24、襲撃1
俺は荷物をまとめると魔道場の前を通りかかった。
ラーク姫はいつものように自主練に励んでいる。
試験の後だっていうのに……。
すると、ラーク姫は俺の方に気がついた。
「ゲッツァ!お疲れ!」
「お疲れ様です!」
話しかけてくれた。
人気のない場所なら意外と積極的に話しかけてくれる……。
うん!魔道場……とても良い空間だ!
「今日も放課後は予定はあるの?」
今日も……。裏山でとも思ったが、今日で長期間ラーク姫に会えなくなってしまう……。
う〜ん……。今日ぐらいシーエーさんは多めに見てくれるだろう……。
「今日は予定ないからな〜……ここで試験の復習でもしようかな……」
「そうなのね!じゃあ今日は2人だね!」
2人……。
その響きはなんか恥ずかしいな……。
俺の顔は体温が上がってきている。赤面でもしているのか……。
俺はゆっくりと荷物を魔道場の端の方へと下ろした。
なんとなく横にはラーク姫の荷物がある……。
いつもより近くに置いてしまった。
まあ、普通のことだよな……。
「で、今日の試験は私の圧勝だったね!」
後ろからラーク姫の声が聞こえてきた。
煽ってきているのか……?
まあ、全く嫌な気にはならないがな……。
「そんな余裕を持っていると俺に足元を掬われますよ!」
「いや〜、大丈夫だよ!余裕なんて全くないからね……」
余裕ないんだ……。
あれだけの強さがあるなら俺なんか足元にも及ばないはずなのだが……。
「抜け目がありませんね!俺からしたらもっと気を抜いて戦って欲しいぐらいですよ……」
「気は抜けないね……。ゲッツァ君は普通に強いからな〜……。それに……何かまだ強さみたいのを隠している気がして怖いんだよね……。戦いながら思ったんだけど、ゲッツァ君が攻撃をしてくる時は色々なパターンが見えてくるんだよね……。攻撃の引き出しがねもっとありそうだなって……」
まさか……バレてはないよな……。
「いやあそうですか?俺はいつも全力を尽くして戦っていますけどね……」
誤魔化そう誤魔化そう。
ラーク姫はこの国で言わば一番権力を持っている家系だ。
俺が白属性だってバレたら……。
シーエーさんの言葉が脳裏に巡る。
ラーク姫には絶対にバレてはいけない!
「まあ……どっちにしろ私には勝てないだろうけどね……」
ラーク姫は軽く笑った。
かわいい……。
いや、そうではない。そうではない。
それに負けず嫌いなのがすごく伝わってくる。
でも、負けず嫌いなのは俺も同じだ。
いつか……俺が白属性とラーク姫に明かす時が来たら俺の全力で戦ってみたいものだな……。
だが、今は我慢だ我慢……。
あくまで目的は最前線で戦えるように強くなることだからな。
余計なことで今のある現状を壊すような真似をするのは得策ではないしな……。
「次は負けませんよ!」
「私もよ!」
自然に会話が続くようになったな……。
最初はよそよそしかったが……一年も毎朝あっているのだからな……。
「ラーク姫!これからもう一戦しませんか?」
「いやよ!私はまだやることがあるもん!」
「でも、今日あんまり魔法を使っていなくて消化不良っていうか……」
「いやよ!私は消化促進だから……」
この提案にはいつも断られる。
まあ、今日はもう一戦したからな……。欲張りすぎだな……。
それにラーク姫は本当に折れないな!自分をちゃんと持っているというのか……。
「じゃあ次の機会があればよろしくお願いしますね!」
「もちろん!」
ラーク姫は満面の笑みで答える。
毎回、この人は笑顔がキラキラしているな……。
まあ、今日はこれで満足だな……。
試験ではラーク姫には負けたが納得のいく結果ではあったしな……。
帰ったら電魔法の新技でも試すとしますか……。
「じゃあラーク姫!俺はここで行きますね!」
俺がそう言うと、ラーク姫は驚いた表情をしてこちらの方を向いた。
「もう……行っちゃうの?」
ラーク姫の顔は……これはなんという表情なのだろう……。
このラーク姫の表情は今まで見たことないな……。
「はい!」
「予定……無いんじゃないの?」
「ラーク姫と話していたら思い出しましたよ!俺、ラーク姫に絶対負けないですからね!」
「そっか…………。私だって負けないからね!」
先ほどと同じ表情だ。
これはなんと言う感情なのだろうか……。
ラーク姫の表情は読み取りづらいな……。
もともと、ラーク姫は人と話すことが得意な人では無いのだろうな……。たまに話している最中なのに無を見つめていたりしているしな……。
特に特別な感情は無いのだろうな……。
俺は荷物を担ぐと魔道場を後にしようとした――
「ゲッツァ君!」
俺は右腕の裾がグッと引っ張られる感覚があった。
「はい!?」
俺は驚いた。
ラーク姫が俺の裾を掴んでいる。
………………。
沈黙だ……。
ラーク姫はずっと俺の顔を見つめている……。
こういう場合は俺から話しかけたほうがいいんだよな……。
「どうしましたか?」
ラーク姫はまたしても無を見つめている……そして、定番のキョト顔をしている。
「教室でも……ゲッツァ君に話しかけていいと思う?」
いきなりの質問だ……。
しかも、この質問にはどう答えたほうが良いのか……。
ラーク姫は俺の裾を掴んだまま続けた。
「私はね身分とかそういうのはあんまり気にしていないの……。でもね、一応大衆の目がある時はね一応線引きと言うかでゲッツァ君には話しかけられなかったの……。でも、ゲッツァ君と話すのは楽しいからさ……教室でも話ちゃダメかなって……」
へ?!!!
