオも力をつけている証拠だろうな……。

 まあ余裕だが……。

 

 レオは俺に負けてももう悔しがる姿を見せなくなったな……。

 悔しがっているレオが懐かしいものだな……。

 まあ、今は目の前にいるラーク姫に集中しないとな……。


 俺は低い大勢で構えた。

 ラーク姫は肩幅ぐらいで構えている。


「決勝戦!よ〜い……スタート!」


 先生の図太い声で戦いの火蓋が切られた。


「水魔法“水銃(ウォーターガン)”」


 ラーク姫は水を鉄砲玉のようにして俺に連続で放ってきた。

 ジャブみたいなものだ……。


 被弾しても致命傷のような大きなダメージを与えられないが、距離感や当て感を掴まれてしまう。

 それに、当たれば当たるほど、相手を勢いづかしてしまう。


「水魔法“水壁(ウォーターウォール)”」


 俺は水の壁でそれを防ぐ。


 ――バチ――バチ――バチ――バチ――バチ――バチ――バチ――


 防ぐ音が響き渡る。

 最初から大技を使うほど単純な戦いではない……。


 ――ビュン――


 俺の顔を“水銃(ウォーターガン)“がかすめた。


 数あるうちの何発かは強めに打ってきている。俺の壁を突き破ってくる。

 この辺の戦い方はうまいな……。

 

「水魔法“水大蛇(すいだいじゃ)”」


 俺は隙を窺いここで一発、大技!

 水の大きな蛇は発射されると途中でクイっと曲がり角度をつけてラーク姫へと襲いかかった。


 ――バーン――


 どうやら命中はしていないようだ。

 ラーク姫は左後ろへと飛び移り避けたようだ……。

 でも、ここで先読みだ!

 バレないように放っていたもう一発の大蛇がラーク姫へと襲いかかる。


「水魔法“水山(すいざん)“」


 ――――――


 ここでラーク姫は最大級の防御魔法だ。

 俺の大蛇は防がれる。


 くそっ……。


 ここら辺の判断もさすがだ……。

 魔法がダメなら……。

 ここで一気に距離を詰めよう!

 

 俺はラーク姫を目掛けてダッシュ!

 この世界は肉体も普通の人間よりも強いっぽい……。

 普通に今の俺は100メートルを10秒台で走れるだろう……。


 12歳で。


 そして、体も丈夫だ!

 ちょっとやそっとの魔法では全く怪我なんかしない!


 力も多分向こうの世界の何倍もあると思う。

 そのため、接近戦も有効なのだ!


 大きな魔法を使うと、魔法に集中するため動きが鈍くなる。

 そこを狙う!


 ――――――


 ラーク姫があっという間に目の前だ!

 女子だろうと悪いけど容赦はしない……。

 ラーク姫の国宝級の顔面を目掛けて右拳でパンチを繰り出す!


 ――――ドン――――


 痛みが走ったのは俺の顔の方だった。

 俺の拳は命中した感覚はない……。


 ――どうやら右のクロスカウンターを浴びせられたらしい……。

 

 続けてラーク姫は体を捻ると右足で俺の腹あたりに回し蹴り!


 ――――――


 俺は吹っ飛んだ……。


 この2連撃は効く……。

 細い体からは想像がつかない破壊力だ……。

 格闘術も高いレベルにあるな……。


 そんな俺をラーク姫は待ってはくれない!

 続けてラーク姫は魔法を使う。


「水魔法“蜃気楼”」


 会場全体が一気に曇り始めた。

 水蒸気を最大限活用して相手の視界を奪う魔法だ。


 でも、この魔法のリスクとしては放った本人も視界を奪われかねないという点がある。


 さて、どうしようかな……。

 これからどうすれば……

 

「水魔法“水竜(すいりゅう)“」


 俺は真上から声が聞こえた……。


 まさか……。


「水魔法………」


 ――――バーーーン――――


 激しい衝撃が魔道場へと響き渡った。


 ここに来て大魔法を俺は直撃してしまった……。


「ま……ま……まいりました……」


 もう俺は立てないだろう……。


 蜃気楼が引いてきた。

 

 あの蜃気楼を出してからラーク姫は上へと飛び上がったのだろう……。

 空中は狙われやすいが、あの視界の中なら問題ないからな……。


 そして、ちょうど会場を囲うようにして逃げ場のない大魔法の水竜(すいりゅう)……。絶対に命中する。

 これに関してはさすがとしか言いようがない……。


 今回も圧倒されたな……。


「勝者!ラーク・フリップ!」


 その宣言で会場中は大きな歓声へと包まれた。

 何年経ってもこの黄色い歓声は変わらないものだな……。


 