ラーク姫は俺と話したかったんだ……。
俺の体は熱ってきた。
湯気が出そうだ……。
そんな恥ずかしいようなことよく本人に直接言えるなラーク姫は……。
と思ったが、ラーク姫はいつもと変わらず普通の表情だ……。
俺だけ、顔を赤くしてなんか恥ずかしい気分だ。
俺だって話したいけど……。
でも、俺の成績だったら仲良くしていても許されるような気もするしな……。
――――――
いや、目的を見失ってはいけない。
俺はあくまでこの少年学校は通過点なんだ。
今の生活には非常に充実感を感じている。
先の考えて……それによって俺の今までの生活が壊れるのは嫌だしな……。
シーエーさんの忠告もあるしな……。
俺は決めた。
「やめておきましょう!この国が身分に厳しいことは重々承知です!これによって変なトラブルに発展するのとかはどちらにとってもよくないと思います……。それに、朝会えば話せますしね!俺がラーク姫と話したくなったらいつもより学校に早くきて待っていますね!」
言ってしまった……。
ラーク姫と話したいなんて……本人に……。
小っ恥ずかしい……。
顔が見れないとはこう言うことだな……。
「そうだね!じゃあ話したい時は私も朝早く来るね!」
ラークは笑顔で返す。
俺の話したいっていう気持ちを……多分、あまり理解していないようだな……。
これはセーフだ。
危ない危ない……。俺も気をつけなければな……。
俺の心臓の鼓動は先ほどから耳元に届くように音を上げている。
この音も聞こえていないでくれ!そう願うだけであった。
――――――
魔道場の廊下に1人通りかかった……。
レオ――
通りかかったのはレオだった。
レオは俺らの姿を確認すると、その場で静止した。
俺らはというとラーク姫が裾を掴んだままの状態……。
しまった……。
見られてしまった……。
でも、やばいと思っているのは俺だけでラーク姫は特に気にしていない様子だ。
「レオ!」
ラーク姫がそう声を上げた。
そうすると、俺の裾から手を離すとラーク姫はレオの方へと向かっていった。
「教室に戻ってこなかったからどうしたのかと思ったよ!大丈夫なの?」
ラーク姫はレオの心配をした。
この2人は本当にどういう関係性なんだろう……。
教室では親しいような関係は見れない。
けれど、俺にはこの2人に特別な何かがあるように感じる……。
「ラーク……こんなところで何してんだ?」
レオはラーク姫に問うた。
しかし、レオの目は真っ直ぐと俺の方へと向けていた。
とても鋭い眼光だ……。俺は少しビビった。
「何って?自主練だよ!」
「じゃあ、あいつはなんだ?」
矛先がいきなり俺の方へと向いた。
それにしても、なんでレオはラーク姫のことを呼び捨てなのだろうか……。
「ゲッツァはさっき通りかかったから話したくなって話してたんだ〜!」
誤魔化しもしない……。
俺だけが恥かしがっていたのが恥ずかしいわ!
「………………っ」
長い沈黙の後、舌打ちをするとレオは俺から目を逸らさずに廊下を歩いていった。
「ちょっとレオ!」
――――――
行ってしまった……。
俺に激しくキレていたっぽいな……。
まあ、圧倒して倒したからな……。
よほど悔しかったのだろうな……。
まあ誰に恨まれようが俺は強くなることをやめない。
決して眼中にないわけではない……ただただ、目指す場所が違うだけだ。
レオの実力はしっかりと認めているからな!
まあ、嫌いだけど……。
「行ってしまったんですか?」
「うん……行っちゃったね……」
ラーク姫はどこか不安そうな表情をしている……。
「大丈夫ですか……?」
自然と俺の口から出た言葉はそれだった。
ラーク姫が今までに見せたこと無い表情をしていたので無意識に出てしまった……。
「うん……少しいじけているだけで多分、大丈夫だと思うよ!」
ラーク姫はふたたび笑顔に戻った。
いや、レオのことを心配したわけではないのだが……。
まあ、ラーク姫が笑顔に戻ったなら大丈夫だろう……。
うん……2人とも大丈夫だろうな……。
それより……。
「レオに2人で話しているところ見られてしまいましたが、大丈夫でしょうか……」
ラークは少し考えるような仕草をした。
先ほど、話しているところ見られるのは良くないと言う話をしたばかりだったし……。
「うん!多分、レオなら大丈夫でしょ!」
レオにどんな信頼を抱いているのやら……。
ラーク姫からしてもレオのことを完璧に特別視している感じがする……。
なんか……。悔しいような……。
なんだこの感情は……。
「それより……予定を思い出したんでしょ?」
「あ、そうだった……」
すっかり忘れていた。
まあ遅れるとかは無いからこのくらいは別にいいんだけどね……。
「じゃあね!今度会う時は休み明けに一学年上がってだね!」
ああ……。そうか、これから長期間会えなくなるのか……。
寂しいっちゃ寂しいけれど……。
いや、修行をしよう!
「そうですね!今以上に強くなってくるので覚悟しといてくださいね!」
「私だって……さらに突き放すからね!」
ラーク姫は最後もパッと花の咲くような笑顔で送り出してくれた。
一年の節目とすれば完璧だろう……。
やはり、キラキラしているな……。