「………………」


 勝ったラーク姫はどこか浮かない表情だった。

 俺らの関係性が悪いといってもいつも笑顔で喜んでいたのに……。

 俺はそれに少しだけ引っかかった……。


 そんなラーク姫の顔を見ていると先生が俺に回復ポーションを持ってきてくれた。


「ほれ!飲まんかい!」


 ――ゴクゴク――


 このポーション……上級ではないな……。

 まあ、ないよりはマシだし文句は言えないな……。


 この統括テストでは怪我をさせないように先生たちが配慮をしているらしいのだが……。


 ちょうど1年前くらいに、「お前たちの戦いは制御ができない」と言われてから回復ポーションが用意されるようになった。


 どうやら、俺らのレベルは少年学校の中でも異質らしく、止めに入った先生が怪我をするケースがあるため、特別な処置が行われているらしい。

 少年学校も頭を抱えている問題らしい……。


 でも、何年か前にもこのように異質の強さを持つ者にこのような配慮を持った試験を行っていたことがあったらしい……。


 だから、特には問題ではないらしい……大変なだけで……。


 それに、何年か前にということはその人物が誰なのかも想像がつく……。

 多分、カルバーツだろうな……。


 俺は全回復はしなかった。

 あとで保健室にでも行ってくるか……。


 保健室には花魔法が使えるおばちゃんが居る。

 本当にこの学校の設備は整いすぎているな……。


「それじゃあこれで試験は終了する!みんなは教室に戻るように……」

「はい!」


 声を揃えて生徒たちは返事を返した。

 今回も俺はラーク姫に惨敗だ!


 


 教室へと戻ると、いつもの先生の長い話……。

 これも変わっていないな……。

 先生の話の最中に右側の一番前の席にいる小太りが目に入った。


 コング……。通称、小太り栗だ!

 そして、長メガネ!


 レオを慕っている2人だ!


 こいつらもクラス1に定着するようになってきたな……。

 最初は入れ替わりが激しく行ったり来たりしていたが……。


 こいつらが俺に絡んでくることはもう無くなったな……。

 俺の実力もあるだろうし、誰とも話していない俺に話しかけたところで何も変わらないのをわかったのだろう……。

 こいつらも少しは大人になったのかな……。


 小太り栗はどんなに厳しい授業や実習があっても……いつまで経っても痩せずに小太りのままだ。

 最近はそれに愛着まで感じている。

 んまあ、話しかけられて冷やかされていた最初が懐かしいというやつだな……。


 それにラーク姫……。

 あれだけ戦っていうのに傷一つなく顔は綺麗なままだ……。

 もう魔道場へ行かないからどのようなトレーニングをしているのかも想像がつかないな……。


 この調子で本当にあと3年で追いつけるのか……。

 どうしよう……。水魔法だけトレーニングしようかな……。


 そう考えた時、真っ先にシーエーさんの顔が脳内に浮かんでくる。

 勝手に脳内ではシーエーさんを6歳分老けさせてある!


「おい!他の魔法もサボらずやれ!」と言ってくる!

 これじゃあ本当に時間が足りないな……。


 しっかしまあ、選ばれし白属性だというのに……ラーク姫の存在の大きさでまったくもって特別感を感じないな……。

 それが刺激になって頑張れているってのもあるのかな……。


 どこかのタイミングで感謝はちゃんと伝えよう……。

 それが俺ができる唯一のことだからな……。


 それにしても、ラーク姫は今日一日……浮かない顔をしているな……。

 どうしたんだろう……。

 こんなの6年間で初めてだ……。

 まあ、俺が心配するようなことではないか……。


「これにて終了する……解散!」


 やっと終わった〜。


 俺は真っ先に裏山へと……


 ――――――


 勢いよく飛び出したのは良いもののテスト結果の用紙を置いてきてしまった。

 玄関先まで出てきていた俺は急いで教室へともどる……。


 ♢ ♢ ♢

 

 よし!忘れ物なし!


 俺は再び教室を飛び出した!

 今日は電魔法かな……それとも火魔法かな……。

 そんなことを考えながら玄関へと向かう先で魔道場の前を通った。


 静かだった。

 いつもだったらラーク姫の魔法の音でうるさいはずなのだが……。いないのかな……。


 まあ気にすることではないが、気になったので……。

 俺はふと魔道場を覗いてみた。

 覗くなんて懐かしい……6年ぶりかな……。


 すると奥の方の窓際にラーク姫はしっかりといた。

 なんだいるじゃん!


 そう思ったのだが……静かにずっと体育座りで座り込んでいる。

 疾走感が漂っている……。


 それに、顔を両手で覆い、隠している……。

 どうしたのかな……。


 その瞬間、俺にはラーク姫から光るものが溢れるのが見えた……。

 ちょうど、窓際だったこともあったのだろう……。あれは光に反射された水だ……。


 涙……。


 そう思った瞬間、俺は5年前の出来事を思い出した。

 初めて女性を泣かしてしまった瞬間だった……。

 

 その時の俺は何を考えていたのかはわからない……。

 ただ、その光景だけが走馬灯のように脳内に巡った俺は気が付けばラーク姫の目の前まで来ていた……。


 え……?


 俺が一番驚きだった……。

 今まで、ラーク姫の顔を見ても何も思わなかったのに……。

 涙に釣られるように俺の体が勝手に反応したのであった……。


「え?ゲッツァ君……?」


 物音に気がついたラーク姫は顔を上げた。



 大きく綺麗な瞳は潤っていた。

 

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